選手、コーチ、トレーナー。3つの立場から見る日本バスケ界の未来
後編では選手、コーチ、トレーナーという3つの顔を持つ師玉選手だからこそ、伝えられることは何かを中心にお話を伺っていく。
3つの立場から見る日本バスケ界の未来
-東京サンレーヴスの魅力はどんなところにありますか?
今年は選手も大きく変わって、メンバーが若くなったのでいくらでも可能性はあると思いますし、それが魅力でもあります。反面経験が足らないというのはあります。特に試合終盤になると経験の差が出てきてしまうことが多いですね。
-そのチームにおいて師玉さんはどのような役割を担っているのでしょうか。
まだリーグについて知らない選手がほとんどなので、他のチームや選手の特徴を教えるというのが一番です。スカウティングの時間に相手チームのビデオを見ながら話し合います。でもプレー以外の面では歳が離れた若い選手の中になかなか入っていきにくいというのはあります。共通の話題もないですし。唯一スニーカーが好きな選手とは少し話しますけど。
-一度契約が満了した後に選手兼任アシスタントコーチとして再び契約を結んでいます。その役割についてはチームから打診があったのでしょうか?
そうです。当初コーチをやる予定だった人がとある事情でできなくなり、他を探していたものの、リーグでの経験がない人しかいなかったところで、まだ所属先が決まっていなかった僕に話を頂いたんです。最初はコーチ専任で打診されていましたが、僕はまだ現役にこだわりがありましたし、今シーズン限りでbjリーグが終わってしまう中でどうしても最後まで選手としてやりたいということをチームに伝えました。それで選手兼任アシスタントコーチとしてやることになりました。
-今年の秋からB.LEAGUEが開幕しますが、そこでも続けたいという想いはあるのでしょうか?
やってみたい気持ちもありますが、どうなるか分からないので難しいですね。様々なことが変わる中で選手の移動もあるでしょうし、現役として声をかけてもらえるくらいの成績を残せないと次は見えてこないですから。
でも方法はともあれ、今回新リーグ創設に際して世間がバスケットボールに関心を持ってくれたというのは事実ですし、その中に身を置けているというのはいい経験だと思っています。
-今後bjリーグ、そしてB.LEAGUEをもっと盛り上げていくためにはどのようなことが必要になってくると思いますか。
まだ僕が初めてアメリカでNBAを見た時の衝撃を超えられていないというのはありますよね。もちろん全部アメリカがいいとは言いませんが、『全員で応援しましょう!』という感じを日本は出すので、それはあまりいらないと思います。そこに入っていきにくい人もいるはずなのに、ある種の強要みたいになってしまっています。煽るのはいいですが、試合前にわざわざ応援に練習をしたりする必要はないんじゃないかと。試合自体が白熱すれば勝手に盛り上がってくれると思いますから。
選手との近さという点でも他の競技と比べたら、距離は短いのかもしれませんが、通常の体育館を使って試合をするので、席によっては臨場感を味わえない場所もあるでしょうね。既存の体育館だとデッドスペースとなっている場所がどうしても出てきてしまいます。だから本当は小さくてもいいので、バスケットボール専用の体育館を作りたいです。
-現在は背番号31を付けていますが、何かこだわりがあるのでしょうか?
まず、奇数がよかったのと好きな3という数字を入れたかったです。でも一桁の3は既に付けている選手がいたので、30か31で悩みました。最終的に新しいスタートの一歩目で、年齢も31歳、自分の名前にも一が入っているということから31番にしました。
-トレーナーとしては今、どのような活動されているのでしょうか?
スポーツクラブに来るお客さんにパーソナルトレーニングをしています。なので、特にアスリート向けというわけではなく、ニーズに合わせたメニューを行っています。
若い選手へのメッセージとこれからの目標
-師玉さんは選手、トレーナーという2つの顔があり、引退後の道も開けていると思います。選手のセカンドキャリアについて、若い選手に伝えたいことはありますか?
