通算30アンダーで3年ぶりの復活V 比嘉一貴が明かす“苦闘”「ゴルフが小さくなっていた」

比嘉一貴がツアー通算7勝目(撮影:ALBA)

<ISPS HANDA 夏に爆発どれだけバーディー取れるんだトーナメント 最終日◇17日◇御前水ゴルフ倶楽部(北海道)◇6932ヤード・パー72>

4日間で計2090個のバーディが生まれた今大会を制したのは、2022年の賞金王・比嘉一貴だった。同年「ダンロップフェニックストーナメント」以来となる3年ぶりの優勝で、ツアー通算7勝目。23年にはDPワールド(欧州)ツアーを主戦場にするなど海外挑戦を続けてきただけに、勝利後の会見では“苦闘の3年間”を振り返った。

「賞金王になったことで、2023年は自信を持って海外に行ったけど、欧州ツアーでもPGAツアーでもほとんど予選すら通らなかった。日本では予選落ちが続くことはあまりなかったので、自信を砕かれました。2023年は一番つらかったです。(海外選手とは)キャリーで10ヤード以上の差があって、その10ヤードでゴルフはまったく変わる」

同年に欧州ツアーに参戦した久常涼は「フランスオープン」で優勝し、翌年の米ツアーへの切符をつかんだ。比嘉はその姿を見て、自らの覚悟の足りなさを痛感した。「彼は海外でやるという決意があった。完全にDPかPGAツアーで戦うことしか考えていなくて、日本ツアーに戻る気持ちはなかった。そういう意味では、自分はちょっと中途半端だったかなと思いました」と話す。

海外の舞台で戦い、飛距離不足を突きつけられた比嘉は、「トレーニングもしているし、クラブもすべて見直しました」と、賞金王の時よりもドライビングディスタンスが12ヤード伸びている。さらに、失われていた“攻めの姿勢”も取り戻した。「自信を砕かれてから、いつの間にかゴルフが小さくなっていた。こういうバーディ合戦の試合はあまり得意じゃないと思っていたけど、プレーしていくうちに『そういえば昔はイケイケドンドンのゴルフをしていたな』と思い出しました」。

最終日はトータル30アンダーで並んだ米澤蓮とのプレーオフに突入した。2ホール目で比嘉がイーグルパットを沈め、劇的な勝利をつかんだ。「正規の18番、プレーオフ1ホール目、そして2ホール目と、同じようなラインと距離が続いたので“3度目の正直”。打った瞬間に完璧だと思った」。

飛距離を武器に復活Vを遂げた比嘉の視線の先は、再び世界だ。「日本ツアーの賞金王というよりは、海外の選手がたくさん出るアジアンツアーやDPワールドツアーで勝ちたい。結果を残したい」。苦闘の3年間を乗り越えた男が、大舞台へ歩みを進めていく。(文・野中真一)