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吉田正尚はさすがのクオリティ。本塁打王の“ラオウ”は意外な部門でもNo.1に【表彰されざる男たち:パ・リーグ野手編】

豪快な打撃が持ち味の“ラオウ”こと杉本だが、打撃以外にも隠れた武器がある。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
 個人タイトルの対象ではなくとも、プロの凄みが詰まった部門のベスト3を紹介していこう。今回はパ・リーグ野手編だ。(※率系部門は規定打席到達者29人が対象)

■OPS(出塁率+長打率)
1.吉田正尚(オリックス) .992
2.杉本裕太郎(オリックス) .931
3.柳田悠岐(ソフトバンク) .929

 総合的に優れた打者の証明であるOPSでは、首位打者と最高出塁率に加えて長打率もリーグベストの吉田が1位。本塁打王の杉本が続き、この部門で過去5回リーグトップに立っている柳田が3位に入った。リーグワーストは紅林弘太郎(オリックス)の.603で、10代にして2ケタ本塁打を放ったパワーは示したが、ダントツで低い出塁率.251が課題。

■四球率(四球÷打席)
1.浅村栄斗(楽天) 17.2%
2.西川遥輝(日本ハム) 16.3%
3.島内宏明(楽天) 16.2%

 浅村はキャリアハイにしてリーグ最多の101四球を選び、右打者ではリーグベストの出塁率.395をマーク。2年連続2位の西川は打率.233こそワースト4位ながら、持ち味の選球眼は健在で出塁率.362は10位だった。島内は4番に抜擢された今季、目覚ましく長打の数を増やしつつ、四球率や出塁率.385も自己ベストを更新した。■三振率(三振÷打席)
1.吉田正尚(オリックス) 5.7%
2.鈴木大地(楽天) 8.1%
3.中村晃(ソフトバンク) 10.7%

 昨季とまったく同じベスト3。吉田はリーグベストのOPSを記録しながら、1試合複数三振は2三振が3回だけで驚くしかない。鈴木は初球打ちが73回と打撃が積極的で、中村は28回だけの慎重型。結果も打率.315と.250で開きがあった。甲斐拓也(ソフトバンク)はリーグ最多の142三振を喫し、三振率29.6%もリーグワースト。

■BB/K(四球÷三振)
1.吉田正尚(オリックス) 2.23
2.森友哉(西武) 1.22
3.中村晃(ソフトバンク) 1.19

 上位2人はいずれも豪快なフルスウィングを持ち味としながら、バットコントロールや選球眼も一流。吉田は前年同様に三振の数を20台に抑え、2倍以上の四球を選ぶ驚異的なアプローチを再現した。昨季は自慢の打撃が低調だった森は巻き返し、四球の数が初めて三振を上回った。中村は対右・対左投手とも打率2割4分台だが、BB/Kは対右の1.40に対して左投手には0.74と倍近い差。

■本塁打率(打数÷本塁打)
1.杉本裕太郎(オリックス) 14.9
2.マーティン(ロッテ) 15.4
3.レアード(ロッテ) 16.7

 キング杉本は本塁打量産ペースでもトップ。13本を放ったロッテ戦では6.6打数に1本のペースでスタンドに放り込んだ。2、3位にはロッテの助っ人が揃ってランクイン。他球団の外国人打者が苦しんだ中、コンビでリーグ最多の56本を記録した。昨季まで3年連続1位の山川穂高(西武)は14.92だったが、規定打席未到達。■得点圏打率
1.吉田正尚(オリックス) .400
2.島内宏明(楽天) .328
3.レアード(ロッテ) .323

 首位打者の吉田は得点圏で「4割打者」となり、OPS1.158もリーグベストの頼もしさ。島内は打率.257と例年の水準ではなかったが、チャンスでは勝負強さを発揮して打点王獲得と4番の役割を果たした。レアードは得点圏での本塁打がリーグ最多の10本。規定打席未満ではあるが、愛斗(西武)は得点圏で打率.323と1割以上も上昇。

■内野安打
1.源田壮亮(西武) 25本
2.荻野貴司(ロッテ) 24本
3.中村晃(ソフトバンク) 19本
3.三森大貴(ソフトバンク) 19本

 2年連続で源田が1位。プロ入りから5年連続2割7分台の打率と同様に、内野安打も連続20本台をキープしている(1位3回、2位2回)。荻野は足の衰えを認めながらも自己最多の24本を稼ぎ、初の盗塁王へとつなげた。三森は82安打のうち内野安打が19本で、ソフトバンクの選手は10位以内(11本以上)に5人がランクイン。
 ■盗塁成功率(10盗塁以上)
1.牧原大成(ソフトバンク) 93.3%
2.岡大海(ロッテ) 91.7%
3.和田康士朗(ロッテ) 82.8%

 牧原は14盗塁、岡は11盗塁に対して失敗わずか1の精度で次塁を陥れた。昨季も2位だった和田は2年連続80%超えを維持して、史上最少24打席のみの盗塁王に。ちなみにタイトルを分け合った源田壮亮(西武)は72.7%、荻野貴司(ロッテ)と西川遥輝(日本ハム)は68.6%で成功率がそれほど上がらず、レースは混戦を極めた。

■補殺(外野手)
1.杉本裕太郎(オリックス)    11
2.マーティン(ロッテ) 9
3.辰己涼介(楽天) 8

 杉本は持ち前の打力を開花させただけではなく、かつてメジャー関係者の目にも止まった肩も披露。強肩自慢のマーティンは外野守備に就いたわずか87試合で、1位だった昨季(8)を上回る補殺を記録した。辰己はプロ入りから出場数に比例するように補殺も6→5→8と変動し、フル出場できればリーグ1位も狙えそう。

■盗塁阻止率(捕手)
1.甲斐拓也(ソフトバンク)    .452
2.伏見寅威(オリックス) .415
3.太田光(楽天) .379

 3年ぶりに甲斐が1位へ返り咲き。過去2年は.350以下だったが、今季は自己ベストを更新した。昨季から出番を増やした伏見は、盗塁阻止率も.296から上昇。昨季1位の太田は.333から数値を上げたが、上位2人には及ばなかった。シーズン途中にロッテへ移った加藤匠馬は強肩自慢のはずが盗塁阻止率.083に終わった。
 

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

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