オリックス、楽天が一大補強でオフシーズンの勝者に!又吉を獲得したソフトバンクは意外な盲点も【パ6球団補強採点】
春季キャンプも目前となり、各球団の陣容もおおむね固まってきた。ここでは、各球団のこのオフの選手の入退団状況を見ながら、戦力アップにつながる補強ができたかどうかを、A~Eの5段階評価で振り返る。
※A=よくできました、B=まずまずです、C=可もなく不可もなく、D=がんばりましょう、E=もっとがんばりましょう
■オリックス
評価=よくできました(A)
【オフの補強ポイント】
○全体の選手層底上げ
○外国人野手の補強
○リリーフの改善
リーグ優勝チームとはいえ、昨年は外国人打者が機能せず、また野手全体の層も厚いとは言えなかった。ジョーンズ、モヤに代わって、ラベロと組む新外国人として獲得したのはバレラ。3Aでの通算打率は3割以上で、長打のあるタイプではないものの内野全ポジションを守れる使い勝手の良さも光る。日本人の長距離砲が3人いるチームならではの人選だ。
投手では先発タイプのワゲスパックと、リリーバーのビドルが加入。昨季は救援防御率がリーグ5位だっただけに、特にビドルには期待がかかる。3Aでは四球こそ多いものの、奪三振率は14.70と極めて高い数字を叩き出していた。ドラフトでは1位の椋木蓮(東北福祉大)を筆頭に、合わせて6人の大学・社会人選手を指名。テーマである戦力層の厚みを増すと同時に、現有戦力への刺激ともなる補強ができた。
【主な入退団選手】
▼IN
バレラ(内野手/ブルージェイズ=MLB)
ビドル(投手/ブレーブス=MLB)
ワゲスパック(投手/ブルージェイズ3A)
椋木蓮(投手/東北福祉大)
野口智哉(内野手/関西大)
▼OUT
モヤ(外野手)
ジョーンズ(外野手)
ヒギンス(投手)
■ロッテ
評価=可もなく不可もなく(C)
【オフの補強ポイント】
〇リリーフの枚数を増やす
×即戦力大砲の獲得
2年連続2位と戦力はまずまず充実しており、早急に解消しなければならないウイークポイントはない。若手の成長や故障者の復帰も見込めるとの判断からか、このオフは目立った動きがなかった。新外国人としては、退団したハーマンの代わりに身長203センチの大型右腕ゲレーロを獲得。コントロールにかなり難がある点は不安だが、最速167キロの速球は魅力的でリリーフの枚数が増えたのも大きい。
ドラフトでは3位で廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)、5位で八木彬(三菱重工West)と西日本の三菱系社会人チームから右投手を2人指名。廣畑は1位を予想する声もあったくらいで、即戦力として期待がかかる。また、レアードとマーティンの助っ人コンビがいなくなると途端に打線が迫力不足となることから、できればドラフトで即戦力の大砲を獲得したかったが、野手の逸材が早い段階で消えたため実現しなかった。こちらは山口航輝ら若手の成長に期待したい。
【主な入退団選手】
▼IN
ゲレーロ(投手/ホワイトソックス3A)
池田来翔(内野手/国士舘大)
▼OUT
ハーマン(投手)
■楽天
評価=よくできました(A)
【オフの補強ポイント】
○外国人選手の入れ替え
○機動力の改善
まったく戦力にならなかったカスティーヨとディクソンに代えて、新助っ人としてマルモレホスとギッテンスを獲得した。前者は昨季の3Aで83試合に出場して打率.338、26本塁打という出色の数字を記録。一方の後者も3AではOPS1.000以上をマークしている。外国人は使ってみなければ分からないことが多いとはいえ、マイナーでの成績やチームのニーズとの適合度は昨季の助っ人コンビよりは上だ。
さらに日本ハムをノンテンダーとなった西川遥輝も獲得した。左打ちの外野手は必ずしも補強ポイントではないが、リーグ最少の45盗塁にとどまった機動力を改善できる点では理想的だ。ソフトバンクを自由契約になって拾い上げた川島も、右の代打としてだけでなくリーダーシップの面でもプラスとなりそう。即戦力投手を獲得していなくとも、十分に最高評価をつけられる補強と言えるだろう。
【主な入退団選手】
▼IN
西川遥輝(外野手/日本ハム)
マルモレホス(外野手/マリナーズ)
ギッテンス(内野手/ヤンキース)
川島慶三(内野手/ソフトバンク)
▼OUT
牧田和久(投手)
カスティーヨ(外野手)
ディクソン(内野手)
■ソフトバンク
評価=可もなく不可もなく(C)
【オフの補強ポイント】
△ブルペンの強化
△マルティネスの穴埋め
○遊撃のアップグレード
