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ドラ6で4番を任された末包昇大とは何者か?鈴木誠也の穴埋めを期待される大砲が歩んできた道のり

ドラフト6位で広島に入団したルーキー末包。即戦力として期待されている。写真:産経新聞社
昨年、プロ野球界では、中野拓夢(阪神)がドラフト下位指名ながら大活躍を見せた。しかし、今季も中野と同じドラフト6位指名の社会人野手がにわかに注目を集めている。広島の末包昇大だ。

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ルーキーながら2月26日のオープン戦初戦で4番に抜擢された末包は、いきなりレフトスタンドへホームランをマーク。メジャー挑戦を決意した鈴木誠也の穴を埋める存在としてチームの期待は高まっている。魅力は何よりもそのパワーであり、俊足と軽快な守備が持ち味の中野とプレースタイルは正反対だが、これまで歩んできた道のりもまた対照的である。

中野は高校3年夏に甲子園に出場し、東北福祉大、三菱自動車岡崎でも入部直後からレギュラーとして活躍。一方の末包が東洋大時代に記録したリーグ戦通算安打は4年間でわずか6本。筆者が初めてプレーを見たのは3年春の専修大戦で、7回から代打で登場したものの初球を打ってショートゴロに倒れている。

スタメンで出場した姿を見たのは、2018年4月9日と10日の中央大戦。第1戦の第2打席でサードへ内野安打を放ったものの、ヒットはこの1本のみ。2試合合計で3つの三振を喫し、第2戦では第4打席に代打を送られて途中交代となっている。「末包」という比較的珍しい名字と、当時から体重100キロという巨漢もあってその存在を認識はしていたものの、プレーについて強い印象は全く残っていない。

大阪ガス入社後も1年目の2019年は都市対抗野球、日本選手権ともに出場無しに終わっており、この時点で末包をドラフト候補として見ていた球団は皆無だっただろう。社会人2年目の2020年はコロナ禍もあって公式戦の機会が少なく、都市対抗本選でも4番として出場したが、チームは初戦で敗戦。自身も4打数1安打2三振と目立った結果を残せていなかった。

そんな末包が注目を集めるきっかけとなったのが、昨年夏の社会人野球日本選手権だ。

全5試合に4番として出場し、20打数9安打7打点の大活躍でチームの優勝に大きく貢献するとともに、打撃賞のタイトルも受賞。ホームランこそ出なかったものの、レフト4本、センター1本、ライト4本と前年までにはなかった見事な広角打法を見せたのだ。

さらに末包の評価を上げたのが、大会後に行なわれた社会人日本代表候補合宿である。この合宿では投手は平均球速、ボールの回転数、ホップ成分、シュート成分、野手は打球速度、推定飛距離、スイング速度、スイング時間の指標が測定され、一般にもそのデータを公開したが、末包は参加した全選手の中でナンバーワンとなる打球速度(171.3km/h・上位5打球の平均)を叩き出したのである。
そしてそのパワーを昨年12月に行なわれた都市対抗野球で改めて示す。初戦の伏木海陸運送戦は3回まで両チーム無得点という膠着した展開となったが、4回に迎えた第2打席で貴重な先制となるソロホームランをセンターバックスクリーンに放ち、チームを勝利に導いたのである。試合後に担当だった鞘師智也スカウトと顔を合わせ、末包の話題となったが、「当たれば飛びます。今日はいいところが出ましたね」と話していた。

しかし、この都市対抗では課題も見えた。続く2回戦のJFE東日本戦では外角の変化球にことごとくバットが合わず、4打席連続空振り三振に倒れ、チームも0対1で敗戦となったのである。鞘師スカウトの「当たれば」という言葉が意味するものと、6位まで残っていた理由は、このあたりの変化球に対しる脆さにありそうだ。

2月11日に筆者は広島の日南キャンプを訪れ、末包のバッティングにも注目したが、その後のオープン戦を見ても今のところ昨年までのイメージは大きく変わっていない。フリーバッティングでは次々と柵越えを連発するも、実戦での変化球の対応についてはまだ一軍の中では下の部類に入るように見えた。日本の4番も務めた鈴木誠也の穴を埋めるというのはさすがに高いハードルであることは間違いないだろう。
しかしポジティブな要素があることも確かである。ひとつは、末包が決して打つだけの選手ではないという点だ。俊足というわけではないが、脚力は平均的なレベルにあり、外野手としての肩の強さも備えている。そして間接的に追い風になるのが杉本裕太郎(オリックス)の存在だ。

杉本も社会人からドラフト10位という低い順位でプロ入りし、最初の5年間は二軍暮らしが長かったものの、30歳となる昨シーズンにいきなり32本塁打を放ち大ブレイクを果たしている。

社会人出身でしかも今年で26歳と言えば即戦力が期待されるのは当然だが、杉本の例を考えると少し長い目で見てみようという意見も出てくるはずだ。そう考えると大学でも4年間のほとんどをベンチで過ごし、社会人でも1年目は控えだったという経験もプラスになるはずだ。プロで今年苦しんだとしても、数年後に大輪の花を咲かせる可能性を十分に秘めた選手と言えるだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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