【後編】神野大地選手 独占インタビュー 地域活動に込める想い、そしてオリンピックに向けて(全2回)
青山学院大学時代に「3代目山の神」として一世を風靡した神野大地選手(セルソース所属)。その後実業団に入りマラソンを始め、プロに転向して5年が経ちます。
そんな神野選手へのインタビューを、二回にわたってお送りしています。後編である今回は、プロ転向後の苦しみの中で気付いたこと、地域との関わり、そしてオリンピックに向けての想いを聞きました。
結果を出すためにプロに転向。セルソースとの出会い。
ーーセルソース所属となったきっかけを教えてください。
プロに転向すると決めて所属先を探していたところ、知人経由でセルソース社長の裙本さんから「スポンサーになれないか」というメールをいただきました。それがきっかけです。
実際に初めて裙本さんに会った時、「会社の宣伝をしたいとかではなく、純粋に神野大地の挑戦を応援したい」と言ってくれました。
更に、「会社もこれから成長していくフェーズで、一緒に成長していきたい。セルソースが大きくなってからではなく、今のセルソースだから意味があるんだ」とも言われました。
当時のセルソースは、創業3年目で社員数が30人ぐらいだったと思いますが、裙本さんのその言葉にはとても力が漲っていて、「凄く先を見てる人なんだな」と思いました。
僕はプロになったら、自分が活躍して、スポンサー企業の宣伝を頑張らないといけないと思っていたので、「こんなことを言ってくれる人がいるんだ」と驚きました。聖也さんとも、「裙本さんみたいな人と一緒にやれたら一番いいよね」と帰り道に話したことをよく覚えています。
一番最初に声を掛けてくださったこともあり、セルソース所属になることに迷いは無かったです。
ーープロに転向してからはどうでしたか。
東京オリンピックに向けてのMGC(マラソングランドチャンピオンシップ・オリンピック選考レース)が終わり、その後アジア選手権で優勝しましたが、その後の2年間は思うように結果が出ませんでした。自分に自信を無くしかけた2年でした。結果を出すためにプロになったのに、結果が出ないことが苦しかったです。
初めての「練習をしても結果が出ない苦しさ」の中で、モチベーションを保ち続けることの難しさを感じました。同時に、トップを目指すということはそういうことなんだなとも思いました。
--そんな辛い中でも競技を続けられたのは何故ですか。
怪我で走れなくなったり、タイムが上がらなくなっていたなら引退を考えていたかもしれません。でも身体は動くし、何より「自分はこんなもんじゃない」と思っていたのが大きいです。ここで辞めたら後悔するな、というのも自分ではよく分かっていました。
ただ、辛かったこの2年があったからこそ、人として大きく成長できたと思います。聖也さんやコーチの藤原新さん、トレーナーの中野ジェームズ修一さんという、万全なサポート体制の中で挑戦できる幸せを改めて感じましたし、応援してくれる方たちへの感謝の気持ちや、存在の大きさを再認識できました。それは、セルソースを始めとするスポンサーの方々に対しても同じです。
それまで上り調子で来ていたことで、ちゃんと認識出来ていなかったことを、立ち止まったことで気付けたのは、人生にとって大きなプラスだったと思っています。
地域との関わりで得られる刺激
ーー神野さんは地域のイベント活動も活発に行われていますが、活動を続ける理由は何でしょうか。
陸上って野球やサッカーに比べるとそこまで華やかではないですし、トップ選手や競技としての人気もまだまだだと思います。しかも、どちらかというと閉鎖的で、外との関わりが少ないです。でも、そんな閉鎖的な壁を越えてリアルで一般の方と関わると、いろんな発見を提供できるし、「応援したい」と思って貰えると思うんですよね。
陸上には、トップ選手の凄さを理解してもらいやすいという強みがあります。例えば、小学生向けのランニングイベントで、僕が「マラソン選手と同じスピードで400m走ってみよう!」と言うと、子供たちはみんな「余裕だよー!」と言うんですよ。でも、実際は100mしか付いてこれない。
そうやって体験すると、「マラソン選手って、このスピードで42kmも走ってるんだ、凄いな!自分もあんな風に速く走れるようになりたい。」と思ってもらえる。そうやって、陸上選手に憧れる子供たちが増え、結果的に陸上界の発展にもつながればいいなと思っています。
単純に、テレビ越しに「頑張るから応援してね」だけでは伝わりにくいですよね。リアルイベントの良さって、そういうところかなと思います。
ーーイベント活動の反響はいかがですか。
日々の練習は大変で辛いですが、僕は応援の力で支えられていると感じることが凄く多いです。セルソースには6つのValueがあって、僕は全てに共感しているのですが、そこに「Be happy, Make hapiness 幸せになり、幸せにしよう」というのがあります。ここだけ少し違うかもしれません。
今、地元の愛知県や練習拠点の浜松市で、ランニング教室だったり、講演・イベント等をやらせていただいているのですが、そこで接した人たちは、皆さん凄く応援してくれます。それが本当に活力になっています。
つまり、「誰かを幸せにして、それが返ってくることで、僕自身がとても幸せになっている」という形です。
アスリートは練習だけしてたらいい、という意見もあると思います。もちろん練習も頑張るのですが、視野を広げて「人生」について考えたときに、僕は走っているだけの「人生」で終わりたくない。
そして、自分の地元や練習拠点で応援されない選手が、全国で応援される訳もありません。陸上界のため、地域のため、そして自分のためにイベントや発信を続けていきたいと思っています。
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