
聴覚障がい者による世界最高峰の総合スポーツ大会として、2025年11月に日本で初めて開催される「東京2025デフリンピック」。卓球競技は東京体育館で11月19日から24日まで行われ、男女団体・シングルス・ダブルス、そして混合ダブルスを含む7種目で熱戦が繰り広げられる。
大会に向けて強化を進めるデフナショナルチームは、定期的に合宿を実施している。7月25日から27日には宮城県の東北福祉大学にて、今年度6回目となる強化合宿を開催。男女4名ずつの日本代表内定選手が参加した。
合宿では、1日目から2日目午前にかけてシングルスの練習に重点を置き、2日目午後からはダブルスや混合ダブルスも含めた練習を実施。東北福祉大学卓球部がトレーニングパートナーとして協力し、真夏の仙台で代表選手たちは汗を流した。
大島剛総監督(トヨタ自動車)インタビュー
── 東京デフリンピックに向けてどれくらいの頻度で練習、活動を行なっていますか?また、今回出場を予定している選手の人数、種目についてもお聞かせください。
大島:月1回のペースで合宿を開催しています。東京、仙台、愛知を中心に各地で開催し、実業団や大学生、高校生に練習パートナーとして来ていただき、充実した練習ができています。
選手は全国各地バラバラの拠点のため、合宿以外では顔を合わせることができません。ですので、合宿ではダブルスやミックスダブルスを中心とした練習を多く組むように工夫して取り組んでいます。
写真:トレーニングパートナーとして東北福祉大学卓球部も練習に参加/撮影:ラリーズ編集部
※以下、出場を予定している選手の種目と人数
男子団体
女子団体
男子シングルス(4)
女子シングルス(4)
男子ダブルス(2)
女子ダブルス(2)
混合ダブルス(4)
── 中国、ウクライナ、ロシア、韓国など、ライバル国に対してどのような対策を行なっているのでしょうか?
大島:この国のこの選手に対してこういった対策をしようみたいなことは今のところは実施していません。ただ、女子選手(中国やインド)には異質系の選手が多く居ますので、異質型の練習パートナーに来ていただいて異質に慣れる練習はしています。
実業団、大学、高校などたくさんのチームの方々に練習パートナーとして来ていただき、強化練習ができていることに感謝しています。
── 地元東京での開催ということで注目度も高まっているのではないでしょうか?
大島:やはり地元開催ということで、注目度もこれからどんどん上がって行くと思います。もちろん、勝つ姿、金メダルを獲る姿をお見せできるように頑張りますが、障害を持ちながらも頑張っている姿や楽しんでいる姿をぜひ会場で見ていただき、応援していただきたいです。
写真:デフリンピックの「レジェンド」南方(旧姓:上田)萌コーチ(写真右)/撮影:ラリーズ編集部
── 今大会のスタッフ・コーチ陣それぞれの役割をお聞かせください。
※以下、スタッフ体制
強化部長/総監督:大島剛
男子監督:大倉峰雄
女子監督:松島京子(デフ)
男子コーチ:上田大輔(デフ)
女子コーチ:南方萌(デフ)
トレーナー:五十嵐、友寄
総務:豊由(デフ)、宮下(デフ)、傳田(デフ)
手話通訳:井出
写真:全日学4連覇も達成した大倉峰雄監督も指導にあたる(写真左から2番目)/撮影:ラリーズ編集部
大島:監督、コーチに関しては大倉さんと私以外はデフリンピック経験者を配置しました。同じ経験をしている先輩が近くに居ることで安心感もありますし、意思疎通も上手くできることが選手にとって良いと考えました。
また、トレーナーを2名配置していますが、友寄さんに関しては今年から加わっていただきました。石川佳純さんやTリーグのチームを担当した経験をお持ちなので、カラダのケアを中心に担当していただいています。宿舎に戻ってからも夜遅くまでケアをしていただいており、選手たちはとても恵まれていると思います。
私としては過去最高のスタッフ体制を組むことが出来たと思っています。
写真:五十嵐トレーナーの指導のもとフィジカルトレーニングに励む/撮影:ラリーズ編集部
── 今大会の目標を教えてください。
大島:もちろん全7種目での金メダル獲得です。個人種目はそれぞれの選手がそれぞれの目標があると思いますので、日本チームとしてはやはり団体戦での金メダル獲得が一番の目標です。
選手、スタッフ全員でのチームワークを活かして金メダルを獲得します。
各選手コメント
①今大会の目標をお聞かせください。
②東京での大会開催に関してどのように感じていますか?
③大会に向けての意気込みをお願いします。
川口功人(トヨタ自動車)
写真:川口功人(トヨタ自動車)/提供:日本ろうあ者卓球協会
①4種目メダル獲得
②自国開催ということもあり、普段国際大会に見に行けない方が多く応援に来てくれるかと思います。応援に来てくれる方々に勇気と感動を与えられるように全力卓球で頑張ります!
