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オリックス牧田編成副部長が語る2021年ドラフトの狙い「チームに大きな厚みを持たせたかった」【オリ熱コラム2021最終版】

支配下・育成合わせて10人のルーキーが新たにバファローズに入団した。写真:Rinco
12月11日、大阪市内のホテルで行われたオリックスの新人選手入団発表会見には、育成選手を含む10名のルーキーが湊通夫球団社長、中嶋聡監督とともに登壇し、マスコミと家族の前で入団の抱負を語った。

1位は東北福祉大の右腕・椋木蓮。福良淳一GM兼編成部長は指名理由について「先発、後ろの両睨みで行って、椋木君が一番当てはまるかな」と語る。中嶋監督も、ドラフト直後に「ボールの強さがあり、スライダーのキレもある。高い能力を持つピッチャー。すべての可能性を持っている。投げているのを見て考えたい。エース候補として考えている」とコメントしている。

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近年は高校生の指名が目立っていたオリックスだが、今回は5位の池田陵真(大阪桐蔭高)のみだった。福良GMいわく「まさかあそこまで残っていると思わなかった」。当初は5~6名の指名予定だったが、池田を獲得できたこともあり支配下7名、育成3名の指名となった。 ここからは、ドラフトの陣頭指揮を執った牧田勝吾編成部副部長に総括してもらおう。まず、大学生の指名が目立ったことについては「大学の選手をという感じよりは、ここ数年指名した社会人の選手たちが1年目からそれなりに一軍でパフォーマンスしながら、昨年、一昨年と高校生を上位で指名して、優勝争いをしてくれた。そこでチームのバランスを考えて、来年さらに上昇するために、昨年、一昨年に指名した選手に少し力を与えるためにも大学生というか即戦力の選手を指名しました」と説明した。

「宮城(大弥)にしても紅林(弘太郎)にしても、2年目で一軍に出てますから。そういうところで、元(謙太/20年2位)や来田(涼斗/20年3位)も、山下(瞬平太/20年1位)も一軍で来年から出るかもしれないですし。ただ、もう1年時間をかけても大丈夫なように、これだけ戦力がいますよと。今年はチームに厚みをかけたいというのがテーマのドラフトでしたね」 また、牧田編成副部長はこんなことも言っている。「高校生が一人というのは近年の指名とは違うということで、『オリックスは何をするか分からない』という。『高校生に行くんでしょ?』と思われている中で今年は大学生。そうすると、『オリックスは高校、大学、社会人どこからも指名できるつながりがある』と」

「これはアマチュア全員にチャンスがあるという意味なんですけどね。どのタイミングで見られているか分からない。高校、大学、社会人、ウチは補強ポイントと合致したら獲りますよと。それを今年は示せたのかなと思います」

関西の有望な選手を獲得する「地元重視」の意向も少なからずあったようだ。「(私が関東を担当してましたから、かなり強く推して関東の選手が増えてしまったんですけど、今は全体を見るようになって、関西の選手を他球団に獲られないようにと。やっぱりファンの皆さんの反響も違いますし」と地元の有望な選手を獲得することに重きを置いたという。 福良GMが「大きかった」という、5位の池田はバファローズジュニア出身だ。「やはり高校生で関西出身で、バファローズジュニアだったというのもありますけど、本当に勝負強いバッティングとか、キャプテンシーを持った選手だったので。他球団に先に指名されてもおかしくなかったんですけど、オリックスと縁があったのかなと思いたい。またバファローズのユニフォームを着させたいという、うちのスカウトの気持ちが上回ったと思いたいですね」

牧田編成副部長は力強く語る。「今年のドラフトは確実に獲りたい選手は全員獲れたので、ファンの方には楽しんでいただきたい」

14年以降のドラフトで獲得した選手が中心になって、25年ぶりのリーグ優勝を果たした。牧田編成副部長はスカウトとしてずっと携わってきただけに、感慨深いようで「そこが頑張ってくれてるので、イキのいい選手が入ってきてくれる。やっぱり山岡(泰輔)、田嶋(大樹)。あの2人は高卒社会人でしたけど、宗(佑磨)も7年かけてですね。本当は3年目で出て来てほしいという思いでしたが、いいタイミングで今年開花してくれたのかなと。すべてがつながってると思いますから。生え抜きの力で勝てたというのと、クリーンナップを日本人で作れて優勝できたというのは嬉しかったですね」と笑みを浮かべた。 1位の椋木に関して牧田副部長は「先発なのか後ろなのか分からないですけど、一球見たら『こんなボール投げるんだ!』って驚かせられる子なので。大学から来たピッチャーにプロのバッターがこんなに押されちゃうんだ、こんなに空振りするんだっていうピッチングをしてくれるので、ファンの方にはそこを楽しみにしてもらいたい。ウチにはピッタリな選手」と太鼓判を押す。

