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【2021大谷翔平の軌跡:4月】衝撃の“リアル二刀流”で飛躍を予感させる会心のスタート<SLUGGER>

投げては100マイル超えを連発、打っては超特大アーチ。4月4日は今季の大谷を象徴するようなゲームとなった。(C)Getty Images
進化した二刀流の力を、開幕からフル稼働させた。4月、大谷翔平は、今までは見られなかった投打の姿を披露した。

「最初にDHを解除した試合は思い出というか、大きかったなと思います。今シーズン最後まで戦い抜く上でも、皆が不安なく(プレー)するためには重要な試合だった」

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シーズン終了後、帰国後の記者会見で大谷は言った。多くのファンや、ジョー・マッドン監督を含む球団首脳陣にとっても印象に残った4月4日のホワイトソックス戦。この試合が、2021年の二刀流・大谷を象徴する一戦だった。

DH制を採用するア・リーグであえてDHを解除し、「2番・投手」で出場。メジャーでは初めて、投打で同時出場する“リアル二刀流”で臨んだ。投手が2番の打順に入るのは118年ぶりの歴史的なゲーム。その第1打席で、ホワイトソックス先発ディラン・シーズの初球を捉えた。この先も、長く語り継がれるであろう衝撃の一撃。高めのボールを打ち砕くようなすさまじい打球音で、飛距離約137メートルの特大弾を放った。 ア・リーグではDHに強打者を起用して得点力を高める。DHを解除すれば、救援投手陣も打順に入るため、大谷の降板後は代打起用などの采配にリスクを伴う。それでも投打で同時出場させる理由は、大谷の打撃力の高さにあった。

起用に踏み切ったマッドン監督はこう言った。「あの試合の活躍で、彼はすべての疑問に回答した。誰もが、『彼なら出来る』と信じた」。果たしてリアル二刀流は機能するのか——シーズン開幕から懐疑的な空気も漂っていた中で結果を残し、見る者の度肝を抜いた。

投手としては、今季最速の101.1マイル (約162.7キロ)をマークした。勝ち星こそつかなかったが、4シームの球速で100マイル (約160.9キロ)越えは9度。先制弾の打球速度は115.2マイル (約185キロ)を記録し、投打でMLBトップレベルの数字を1試合で同時に叩き出した。 波に乗った二刀流・大谷は一気に加速した。

二刀流の出場スケジュールは、登板日の前後1日を欠場していた従来の形を撤廃。今季は登板前後もフル出場した。4月21日、登板日翌日に初めて本塁打を放ち、日米通算100号に到達。25日は、今度は登板前日の初ホームランを記録した。二刀流の出場制限が外れ、大谷は存分にフィールドを駆け回った。24日、大敗ムードのアストロズ戦では終盤の8回からメジャーで初めて外野の守備についた。交代要員が足りないチーム事情を理解した上で、DHから守備に就くことを志願した。

変わったのは二刀流の起用だけではない。技術向上とフィジカル強化の成果も、開幕1ヵ月で表れた。30日のマリナーズ戦。右腕クリス・フレクセンの外角低めのチェンジアップに体勢を崩されながらも、右翼席に運んだ。2年前に手術した左ヒザの不安が消え、下半身を中心に体がさらに一回り大きくなって臨んだ今季。左ヒザの粘りから生まれたスウィングの力強さが、飛距離アップにもつながった。
先発登板した月に月間8本塁打をマークし、二刀流の元祖ベーブ・ルースに並んだ。18年5月20日以来、1072日ぶりの白星を挙げた4月26日のレンジャーズ戦は、1921年のルース以来100年ぶりとなる、本塁打リーグトップの選手による先発登板も記録。歴史的なパフォーマンスが続いた。

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世紀を超える記録を次々と掘り起こし、ファンが二刀流の再来に沸いた21年シーズン最初の1か月。歴史的なシーズンを予感させる会心のスタートだった。

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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