【第2回】11年売場に立ち続けたナビゲーターに聞く 現代テニス人口の「今」と健康志向の潮流

テニスは、誰もが年齢に関係なく楽しめる生涯スポーツの代表格だ。4大大会(グランドスラム)が開催されるたびにテニスへの関心が高まり、都市部ではコートの予約が困難な状況も続いている。

一方で、一時期に比べるとトップ選手の活躍がメディアに踊る頻度は減り、巷で話題に上がる頻度が減っている気もする。

いま、テニス愛好者は増えているのだろうか。マーケットは盛況なのだろうか。

スポーツ量販店のテニス売場で11年、お客さんと直接コミュニケーションを取り続けてきた照井さんに、話を聞いた。


【第1回】11年売場に立ち続けたナビゲーターに聞く「テニスはラケットとガットどちらが大事?」

 

テニス売場に立って11年、ベテランナビゲーターのキャリア

── 照井さんのテニス売場のキャリアについて教えてください。

照井: こちらのゼビオスポーツさいたま新都心店がオープンしてからずっとなので、今11年目ですね。テニスの他にも、バドミントン、卓球といったラケットスポーツ全般を担当しています。

── ご自身もテニスの競技経験があるんでしょうか。

照井: はい、小学校から硬式テニスを始めて、社会人になっても続けているので、競技歴としては20年を超えていますね。中学校の3年間はソフトテニスでした。

── なるほど。愛好者としても、売り場担当者としても長くテニスに携わってきてるんですね。こちらの店舗のお客様の年齢層はどんな感じですか。

照井: 小さいお子様から80代ぐらいの一般の方まで幅広くご来店されます。特に多いのは30代から50代の方ですね。当店は、学生さんより一般層の方が多い印象です。

── 今、売場で感じる感覚として、テニス人口に変化はありますか。

照井:売上などの実績を見るとそこまで大きな変化はないのですが、私自身もプレーする人間の肌感覚としては、テニス人口は減っていると感じています。

 

20代の若年層はなぜテニスから離れるのか

── どの辺りの年齢層が減っていると感じますか。
照井: 自分がひとりのプレーヤーとして感じることですが、20代が減っている気がします。若い人ほどテニスをしない、学生時代でやめてしまい、社会人サークルなどで続けるまではしないのかな、という印象です。

── テニスは社会人になっても続けるイメージがありました。

照井: そうですね。私が社会人になりたての頃は、周りに同級生がチームにもたくさんいたのですが、今では年上の方が多いです。新しく若い人が入ってくるというのが、今は少ない気がします。

 

日本の気候も影響か

── それはなぜだと思いますか。
照井:
特に女性においては、日焼けを気にする方が増えているので、インドアスポーツであるバドミントンや、テニスでもインドアのテニススクールでだけプレーする、という流れはあると思います。

── なるほど。平均気温が上がり続けている日本の気候も影響しているのかもしれませんね。そもそも、一般層の方がテニスを始めるのは、どんなきっかけが多いのでしょうか。

照井: テニスの4大大会(グランドスラム)の後には、ご来店が増えますね。

── 世界トップレベルのテニスの試合は、観るだけでも面白いですもんね。

照井: はい。あとは、お子様と一緒にテニススクールに体験に行って、楽しそうだったので自分もやりますというお話もよく伺います。

── そうして始めたお客様が、テニスを続けていく目的は何が多いですか。
照井:
以前は競技志向の方も多かったのですが、最近は「健康維持のため」という方が圧倒的に増えましたね。

── どこでそう感じますか?
照井:
売り場で、ガットの張り替えについて「だいたい3ヶ月から半年に一度が理想です」とご案内するのですが、“そこまでやりません”“切れるまでは良いかな”というお客様が多くなりました。

── なるほど。

 

硬式テニスと軟式テニスの割合は

── ところで、テニス売り場で、いわゆる一般的なテニスと軟式テニスの、商品の割合ってどれくらいなんでしょう。

照井: 私のいる店舗では、商品、来店されるお客様とも7:3くらいで硬式テニスのほうが多いです。軟式テニスは、中学生を中心とした学生の方の来店がありますね。

 

テニスの魅力「ボールを介して会話ができる」

── 競技歴・売り場歴とも長い照井さんが感じるテニスの良さ、魅力はどういうところにありますか?

照井: ひとつは、障害スポーツの代表的なスポーツである点ですね。

年齢関係なく、ネットを挟めば誰とでもプレーできる。個人的には、ボールを介して会話ができる感じが好きで、感情が乗っているボールもたくさんあるし、それを感じられるのも魅力だと思っています。

── 面白いですね。

照井:上手・下手、実力に関係なく、テニスが好きという人たちの集まりは、とても温かい人たちが多く、そういうコミュニティも魅力的だと思います。

社会人になると、なかなか友達や仲間を作るのも難しくなってきますが、テニスコートに行けば、テニスを通じてすぐにお友達になれたりすることも、このスポーツの魅力だと思うので、ぜひ、いまの若い社会人のみなさんにもテニスを楽しんでもらいたいですね。


【第1回】11年売場に立ち続けたナビゲーターに聞く「テニスはラケットとガットどちらが大事?」

取材・文:槌谷昭人