栗山ジャパンの「戦い方」はどうなる? 意外に“保守派”の男に期待される大谷翔平の代表招集<SLUGGER>
以前からの噂通り、11月29日に前・北海道日本ハム監督の栗山英樹が、野球日本代表監督に就任すると発表された。突発的な事態が発生しない限り、2023年3月に開催予定のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は栗山体制で臨むことになる。
日本ハム時代の10年間のうち、後半の5年は5位が4回と低迷して評価を下げていたが、1年目の12年は、大エースのダルビッシュ有(現サンディエゴ・パドレス)が抜けたばかりのチームを優勝に導いた。そして16年には、大谷翔平(現ロサンゼルス・エンジェルス)の二刀流を完全開花させて日本一になっている。
指導者経験もないまま代表監督になった稲葉篤紀や小久保裕紀に比べれば、はるかに実績は豊富だし、勝負勘が鈍っている心配もない。WBCまであと1年半とそれほど時間がない状況を考えれば、その点は重要な選考ポイントだった。
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では、栗山は日本代表でどのような采配を振るのだろうか。大谷の二刀流だけでなく、近年はオープナー/ショートスターターを試したり、守備シフトを導入したりしたので、新しもの好きで奇策に走りがちな印象が強いかもしれない。国際試合でもそういった作戦を実行したり、サプライズ的なメンバーを選んだりするのではないか? と期待、もしくは懸念している人も少なくないだろう。
栗山がそのような「面白い野球」を好むタイプであることは間違いない。しかしながら、采配面は意外に保守的な要素も強い。監督になって1~2年目の頃には、やたらとスクイズを試みていたことをファイターズファンなら覚えているはずだ。近年の変則的な采配の数々は、下降した戦力を補うための策といった側面もあって、強力な顔触れが揃う日本代表であれば、その必要性は薄くなる。
就任会見においても「日本の野球の本質的な良さは、きめ細かく精度が高いこと。投手中心に守る、しっかりした野球ができるベースはある」と述べていたので、これまでの代表チームと同様、スモールボールを戦術の基本に据えるつもりのようだ。選考する選手もその路線から大きく外れはしないだろう。
「怪我人だけは絶対出さないように」とも言っていたが、代表メンバーに普段と違う役割を押しつけ、所属球団に迷惑をかけることになっては「俺が悪い」では済まされない。
単独チームを率いるのであれば多少の冒険もできるが、「日の丸を背負って戦う」となると責任の重さは違うし、ファンが求めているのもエンターテインメントではなく純粋に勝利だ。歴代の代表監督がそうした制約を抱えながら戦ってきたように、オーソドックスな采配にならざるを得ないと思われる。
それでもなお独自色を出せるとしたら、やはり大谷の存在だ。
会見では「必要ですか? 翔平」などととぼけていたけれども、その点も監督に任命された要因であるのは本人も承知しているだろう。もちろん代表に加わることが大前提となるが、エンジェルス(もしくは23年に在籍している球団)の顔色をうかがうことなく大谷を使える監督がいるとしたら、強い信頼関係で結ばれている栗山以外にいない。「先発投手・DH」だけでなく、場合によっては外野手やクローザーとしての起用もあるかもしれない。
ところで、栗山監督の長所であり同時に短所でもあるのは、これと見込んだ選手は頑なに使い続ける点である。批判に耳を貸すことなく大谷を開花させ、来日当初は全然打てなかったブランドン・レアード(現・千葉ロッテ)が本塁打王にまでなった一方で、ドラフト1位指名で加入した斎藤佑樹や清宮幸太郎は期待に応えられなかった。
日本代表でも、調子が上がらないからといって主力を簡単に外したりはしないはず。そのあたりの見極めが的確にできるかどうかが、代表監督としての成否を分けそうだ。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB——“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。主な著書は『改正新版メジャー・リーグ人名事典』『メジャー・リーグ球団史』など。最新刊『プロ野球ドラフト総検証1965—』も発売中(いずれも言視舎)。
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