4年連続日本一から一挙にBクラスまで転落した要因は、故障者の発生と世代交代の失敗。工藤公康前監督時代には何人ものリリーフ投手が潰れていたため、ブルペン強化でFAの又吉克樹を獲得したのは当然の策だった。しかし、その人的補償で岩嵜翔を取られてしまい、持ち駒の数自体は増えていない。
140.2投球回で防御率1.60と好投したマルティネスの穴をどう埋めるかも大きな課題となる。メジャー通算52勝を誇るチャトウッドも近年はリリーフが多く、むしろ再加入したレイの方が期待できるかもしれないが、いずれにしても穴埋めは容易ではない。ドラフトでも即戦力タイプの投手は指名しておらず、全体に補強ポイントを強化できたとまでは言えない。
一方、ガルビスの加入は間違いなくプラス。今季の新外国人選手では一番の大物であり、故障と打撃不振で停滞している今宮健太に取って代わるか、そうでなくとも二塁や三塁などで幅広く起用できそうだ。
【主な入退団選手】
▼IN
又吉克樹(投手/中日)
ガルビス(内野手/フィリーズ)
レイ(投手/ブルワーズ3A)
チャトウッド(投手/ジャイアンツ)
正木智也(外野手/慶応大)
▼OUT
マルティネス(投手)
岩嵜翔(投手)
長谷川勇也(外野手)
川島慶三(内野手)
■日本ハム
評価=まずまずです(B)
【オフの補強ポイント】
△攻撃力の強化
○二塁と遊撃の底上げ
リーグ最低得点に終わった打線が最大の強化ポイント。特に長打力の欠如が著しかったことから、ヌニェス、 アルカンタラと外国人野手を2人獲得した。ヌニェスは19年にメジャーで31本塁打を放った大砲。アルカンタラも昨年は3Aの71試合で17本を記録している。2人が評判通りに働いたとしてもなお迫力不足ではあるが、補強ポイントには合っている。
また、アルカンタラはメインのポジションが二塁と遊撃。どちらもレギュラーが固定できていないので、その面でもプラスだ。ドラフトでも、3位で指名した水野達希(JR四国)には即戦力の期待がかかる。
とはいえ、昨季途中に中田翔を放出し、オフに西川遥輝、大田泰示、秋吉亮の3人をノンテンダーとした穴もまた大きい。いずれも不振ではあったが、残っていれば巻き返す可能性もあっただけに、新助っ人らを加えたプラス分が相殺されてしまう点は否めない。また、バーヘイゲンの去就も未定。こちらも抜けたままなら、メジャーで実績のあるガントを加えたことを考慮しても大きな戦力ダウンになる。
【主な入退団選手】
▼IN
ヌニェス(内野手/タイガース)
ガント(投手/ツインズ)
ポンセ(投手/パイレーツ)
アルカンタラ(内野手/ジャイアンツ3A)
▼OUT
西川遥輝(外野手)
大田泰示(外野手)
秋吉亮(投手)
バーヘイゲン(投手)
■西武
評価=まずまずです(B)
【オフの補強ポイント】
△外国人選手の補強
○先発左腕の底上げ
最下位に終わった要因のひとつが外国人選手の低迷にあり、思いきった総入れ替えを敢行した。ただし、ビッグネームは不在で、日本での大化けに期待せざるを得ない。唯一の野手であるオグレイディはユーティリティタイプの中距離打者だが、3Aでは好成績を残していて、最も期待が大きい。
昨季も防御率がリーグ最下位だった投手陣には3人を加えた。左腕のエンスは3AでK/BB(奪三振と与四球の比)が5.00と優秀な数値。メジャーではリリーフで使われていたスミスも、先発として計算しているようだ。ブラジル出身の日系人投手タカハシは、24歳という年齢を考えても育成込みでの獲得だろう。
たった2勝に終わった先発左腕の強化も必須だったので、4球団の競合で引き当てた1位の隅田知一郎(西日本工業大)だけでなく、2位でも佐藤隼輔(筑波大)と大学生左腕2人を指名。エンスと合わせ、補強項目は着実に消化した。
【主な入退団選手】
▼IN
オグレディ(外野手/パドレス)
スミス(投手/アスレティックス)
エンス(投手/レイズ)
ウィティ(内野手/マリナーズ3A)
タカハシ(投手/起亜)
隅田知一郎(投手/西日本工業大)
佐藤隼輔(投手/筑波大)
▼OUT
ニール(投手)
スパンジェンバーグ(内野手)
ギャレット(投手)
メヒア(内野手)
ダーモディ(投手)
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB——“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球「ドラフト」総検証 1965-』(いずれも言視舎)。
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