3位の福永奨(国学院大)は勝ち気な面構えが印象的な捕手。「今年は何人かいいキャッチャーがいる中でウチは福永君がイチオシで、試合に出てない時もプラスになるのは彼かなと。声の出した方だったり、ベンチでの振る舞いだったり、キャプテンシーだったり、技術以外の部分も素晴らしい。下級生とバッテリーを組んだ時の仕草。ピッチャーのいいところを出そう出そうというのを感じたので。東都で春秋と勝たせたキャッチャーというのも大きい。肩も強いし、勝たせるキャッチャーは必要ですね」と評価。若月健矢や伏見寅威と1年目から競争する力があるという。
4位の渡部遥人(慶応大)は「大学選手権で首位打者を獲りましたし、プロでも通用する選球眼や出塁率だったり、守備範囲の広さは1年目から通用すると思って指名させていただいたんで。今年、福田(周平)が頑張ってくれましたけど、優勝したチームのレギュラーさえ脅かす選手が獲れたと思います」。

育成選手が3人と少なかったが、「コロナ禍の影響で試合数がなかなか増やせていけない。来年もどうなるか分からない」ため、無責任に多数の指名はしなかったという。「昨年、一昨年の育成選手と一緒にアピールしてもらって、支配下を目指して頑張ってほしい。自分の力を出してくれれば、今年の佐野如一みたいに開幕前に支配下登録されるチャンスもありますから、持ち味を存分に出してほしい」とエールを送る。

最後に牧田編成副部長は「みんなが応援してくれて、また見に来たいと思ってもらえるような選手を指名できていると思うと、とてもありがたい。それは僕一人じゃできない。スカウトの皆さんの推しがあってのこと」と語った上で、「チームに本当に大きな厚みを出せるドラフトだったと思いますし、自信を持って現場に送り出せる10名を指名できた感謝のドラフトでした」と総括した。

入団した選手たちは年明け早々に入寮し、新人合同自主トレを経て2月の春季キャンプからプロ野球選手としての一歩を歩み出す。
◎2021年オリックスドラフト指名選手
▼1位 椋木蓮
(投手/右投右打/東北福祉大)
担当スカウト:上村和裕
MAX154キロの伸びのあるストレートと斜めに鋭く曲がるスライダーが武器。先発でもリリーフでも対応でき、1年目からフル回転の活躍が期待される即戦力投手。

▼2位 野口智哉
(内野手/右投左打/関西大)
担当スカウト:谷口悦司
走攻守すべてのレベルが高く、大学1年から日本代表候補に選ばれた身体能力を持つ。アマチュア球界№1の肩の強さを活かした守備にパワフルな打撃も魅力の選手。バファローズジュニア出身。

▼3位 福永奨
(捕手/右投右打/国学院大)
担当スカウト:小松聖・上村和裕
抜群のキャプテンシーでチームを勝利に導き、安定したスローイングと長打力のある打撃が魅力。視野も広く、将来的にはチームを引っ張る主力捕手としての期待も大きい選手。

▼4位
渡部遼人
(外野手/左投左打/慶応大)
担当スカウト:早川大輔
一塁駆け抜け3.7秒の俊足が魅力で、外野手としての捕球センスも抜群。将来的にはレギュラーも狙える好素材。

▼5位
池田陵真
(外野手/右投右打/大阪桐蔭高)
担当スカウト:谷口悦司
無駄な動きがなく、インパクトに爆発的な力を伝えられるスウィングが特徴。センターから右方向へも本塁打が打てる。緊張したことがないというメンタルの強さが、チャンスの場面でもアグレッシブなプレースタイルを可能にしている。バファローズジュニア出身。
▼6位
横山楓
(投手/右投両打/セガサミー)
担当スカウト:上村和裕
コンパクトなテイクバックからスピンの効いたMAX153キロのストレートとキレのある変化球で空振りが取れるパワーピッチャー。

▼7位
小木田敦也
(投手/右投右打/TDK)
担当スカウト:上村和裕
ストレート、スライダーのキレで空振りが取れる。即戦力としての期待がかる実戦派右腕。

▼育成1位
山中尭之
(外野手/右投右打/茨城アストロプラネッツ)
担当スカウト:上村和裕
持ち前のフルスウィングから放たれる長打力が魅力。将来の大砲候補。

▼育成2位
園部佳太
(内野手/右投右打/福島レッドホープス)
担当スカウト:小松聖
逆方向にも大きい当たりを放つなど、長打力が魅力の内野手。

▼育成3位
大里昂生
(内野手/右投左打/東北福祉大)
担当スカウト:上村和裕
内外野を守れるユーティリティプレーヤー。ボールへのコンタクト、選球眼に優れており、出塁率が高い選手。

取材・文●どら増田

【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。

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