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川上憲伸vs高橋由伸に“トレンディエース”対決…過去の「ルーキー豊作年」の新人王投票結果を振り返る

東京六大学時代もしのぎを削った川上(左)と高橋(右)はプロの世界でも好勝負を演じた。写真:産経新聞社
栗林良吏(広島)、牧秀悟(DeNA)、佐藤輝明、中野拓夢(ともに阪神)……今季のセ・リーグはルーキーの活躍がとにかく目立った。15日(水)の新人王発表を前に、過去の「豊作年」と投票結果を振り返ってみよう。

■1987年(パ・リーグ)
①阿波野秀幸(近鉄)141票
【試合】32 【勝敗】15-12 【防御率】2.88
【投球回】249.2 【奪三振】201 【与四球】58

②西崎幸広(日本ハム)51票
【試合】30 【勝敗】15-7  【防御率】2.89
【投球回】221.1 【奪三振】176 【与四球】62

大学からドラフト1位指名でプロ入りした2人は、ともに1年目で15勝を挙げ、防御率は阿波野が2.88、西崎が2.89の僅差。さらに2人とも長身細身の甘いマスクとあって「トレンディエース」と呼ばれ、当時人気面でセ・リーグに大きく後れを取っていたパ・リーグを大いに盛り上げた。新人王投票では意外に大差がついて阿波野が受賞。負け数は7の西崎に対して阿波野が12と多かったが、リーグ最多の249.2投球回と201奪三振が評価された形となった。
■1990年(セ・リーグ)
①与田剛(中日)102票
【試合】50 【勝敗S】4-5-31 【防御率】3.26
【投球回】88.1 【奪三振】70 【与四球】28

②佐々岡真司(広島)46票
【試合】44 【勝敗S】13-11-17 【防御率】3.15
【投球回】151.1 【奪三振】129 【与四球】53

与田は新人ながらクローザーを任されると、リーグ最多の31セーブを記録。日本人では当時最速157キロを叩き出した剛速球を武器に、打者を押し込んだ。一方、初登板初先発で完投勝利を挙げた佐々岡は、一時は抑えも務めるなど先発にリリーフにフル回転。13勝11敗17セーブ、151.1投球回は与田(88.1)を大きく上回り、防御率でも優っていたが、印象度で一歩劣った形となった。与田はNTT東京から、佐々岡はNTT中国からプロの門を叩き、ここ2年は当時の所属球団で指揮官として相対している。
■1998年(セ・リーグ)
①川上憲伸(中日)111票
【試合】26 【勝敗】14-6 【防御率】2.57
【投球回】161.1 【奪三振】124 【与四球】51

②高橋由伸(巨人)65票
【試合】126 【打率】.300 【本塁打】19
【打点】75 【盗塁】3 【OPS】.852

③坪井智哉(阪神)12票
【試合】123 【打率】.327 【本塁打】2
【打点】21 【盗塁】7 【OPS】.797

④小林幹英(広島)5票
【試合】54 【勝敗S】9-6-18 【防御率】2.87
【投球回】81.2 【奪三振】105 【与四球】36
慶応の高橋と明治の川上、東京六大学時代からライバルだったふたりが、プロの舞台でもハイレベルな争いを演じた。リーグ2位の防御率2.57をマークした川上に対して、高橋は新人史上7人目の打率3割をクリアし、外野手でリーグ最多タイの12補殺を記録してゴールデン・グラブ賞を受賞。両者の直接対決は22打数1安打で川上の完勝(唯一の安打は本塁打だった)。新人王投票でも意外に差がついた。

この年のセ・リーグは他にも輝きを放ったルーキーがいた。坪井は振り子打法から快打を放ち、2リーグ制以降で新人記録の打率.327をマーク。小林は球団史上3人目の新人開幕戦勝利を手にし、クローザーに定着して18セーブ、奪三振率11.57と打者を圧倒した。■1999年(セ・リーグ)
①上原浩治(巨人)196票
【試合】25 【勝敗】20-4 【防御率】2.09
【投球回】197.2 【奪三振】179 【与四球】24

②岩瀬仁紀(中日)4票
【試合】65 【勝敗S】10-2-1 【防御率】1.57
【投球回】74.1 【奪三振】73 【与四球】22

③福留孝介(中日)1票
【試合】132 【打率】.284 【本塁打】16
【打点】52 【盗塁】4 【OPS】.810

MLB球団からの誘いを蹴って巨人入りした上原は最多勝・最多奪三振・最優秀防御率・最高勝率のタイトルを獲得し、新人では史上3人目の投手四冠を達成。WHIP0.90もリーグベストで、球史に残るルーキーシーズンを過ごした。

上原の陰に隠れてしまったが、中日のリーグ優勝に貢献した2人の活躍も見事だった。ドラフト3位入団の岩瀬はセットアップとしてリーグ最多の65登板をこなして10勝、防御率1.57の安定感。逆指名で入団した福留も、リーグ最多の121三振、遊撃で13失策と粗さも同居させながらスケールの大きなプレーでファンを沸かせた。

また、票外ながら福原忍(阪神)が54試合で10勝9セーブ、二岡智宏(巨人)はショートに定着して打率.289、18本塁打をマーク。通常の年なら間違いなく新人王候補に挙げられる活躍だった。
■2013年(セ・リーグ)
①小川泰弘(ヤクルト)252票
【試合】26 【勝敗】16-4 【防御率】2.93
【投球回】178.0 【奪三振】135 【与四球】45

②菅野智之(巨人)13票
【試合】27 【勝敗】13-6 【防御率】3.12
【投球回】176.0 【奪三振】155 【与四球】37

③藤浪晋太郎(阪神)8票
【試合】24 【勝敗】10-6 【防御率】2.75
【投球回】137.2 【奪三振】126 【与四球】44

創価大3年秋から無敗を続けていた“ライアン”小川は、プロでも白星を重ねて最多勝と最高勝率のタイトルを獲得。1年間の浪人を経て憧れの巨人入りを果たした菅野は、防御率が小川に次ぐリーグ6位、与四球率1.89は同2位。CSで完封勝利を飾るなど、前評判に違わぬ実力を見せた。

一方、前年に甲子園春夏連覇を果たした藤浪も、さまざまな高卒記録を掘り起こしながら10勝に到達。規定投球回には届かなかったとはいえ、防御率2.75や奪三振率(8.24)は小川、菅野よりも優れた数値だった。

文●藤原彬

【著者プロフィール】
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『スラッガー』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。

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