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「足元に革命を」いま注目のダイヤル式シューズを支える「BOA®(ボア)」とは何なのか

卓球用具紹介 「足元に革命を」いま注目のダイヤル式シューズを支える「BOA®(ボア)」とは何なのか

2021.09.12 取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)
まだ記憶に新しい、東京五輪混合ダブルス金メダル。その立役者である伊藤美誠(スターツ)の足元にあるダイヤルに、ふと目がいった。

伊藤美誠
ITTFワールドツアーハンガリーOPでの伊藤美誠/提供:ittfworld靴紐でなく、ダイヤルを回して締める。

BOAフィットシステムを搭載したウェーブメダルBOA
現在使用されているダイヤルは左右ともつま先側(右足は右回転、左⾜は左回転)に回転させて締め込む(※ウェーブメダルSP3のダイヤルは左右ともに右回転)先日放送されたテレビ番組『ガイアの夜明け』でも特集されていた、あのシューズだ。
実は、インターハイや全中などの学生の全国レベルの大会会場でも、近年よく目にするようになってきている。

boa
インターハイなどの全国大会でもよく見るようになってきたこのページの目次

  • [9 取材を終えて]()

BOA(ボア)って何だ?

BOAフィットシステム(通称BOA)は、アメリカのBOAテクノロジー社(以下BOA社)が開発し、ブランドパートナー各社製品に搭載されているダイヤル式フィットシステムのことだ。 シューズのフィットにおいて不可欠な、ダイヤル、レース、ガイドの3つのパーツで構成されている、あのダイヤルだ。

BOAフィットシステムを搭載したウェーブメダルBOA
BOAフィットシステムを搭載したウェーブメダルBOA/撮影:槌谷昭人BOA社は、アメリカのコロラド州で2001年に創業されたエンジニアリングカンパニーだ。
このダイヤル式フィットシステムは、創業者がスノーボードブーツの紐を結ぶ際の手間から着想を得た。

その後20年の間に、サイクリング、ゴルフ、登山、バドミントン、トレイルランニングなど多くのカテゴリーに広がり、現在BOAを採用するブランドパートナー(スポーツギアメーカー)は300社以上に及ぶ。近年、サイクリングのツール・ド・フランスでは、出場アスリートの約7割がBOAフィットシステム搭載シューズを履いていたというから驚きだ。


2021 ツール・ド・フランス、確かにダイヤル式シューズばかりだ/提供:AFP/アフロ彼らの事業をひと言で表現するなら、シューズにおける「フィットの再定義」に挑む技術開発、と言えるだろう。

BOAパフォーマンスフィットラボ
コロラド州に最新設備を備えた「パフォーマンスフィットラボ」を持ち開発を行う/提供:BOA TECHNOLOGY JAPAN## 2014年、卓球シューズ開発スタート

BOAを採用した卓球シューズの開発が始まったのは2014年のことだ。
既に、BOAフィットシステムを搭載したゴルフシューズを日本のミズノと共に開発・発売し、瞬く間にユーザーに広がっていった実績から、ミズノが手掛ける別カテゴリーのスポーツの中から、卓球が選ばれた。

BOAフィットシステム搭載のスポーツシューズ
BOAフィットシステムは現在多くのカテゴリーのシューズに広がっている/提供:BOA TECHNOLOGY JAPAN最初に発売されたのが2015年、ウェーブメダルSP3(秋冬モデル)である。今も販売を続けるロングセラー商品となっている。
現在発売されているダイヤル式卓球シューズは、ウェーブメダルSP3、ウェーブメダルBOA、ウェーブメダルSP4(いずれもミズノ、発売順)の3種類である。

BOAフィットシステムのメリットとは

別に紐で困ってないけど、という卓球プレーヤーの声も聞こえてくるが、実はこのBOAフィットシステム、ただ紐をダイヤルに置き換えただけではない。

もちろん、脱着性の良さ好みの締め付け設定が容易であることは、このダイヤル式のメリットだが、それに加えて、アッパー部分の構造変化により、アスリートのパフォーマンス結果が改善されるという興味深い研究論文※が、アメリカのデンバー大学との共同研究により発表されたのだ。※2021年1月/Footwear Science掲載

一般的に、シューズの機能といえば、アウトソール(地面との接地面)のグリップや、ミッドソール(アウトソールとインソールの中間部分)のクッション設計が注目されることが多いが、アッパー部分の構造変化は、パフォーマンスにどういう効果をもたらしたのだろうか。

BOAフィットシステムを搭載したウェーブメダルBOA
BOAフィットシステムを搭載したウェーブメダルBOA/撮影:槌谷昭人## 実験概要

ラクロス、ラグビー、サッカー、テニスの男性アスリート31名が実験に参加し、反復スケータージャンプ、反復垂直跳びなど4動作について、シューズのアッパー(締め付け)部分のみ4種類変化させて実験を行っている。

反射マーカー38個と、カメラ11台によるモーションキャプチャでアスリートの身体セグメントを記録し、踏み込み1回毎に、接地時間、最大伸張性筋力発揮率など計6項目の変数を計算する、大掛かりな生体力学に関する実験である。

シューズのアッパー部分は下記4種類だ。

BOA
(左から)従来のシューレース、レースリプレイスメント、トライパネル、Yラップ)/提供:BOA TECHNOLOGY JAPAN## 敏捷性に大きな効果

結果は、トライパネルとYラップの場合、従来のシューレースと比較して、様々な動作パフォーマンスの結果が改善していることがわかった。

BOAフィットシステム
数値の改善が顕著に見られたトライパネル(画像左)とYラップ(画像右)構造特に注目するべきは、卓球にとって最も重要な敏捷性に関わる動作において、水平方向(反復スケータージャンプ)、垂直方向(反復垂直跳び)両方において、トライパネルでのパフォーマンス数値向上が最も顕著であったことだ。変数7項目のうち4項目で改善が見られる。

BOAフィットシステムを搭載したウェーブメダルBOA
トライパネル構造アッパー部分以外はすべて同じ条件下でもパフォーマンスに顕著な変化が起こった理由について、こう考察している。

「シューズのアッパーは、足とシューズの連結をサポートし、足の稼働に適した環境を提供するもの。今回、エネルギーロスの減少につながる、よりフィットするアッパーの機械的要素がパフォーマンスに影響を及ぼしたと考えられる」。

BOAパフォーマンスフィットラボ
写真:パフォーマンスフィットラボでは多くの開発と実証実験が行われている/提供:BOA TECHNOLOGY JAPAN## 卓球シューズではウェーブメダルBOA

さて、少し難しい話になってしまったが、このトライパネル構造を搭載しているのが、卓球シューズではウェーブメダルBOAだ。

BOAフィットシステムを搭載したウェーブメダルBOA/
トライパネル構造を搭載するウェーブメダルBOA/撮影:槌谷昭人アッパー構造に加えて、ウェーブメダルSP3との大きな違いは、シューレース(靴紐に相当する部分)がそれまでのワイヤーからテキスタイル(非金属繊維)になったことだ。

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