バスケットボールに関して言えば、部活やジュニアチーム、B.LEAGUE参入時に各チームに設置が義務付けられている下部組織など、指導に関して一定の需要はあると思いますが、そこで教えたいという選手も溢れてきています。しかし、いざ指導するとなると教えるスキルがなかったり、子供との接し方が分からなかったりしている人もいます。なので、バスケットボールにずっと携わっていくというのは厳しいと感じています。そうなると別の道も視野に入れていくことが必要になります。それでも教えたいのであれば今はライセンス制度があるので、それを取ったりした方がいいでしょうね。
僕の場合はジュニアのスクールを受け持つ時間が長かったり、トレーナーの勉強をしている時に中高生にグループ指導をする機会があったりと、教えることに関しては抵抗がありませんでした。それでも小学生に向けて教える場合にはより噛み砕いた表現にするなど、工夫が必要になってきます。年代によって伝え方は変わってきますね。
あと、子供に関して言えば、実際にやって見せることでイメージを持たせることが重要です。時間はかかりますが、一度飲み込んでしまえば習得するまではやはり子供の方が早いです。
-今後の師玉さんの目標を教えてください。
まずは1日でも長くバスケットボールをプレーすることが第一の目標です。
その後はバスケットボールを教えるのか、トレーニング指導の道に進むのか、まだ決めていませんが、将来的には両方一緒に教えられるようなプログラムを提供できるようになりたいです。
-ここからはプライベートについての質問をしていきます。オフの日は何をして過ごしますか?
映画を観たり、散歩して神社や寺を回ったり、銭湯巡りをしますね。ここ最近だとスターウォーズ最新作を過去の作品を復習した上で観ました。
-好きなNBAのチームはニューヨーク・ニックスだそうですね。
23歳の時にニューヨークでニックスの試合を観たのですが、それが今でも忘れられないんです。いい試合になればみんな立ち上がりますし、ダメだと平気でブーイングします。日本だとブーイングなんてなかなか起きません。唯一沖縄にはそんな感じの雰囲気があって、僕らとしてもやっていて面白いです。バスケットボールの見方を知っているし、普通にコートサイドから話しかけてきますからね。
-好きなバスケットボールマンガはありますか?
僕は基本的にスラムダンク以外認めていないです(笑)他のマンガは動きも認められないですし、自分が受け付けないというのもあります。一方でスラムダンクはワンシーン毎のインパクトが強く、プレーヤーとしてイメージできるんです。選手やプレーがどのNBA選手をモデルにしているのかもだいたい分かります。ちなみに僕はミッチー(スラムダンクの登場人物・三井寿)が好きです(笑)
マンガだと唯一、リアルくらいじゃないですか。いずれにしても井上雄彦さんのマンガしか見ていないということです。
スラムダンクが流行った時と並行して日本ではバスケットボールブームが来たので、あの時の勢いはすごかったです。地上波でNBAのダイジェスト番組が放送されたり、NBAの開幕戦が日本で行われたりと、非常に盛り上がっていました。みんな外履きでバスケットボールシューズを履いていたりもしていましたし(笑)でもそこでもっとできたことがあったはずなのにできず、一皮剥けなかったバスケットボール界はもったいないですよね。
-もしバスケットボール、トレーナーをやっていなかったら何をしていましたか?
おそらく野球選手を目指していたでしょうね。ポジションは一塁手と投手でした。元々身長も高くて、小学6年の時点で168cmありました。母親の家系は背が高いので、その遺伝でしょうね。本当はもうプラス5cm欲しいですけど。バスケットボールをやる上で190cmあったならもう少し世界は変わっていたと思います。
-プロ野球はベイスターズファンだとお聞きしました。
そうですね。でもDeNAに買収されてからまだ一回もハマスタ(横浜スタジアム)には行っていません。昨年神宮には観に行きました。神宮のあのゆるい感じが好きなんです。内野と外野の境目で観るのがお気に入りです(笑)
-師玉さんが大切にしている言葉はなんですか?
「やらない後悔よりもやる後悔」という言葉です。あれこれ言って何もしないよりも、実際にアクションしてみて、結果失敗して通用しなかったとしても、その経験自体をすることの方がいいです。「あの時こうしておけばよかった…」と思いたくないですから。実際に動いてきたからこそ、開けた道も今までありました。
あとは「No Pain,No Gain」ですね。何かをするためには痛みが伴うということです。
-最後に読者の方にメッセージをお願いします。
インタビューを読んで試合を観にきてくれることはもちろんのこと、これを通してバスケットボールに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。そしてスポーツが好きな方は僕のパーソナルトレーニングを受けに来てもらえたらと嬉しいです。きっと何かお手伝いすることができると思います!
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