
水泳の動きを“見える化” AIRFITSWIM(エアフィットスイム)は何が新しいのか【入門編】
写真:AIRFITSWIM(エアフィットスイム計測イメージ/提供:AIRFIT
いま、水泳界のトップ層や、全国大会を狙うジュニア選手などに広がりつつある、動作解析デバイスがある。
その名も「AIRFITSWIM(エアフィットスイム)」。ロケットの姿勢制御などで使われるIMUセンサーを使って、スイムモーションを視覚的に分析できる。
ゴルフや野球愛好者層に「トラックマン」のようなスイング解析・弾道計測器が急速に浸透したように、水泳の指導現場にもいま、スポーツテックの波が訪れている。
開発会社であるAIRFIT(株式会社プロキダイ)の柴田和明さん、平尾学さんにインタビューした内容を3回に分けてお届けする。
AIRFITSWIM(エアフィットスイム)とは何か
── 「AIRFITSWIM(エアフィットスイム)」はどういう製品なんですか。
平尾:加速度、角速度(どれくらい速く回ってるのか)、磁場の3つのデータをセンサーで取得して活用する、スイム解析デバイスです。
胸の中心部のみぞおち付近、身体の対角の中心部分に貼って計測します。

写真:AIRFITSWIM(エアフィットスイム計測イメージ/提供:AIRFIT
── この製品の新しいところはどういう点ですか。
平尾:センサーデータのみを活用するのは大学の研究室などでも行われていますが、私たちはアプリケーションを独自開発して、映像を一緒に同期させたことで、視覚的にも何が起こっているのかをわかるようになった点ですね。

写真:AIRFITSWIM(エアフィットスイム)アプリ/提供:AIRFIT
── 具体的にはどういう流れで計測するのでしょうか。
平尾:この胸に貼ったセンサーに泳いだデータが溜まるので、泳ぎ終わってから抽出します。水の中では電波が飛ばないので。それを映像と同期させてアプリケーション上ですぐに確認できます。

写真:AIRFITSWIM(エアフィットスイム)を貼る場所/提供:AIRFIT
── ちなみに、なぜ胸の真ん中に貼るんですか。
平尾:自分の意識的な動きではあまり変えられないからです。
これまでも、加速度センサーやジャイロセンサーを頭につけた前例はありましたが、どうしても外的要因で変化してしまい、一貫性が保てない。胸であれば、反る・曲げるくらいの動きであることと、あとは体の中心なので、取り出すと全てのデータがそこで合わせやすく、データも綺麗なんです。
AIRFITSWIMが画期的だった映像と波形の同期
── なるほど。ちなみにその測定によって、何がわかるんですか。
平尾:進行方向の加速度(減速度)と身体の動きですね。
泳法によって見るところは違うんですが、自由形であればローリングが揃っているか、平泳ぎだったら身体の前回りと後ろに反る動きが連続するので、どの時点で減速が発生しているか、など多くのことが分析できます。
── 確かに、水泳は泳いでいる選手は自分のフォームが見えないので、映像と波形が同期するのはわかりやすいですね。
平尾:そうなんです。僕らはずっと見ているので波形だけ見ればこういうことが起きているとわかるんですが、選手の方はそれだけではわからない。一方で、コーチや先生はどうしても自身の経験則から説明してしまい、伝わりづらいこともあります。
波形と映像をリンクさせると、何が起こっているかを体感しやすいですね。
── でも、このデータを踏まえてこうしましょうという提案は、これまで通りコーチの領域だと思うんですが。
平尾:その通りです。私たちは原因を伝えることはできますが、そこからどう改善していくかはコーチの力が必要です。
日々の練習を見守ってきたコーチだからこそ、各選手との信頼関係の中で、伝わりやすい言葉を選べるのだと思います。
その意味では、課題を明確に共有できるツールだと考えています。
── どういう層をターゲットに開発しているんですか。
平尾:日本代表レベルのトップ選手から全国大会の上位を狙うジュニア層くらいなのかなと思います。
── 汎用的なウェアラブルデバイスを目指して、というわけではないんですね。
平尾:現時点では、私たち側にも、センサーを正確に身体に貼り付けないといけないというハードルがあり、前回と違う場所に貼ると数値が微妙に変わったりもするので。
上達に真剣な現場のニーズに応えて開発を進めています。
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