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広島・黒原が即戦力に? 巨人・翁田はリリーフ、ブライトは二軍の育成が肝に【ドラ1の目標課題/セ編】<SLUGGER>

高卒投手でも完成度の高い小園(左上)は早期一軍も期待。故障の多い山下(左下)と粗削りなブライト(右下)はじっくり二軍からか。即戦力左腕の黒原(右上)がもしかしたら一軍定着は早いかも。写真:塚本凛平(THE DIGEST編集部)
いよいよ来週に迫ったプロ野球のキャンプイン。中でも毎年大きな注目を集めるのがドラフト1位で入団したルーキーだ。しかし同じドラ1という括りでも、高卒と大卒では1年目から求められるハードルは大きく異なるし、同じカテゴリーの選手でも完成度は大きな差がある。昨年を例にとっても、栗林良吏(広島)、伊藤大海(日本ハム)、佐藤輝明(阪神)、早川隆久(楽天)などはいきなり主力となったが、大卒組でも苦しんだ選手は少なくなかった。

そこで、今年の1位ルーキー12人それぞれの1年目の「目標」を、アマチュア時代のプレーぶりから考えてみたいと思う。彼らへの「期待」と「最低限」は一体どこなのか。今回はセ・リーグ6球団の1位選手を見ていこう。

<ヤクルト>
●山下輝(投手/法政大)
【二軍で10先発以上。後半戦に一軍先発デビュー】

法政大ではリリーフでの登板も多かったが、4年時はほぼ先発だったこと、球団の期待の大きさから先発を前提として考えた。【二軍で10先発以上。後半戦に一軍先発デビュー】という少し低めの目標としたのは、故障歴を考慮したからだ。

大学入学後にヒジを痛め、リーグ戦デビューは3年から。最終学年にようやく主戦となったが、ドラフト指名後にも左前腕の疲労骨折が判明している。急いで仕上げてまた故障を繰り返すよりも、キャンプでは慎重に調整するべきだろう。状態によってはリリーフとしてスタートすることも一つの方法である。日本人離れした体格とボールの角度、威力は申し分ないだけに、長い目で考えて2年目に本格化するくらいのイメージで考えたい。
<阪神>
●森木大智(投手/高知高)
【二軍で15先発、60イニング】

今年の高卒新人投手の中では小園健太(DeNA)に次ぐ完成度を誇る本格派右腕だ。中学時代にマークした150キロというスピードばかり紹介されるがちだが、大きなフォームから変わらずにスライダー、フォークなどの変化球を操れる点も高校生離れしている。また、フィールディングなど投げる以外のプレーについても高レベルで、プロへの対応も早そうだ。

そこで、ベンチマークとなるのは2年先輩のドラ1・西純矢だ。西は1年目の20年に二軍で11試合、45回を投げて4勝3敗、防御率4.00という成績だった。森木もそれをクリアすれば、まずは順調なスタートと言えるだろう。西は2年目の昨季に一軍デビューを果たして初勝利をマークしたが、順調にいけばシーズン後半の一軍デビューも期待できるだろう。

<巨人>
●翁田大勢(投手/関西国際大)
【二軍で先発なら90イニング、リリーフなら40試合登板】

ドラフト指名時には大塚淳弘副代表と原辰徳監督からは先発で即戦力として期待というコメントもあったが、大学での投球を考えるとハードルが高い印象だ。4年間で満足に活躍したのは2年秋と4年秋だけで、全国大会や国際大会など大きな舞台での経験もない。4年秋にベストと言える成績を残したことはプラス材料だが、ヤクルトの山下輝と同様に2年目以降の戦力と考えておいた方が無難だろう。

また、現時点ではリリーフの方が大成しそうな雰囲気を感じる。ドラフト1位ということでローテーション候補として考えたい首脳陣の気持ちも分からないではないが、本人の適性を考慮して、先発、リリーフ両方の可能性を探ることも検討してもらいたい。

<広島>
●黒原拓未(投手/関西学院大)
【一軍でリリーフとして40試合登板】

セ・リーグの1位指名6人の中で、最も早く一軍の戦力になりそうなのが黒原だ。4年秋はチーム内のコロナ感染で調整が遅れて不本意な成績に終わったものの、1年春から主戦として投げ続けてきた実績には安心感がある。全身を使った躍動感あふれるフォームで好調時のストレートは150キロを超え、変化球とコントロールも年々着実にレベルアップしてきた印象だ。

担当の鞘師智也スカウトもコメントしているように、先発よりリリーフが向いているように見える。イメージとしては中日や阪神で中継ぎとして活躍した高橋聡文がピッタリ当てはまるだろう。昨年フル回転した森浦大輔クラスの成績(54登板/防御率3.17/17ホールド)を残せば言うことなしだが、まずは一軍で40試合登板クリアを目安としたい。

<中日>
●ブライト健太(外野手/上武大)
【二軍で300打席&10本塁打】

大学生のドラフト1位だが、結果を残したのは4年春だけで、まだまだ攻守に粗削りなことを考えると、まずは二軍で経験を積む一年になることが予想される。2位の鵜飼航丞ともども、期待されているのが長打力だ。過去に堂上直倫、高橋周平がスラッガーの素材として期待されながら年々打者としてのスケールが小さくなっていったことを考えると、まずこだわるべきはホームランを含む長打ではないだろうか。

三振と打率は度外視してでも、まずは遠くへ飛ばすことにフォーカスする方が、今のチーム事情にはマッチしているはず。過去10年を振り返ってみても、二軍で2ケタ本塁打を放った日本人選手はチームに1人もいないだけに、ブライトにはまずその“壁”をクリアすることが一つの目安になるだろう。
<DeNA>
●小園健太(投手/市立和歌山高)
【二軍で15先発、60イニング。後半戦に一軍先発デビュー】

チーム待望の高卒エース候補。コントロールと投球術は高校生離れしたものがあり、プロ入り時点の完成度は奥川恭伸(ヤクルト)に匹敵するものがある。ストレートの平均球速は少し物足りなさが残るものの体格的なスケールは十分で、プロ入り後にまだ速くなる可能性も高い。

期待されるのは当然、将来の先発ローテーションの柱となることだ。高卒だけに焦りは禁物だが、故障がなければ二軍で積極的に先発として起用したい。成績的な目標は森木と同様の数字としたが、全体的な完成度は小園の方が上。順調にいけば後半戦に先発として一軍デビューも視野に入れたいところだ。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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