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20歳の奥川はK/BB、新人王の栗林は奪三振率で驚異的な数値【表彰されざる男たち:セ・リーグ投手編】<SLUGGER>

優勝の立役者でもある奥川。高卒2年目とは思えない投球内容だった。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
 個人タイトルの対象ではなくとも、選手の凄みが詰まった部門のベスト3を紹介する。今回はセ・リーグの投手編だ。(※率系部門は先発で100投球回以上20人、救援で50投球回以上16人を対象)

■奪三振率(奪三振×9÷投球回)
【先発】
1.柳裕也(中日) 8.79
2.大貫晋一(DeNA) 8.52
3.今永昇太(DeNA) 8.25
【救援】
1.栗林良吏(広島) 13.93
2.コルニエル(広島) 11.59
3.マクガフ(ヤクルト) 10.63

 奪三振王の柳は、昨季も80投球回以上の投手で最高の奪三振率(9.32)をマークしていた。年々投球のレパートリーを修正しながら、自己ベストの成績に結び付けた。DeNAは先発2、3位の2人がフル稼働できれば、リーグ最下位の防御率に沈んだ投手陣の大きな伸び代になれそう。広島は新人の栗林が救援最多の81奪三振を量産して、新加入の160キロ右腕コルニエルとブルペンを強固にした。日本一のヤクルトはマクガフと、昨季は救援ベストの石山泰稚も10.47を記録。

■与四球率(与四球×9÷投球回)
【先発】
1.奥川恭伸(ヤクルト)    0.86
2.福谷浩司(中日) 1.48
3.大野雄大(中日) 1.63
【救援】
1.スアレス(阪神) 1.16
2.石山泰稚(ヤクルト) 1.64
3.祖父江大輔(中日) 1.66

 登板機会は限られたが、奥川は54.1イニング無四球を記録。CSファイナルステージでも無四球完封勝利を挙げた。福谷と大野はともに全試合3四球以下で、昨季と同様に先発の2位と3位。特に前者は18先発中15試合が1四球以下と、無駄な走者を許さず。最多セーブ獲得のスアレスは、前年から与四球率3.27→1.16で付け入る隙がほとんどなくなった。昨季に続いて救援2位の石山も2.22→1.64まで改善。祖父江は1位陥落も1台をキープした。■K/BB(奪三振÷与四球)
【先発】
1.奥川恭伸(ヤクルト)    9.10
2.大野雄大(中日) 4.54
3.福谷浩司(中日) 4.29

【救援】
1.スアレス(阪神) 7.25
2.石山泰稚(ヤクルト) 6.40
3.中川皓太(中日) 4.90

 年齢離れした完成度が自慢の奥川は、投球の総合度を測るK/BBでもずば抜けた数値を記録した。大野は昨季(6.43)から数字はダウンも、先発としては十分にハイレベルで先発2位の座を守った。一方、最多勝争いに加わった髙橋優貴(巨人)は奪三振率(4.86)も与四球率(3.90)も平凡で、K/BB1.25は先発ワーストだった。不振で抑えの座を奪われた石山だが、K/BBは前年(5.27)よりも良かった。

■QS率(QS÷先発数)
1.大瀬良大地(広島) 87.0%
2.森下暢仁(広島) 79.2%
3.柳裕也(中日) 76.9%

 先発で6イニング以上を投げて自責点3以内の回数を表すQSの割合で、広島勢がワンツー。大瀬良は序盤に戦線離脱も、柳と並ぶリーグ最多タイの20QSを記録した。森下はリーグ2位の19QSながら8勝とツキがなく、特に東京五輪後の後半戦は調子を崩して2勝のみ。柳は昨季(53.3%)から大きく上昇させたが、チームメイトの福谷浩司はリーグワーストの38.9%に沈んだ。
 ■被OPS(出塁率+長打率)
【先発】
1.柳裕也(巨人) .590
2.大野雄大(中日) .609
3.ガンケル(阪神) .612
【救援】
1.スアレス(阪神) .421
2.栗林良吏(広島) .430
3.又吉克樹(中日) .558

 柳は被出塁率.266と被長打率.324が先発のリーグベストで、最優秀防御率のタイトル獲得も納得だ。大野の被出塁率.267と、ガンケルの被長打率.339はそれぞれ2位。難攻不落のスアレスは被出塁率.211が救援のリーグベストで、前年の3位から1位へステップアップ。栗林は被長打率.170が1位で、与四球率4.82の制球を改善できればさらなる向上も望める。ソフトバンク移籍が決まった又吉は、今年の交流戦10登板で許した長打は二塁打1本だけ。

■被打率
【先発】
1.菅野智之(巨人) .213
2.柳裕也(中日) .215
3.今永昇太(DeNA) .221
【救援】
1.栗林良吏(広島) .135
2.スアレス(阪神) .183
3.エスコバー(DeNA) .188
 
 不本意な成績に終わった菅野だが、被打率は昨季(.196)と大きく変わらず先発1位の座を死守。強力打線を誇るヤクルト戦では.068とほとんど打たれず、対戦防御率0.39と滅法強かった。左腕の今永は前年同様、左打者に被打率.250とよく打たれた。栗林は53登板中33試合が被安打ゼロで、複数安打を浴びたのは3試合だけ。DeNAの大貫晋一(.298)と三嶋一輝(.287)が先発と救援のワースト。髙橋優貴(巨人)は得点圏で.127と粘った。
 ■被本塁打率(被本塁打÷投球回×9)
【先発】
1.柳裕也(中日) 0.58
2.青柳晃洋(阪神) 0.63
3.大貫晋一(DeNA) 0.72
【救援】
1.スアレス(阪神) 0.00
2.今野龍太(ヤクルト) 0.15
3.栗林良吏(広島) 0.17

 柳は前年の1.06からほぼ半減させ、広い本拠地バンテリンドームでは100.0回を投げて3被本塁打のみだった。前年に0.30で先発1位だった青柳は数値が倍増したとえ今季も2位と優秀。大貫の0.72は、一発が出やすいハマスタを本拠にしていることを思えば立派な数字だ。スアレスは被本塁打ゼロで、今野と栗林も1本だけ。最優秀中継ぎ投手の清水昇(ヤクルト)は柳を上回るホームラン12本を浴び、被本塁打率1.60は救援リーグワーストだった。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

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