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【2021大谷翔平の軌跡:7月】「史上初」の記録をいくつも打ち立て、夢のオールスターでは特例出場で主役に<SLUGGER>

「1番DH&先発投手」という前代未聞の形でオールスターに出場。ここでも大谷はMLBの歴史に名を刻んだ。(C)Getty Images
大谷祭りの7月となった。ファン投票(DH部門)でのオールスター出場が決まった2日のオリオールズ戦、今季2度目の2打席連続アーチで大台の30号に早くも到達。シーズン半分の81試合で30本塁打はリーグ史上初&球団初の偉業だった。さらに7日のレッドソックス戦で32号を放ち、オールスター前に日本人選手としての本塁打シーズン記録を更新した。

快進撃が続くなか、大谷の感情表現も豊かになった。2日の試合では、本塁打だけでなく足でもチームに貢献。同点の9回1死から四球で出塁し、2アウトから二盗に成功。続くジャレッド・ウォルシュの右前打で激走し、間一髪セーフでサヨナラのホームを踏んだ。スライディングで勢い余って転び、両手の拳を夜空に向かって突き上げた。

「前回は僕が打たれてしまった。みんなが取り返してくれて、今日は何とか自分が取り返したいなっていう気持ちでいきました」
6月30日のヤンキース戦で 0.2回を7失点で降板。試合を壊す結果になったが、9回の大逆転で救われた。だからこそ、挽回したい思いで臨んだ一戦。1試合2発と俊足で勝利をたぐり寄せた。気迫を前面に出すガッツポーズは多いが、あおむけの状態で喜びを表現する姿は珍しい光景だった。

そして迎えたオールスター・ウイーク。MLB全30球団から選りすぐりのスター選手が集結するなか、主役となったのは間違いなく大谷だった。

日本人で初めて出場したホームラン・ダービーでは、第1ラウンドでナショナルズの天才強打者ホアン・ソトと対戦。優勝オッズ1位と期待されたが、2度のタイブレークに突入する激戦を演じての初戦敗退。優勝こそ逃したが、舞台となったクアーズ・フィールドに詰めかけた約5万人のファンを魅了した。

2年前の19年にも出場を期待されていたホームラン・ダービーについて「僕というよりは、日本の野球界にとって大事なことじゃないかと思います。出るかどうかも、勝つか勝たないかも。いろんな選手がいるなかで出場するのは大事」と語った。

日本人がメジャーのオールスター選手の中でもトップになる——。結果は1回戦敗退でも、注目度は間違いなくナンバーワンだった。 野球を楽しむ大谷が最もよく見られたのは、やはりオールスター本戦だった。

特例が認められ、史上初めて「1番・DH&投手」で出場して迎えた1回表の打席では、大投手マックス・シャーザー(当時ナショナルズ)と対戦。結果はセカンドゴロで凡退だったが、その裏に先発マウンドに上がると、満員のファンの期待に応える100マイル(約160.9キロ)の速球を披露し、日本人では2人目のオールスター勝利投手となった。

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「オールスター、ホームラン・ダービーに関しても本当に新鮮な、いい経験をさせてもらったなと思ってます。パワー勝負、一番トップのレベルでできるというのが、自分的にもうれしかったですし、できるんだなっていうのを実感できただけで、もっともっと高いレベルで、自分をもっていくことができるんじゃないかなと思う」

メジャーを代表する選手とともにプレーし、夢舞台を存分に楽しんだ。前半戦を投打でフル稼働し、疲労感も拭えなかったが、野球人生でかけがえのない貴重な時間となった。 ファンにとってもそれは同じだった。大谷の一挙手一投足に注目し、スタンドからは携帯を手に写真やムービーを撮影する姿が目立った。オールスターでの二刀流。歴史的瞬間を逃すまいと、皆が大谷のプレーに虜になった。

絶好調だった6月の勢いのまま、期待を一身に背負いながら駆け抜けた1ヵ月。月間の打率は.282、9本塁打、19打点で本塁打と打点の二冠も見える位置まで成績を上げた。そして、「史上初」の記録をいくつもも達成し、メジャーの歴史を変えた。結果以上に、二刀流・大谷が最も脚光を浴びた7月だった。
【つづく】

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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