③もちろん、メダル獲得は当たり前ですが、耳が聞こえない中で一生懸命プレーしてる姿を見て、何か感じてもらえたら嬉しいです! 応援よろしくお願いいたします。
伊藤優希(株式会社日本製鋼所)
写真:伊藤優希(株式会社日本製鋼所)/提供:日本ろうあ者卓球協会
①全種目でメダル以上を取ることです。
②日本開催ということで、これまでの大会よりもたくさんの日本人が来てくれると思うので、いつもより緊張する可能性が高いです。
③大会に向けて体力作りとストレッチを頑張ります。ダブルスと混在ダブルスはレシーブとサービスを特に意識しながら、金メダルを狙いにいきます!
亀澤史憲(サムティ株式会社)
写真:亀澤史憲(サムティ株式会社)/提供:日本ろうあ者卓球協会
①前大会以上の結果を残すこと!
②日本開催ということもあり、多くのメディアや国民の方々の注目度合いがかなり変わってきているなと感じます。私の場合はイベントや講演の依頼頻度が増えてきたことが、大きな変化だと感じています。
③私たち日本代表は多くの子ども達に夢を与えられると信じています。必ずメダルを獲ってみなさんに良い報告ができるよう頑張ってまいります。応援のほど、よろしくお願いします。
灘光晋太郎(太平電業株式会社)
写真:灘光晋太郎(太平電業株式会社)/提供:日本ろうあ者卓球協会
①どの種目でも良いので金メダルを取ること。
②非常に注目度が上がっていることは私自身実感しておりますが、多くの方々に見ていただけているなかで良い結果を残せれば、デフ卓球、そしてろうあ者に対する理解が広まるきっかけになり、共生社会へのより大きな一歩となるかもしれません。
私たちはその使命も背負っていると思っていますので、プレッシャーも感じていますが、自分たちが歴史を変えることができるかもしれない、というワクワク感もあります。
過去の大会と一番違うのは、今回の会場は東京体育館ですので過去の国際大会と比べても非常に立派な会場です。あれだけ大きな会場で多くの方々に見られながら試合をすると、今までの国際大会の雰囲気とは全く別物になるかもしれません。その部分にも気をつけて調整していきたいと思います。
③金メダルという結果も重要ですが、応援に来ていただいた方々に「見に来て良かった」「感動した」と言ってもらえるような試合ができるように頑張ります。記録にも記憶にも残る試合がしたいです。
山田萌心(明誠高校)
写真:山田萌心(明誠高校)/提供:日本ろうあ者卓球協会
①全種目メダルをとる!
②東京で開催されているということで、いつもより注目されているのを感じています。応援してくれる人たちが近くにいるのはすごく心強いですし、自分にとっても特別な大会になると思っています。
前の大会と比べると、やっぱり日本開催なので会場の環境がすごく整っていたり、メディアの注目も多かったりと、いろいろな面で違いを感じています。
③東京開催で特別な舞台なので、いつも以上に気合いが入っています。今まで練習してきたことを全部出して、悔いの残らないよう全力で金メダルを目指して戦います。応援よろしくお願いします。
亀澤理穂(住友電設株式会社)
写真:亀澤理穂(住友電設株式会社)/提供:日本ろうあ者卓球協会
①金メダル!
②東京で開催されることで、デフリンピックの知名度アップや聴覚障害に対する理解がさらに深まるいい機会だと思います。今回の大会は中国も出るので、過去大会と比べてレベルも一番高いと思いますが、それでも試合を楽しみながら頑張りたいと思います!
③私は5回目の出場となります。これまでは金メダルを獲得できていませんが、今回こそ金メダルを獲得したいです。それだけではなく、応援していただいてる皆様に、人生のなかでの思い出の一つにもなってもらえるように頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
木村亜美(合同会社HOS)
写真:木村亜美(合同会社HOS)/提供:日本ろうあ者卓球協会
①試合を楽しむこと。金メダルを取ること。
②デフリンピック初出場なので前回と違う部分はわかりませんが、地元開催ということもあり、共生社会の実現に向けて、日本中で変化を感じています。そういった変化に感謝の気持ちを持つとともに、聴覚に障がいを持つ一人のアスリートとして金メダルを取ることで、社会に貢献したいとより強く思っています。
③応援してくださっている方に感謝の気持ちを持ち、その想いに応えるため、日本代表全員で金メダルを掴みに行きます! 引き続き応援よろしくお願いいたします!
山田瑞恵(SMBC日興証券株式会社)
写真:山田瑞恵(SMBC日興証券株式会社)/提供:日本ろうあ者卓球協会
①デフリンピックでは自分の力をしっかり出し切ることが目標です。大会までに積み重ねてきた努力を信じて、最後まで全力で戦いたいと思っています。応援してくださる方々の存在がとても力になるので、その感謝の気持ちも込めてプレーします。
②自国開催ということもあり、デフリンピックの知名度が少しずつ広がっているのを感じています。そんななかで、東京体育館という大きな舞台で、海外の選手たちと直接試合ができるのは本当に貴重な経験です。世界のトップ選手と対戦できるこの機会を大切にして、少しでも成長につなげたいと思っています。
③自国開催のデフリンピックで日本代表としてプレーできることを本当に誇りに思います。卓球は私にとって人生の大きな一部であり、これまで多くの方々の支えがあったからこそ、ここまで来ることができました。もちろん目標は金メダルです!
この大舞台で、自分の限界に挑戦し、最高のプレーをお見せしたいと思います。
取材・文:竹下友也
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