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またもオーナー側と選手会の交渉が決裂。開幕は4月14日以降にずれ込み、ジャッキー・ロビンソン・デー開催が危機に<SLUGGER>

4月15日は毎年、全選手がロビンソンの背番号「42」を着けてプレーする重要なイベント。もしそれが中止になったら……。(C)Getty Images
ロックアウト妥結へ向けての努力は、またも実らなかった。3月9日(現地)、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドは2022年のシーズン開幕が早くとも4月14日以降にずれ込むことを発表。当初の予定から、計4シリーズ分が中止となった。

3月1日の交渉決裂で、すでに最初の2シリーズの中止は決まっていたが、7日になって事態は急展開する。「8日までに妥結すれば、シーズン全162試合を開催する」とオーナー側が選手会に通告したのだ。

これを受けて8日、ニューヨークで交渉が始まった。懸案となっていた戦力均衡税(ぜいたく税)の引き上げ幅について、頑なに譲歩を拒んできたオーナー側が選手会の要求に歩み寄るなど、今回は両者が事態解決へ向けて全力で取り組んだことは間違いない。
交渉はまたも深夜まで及び、最終決着には至らなかったものの、「今度こそ妥結するはず」と希望を持ったファンも多かった。162試合開催となれば、開幕延期のダメージも最小限で済む。だが、それまでほとんど論議されていない分野が最後に大きな障壁となった。アメリカ、カナダ、プエルトリコ以外の国のアマチュア選手を対象としたインターナショナル・ドラフトの導入をオーナー側が提案したのだ。

だが、このインターナショナル・ドラフトは、特にドミニカ共和国などの選手たちの反対が根強く、過去の労使交渉でもたびたび選手会が拒否してきたもの。オーナー側が交渉の土壇場になって急に持ち出したことで、交渉妥結へのムードは一気にしぼんでしまった。最終的に、オーナー側は選手会に3つの選択肢を提示。これに対して選手会が独自の対案を提案すると、マンフレッドはさらなる試合中止を発表したのだった。

計4シリーズが中止になったことで、一度は近づいた合意がさらに遠ざかる可能性が出てきた。中止になった分のサラリーやサービスタイムについての処理という、新たな問題が発生するからだ、

MLBのサービスタイムは、26人ロースター在籍日数172日で「1年」と計算するが、開幕が延期になったことでシーズン自体が172日を下回る可能性が出てきた。そうなると、大谷翔平(エンジェルス)を含む多くの選手のFA権取得時期に影響を与える。選手会としては絶対に譲れない条件がさらに増えることを意味するのだ。 奇しくも4月15日はジャッキー・ロビンソンのメジャーデビューから75周年の記念比。“人種の壁”を打ち破り、ベースボールという枠を大きく超えてアメリカの英雄となったロビンソンを称える日にゲームが行われないことになったら……。
開幕延期自体がすでに最悪の事態だが、ロビンソン・デー中止という、さらにその下を行く「最悪中の最悪のシナリオ」を何とか回避することができるだろうか。

構成●SLUGGER編集部

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