【第1回】「ソフトテニス用具は音で選ぶべき」売り場担当14年スタッフに聞いた意外な回答

ソフトテニスは全国の中学生にとって最も身近な部活動の一つだが、その用具選びは意外に奥深い。

ラケットやストリング(ガット)の選択においては、スペックと共に「打球音」や「感触」といった、感覚的な要素も重要視される。

今回、小学2年からソフトテニスを始めて現在も社会人チームで競技を続けつつ、スポーツ量販店のラケットスポーツ売り場担当歴14年という三野氏に「初心者が失敗しないための用具選びの鉄則」「二大ブランド(ヨネックス、ミズノ)の明確な違い」「上達に不可欠なストリングスの選び方」など、詳しく聞いてみた。

あなたの知らないソフトテニス用具の世界を覗いてみてほしい。

 

大型スポーツ店と専門店の客層の違い:ライトな層が気軽に選べる場所

── ソフトテニス売り場のお客さんの層について教えてください。

三野: 店舗によると思うのですが、私はいま奈良県橿原市の店舗で働いていて、学生のお客様に加えて年配の方もいらっしゃいますね。

当社のような大型量販店はどなたでも気軽に立ち寄れるので、専門店には入りづらいけれどまずは商品を見て情報を聞いてみたい、というライト層の方が多い印象です。

── ソフトテニスを始めるきっかけは、やはり中学部活動が多いのでしょうか。

三野: そうですね。ただ、小学生から始めるお客様もいます。

一般の大人の方は“気軽に始められる初心者の人の集まりがあるから”という理由が多い気がします。

奈良県は歴史的にソフトテニスが盛んでコートもたくさんあるので、“よく見かけるスポーツである”という点もあるかもしれません。

 

ソフトテニス初心者にお薦めのラケット

── 店舗で、初心者のお客様にお薦めしているラケットは何でしょうか。

三野: これから始める方には、ストリング(ガット)が貼ってある“張り上がり”のセットですね。特に中学生が部活動で始めるときは、まずは全員そこからで良いんじゃないかと思います。

ヨネックスだと「AIRIDE」(エアライド)という商品、ミズノなら「テクニクス」です。

ソフトテニスのラケットは、YONEX(ヨネックス)とミズノ、大きくはこの2つのメーカーとなります。

 

使いやすいヨネックス、玄人好みのミズノ

── それぞれのメーカーの特徴があれば教えてください。

三野: 私の個人的な意見ですが、ヨネックスは誰でも使いやすいイメージです。最近の新しいモデルは、打つ力が弱くても飛ぶように設計されていて、誰でも少し打ち込めばそのぶん威力が上がるという特徴があります。

ミズノは、少し使う人を選ぶ印象です。難しくはないのですが、ここに当てないと飛ばない、というラケットが多いです。その代わり、スイートスポットを捉えると、いい音が鳴っていい球が行く、その感覚が明確にわかるのが強みですね。

── あと、ソフトテニスは前衛と後衛でラケットが違うんですよね。

三野: はい、主に重さのバランスが違いますね。今は一緒のオールラウンドタイプも出てはいますが。

── それぞれの特徴を教えてください。

三野: 後衛用はラケットのトップ側が重たくなっているので、うまく回せたら遠心力でより強く振れます。

前衛はボレーなどラケットの先を速く動かす必要があるので、トップが軽くて下側が重たくなっています。あとは、V型の部位からグリップまでの長さが、後衛用は長く、前衛用が短くなっています。

球筋も、前衛用のラケットと後衛用のラケットで全然違ってきます。

私は前衛なので前衛用ラケットを使ってますが、そのまま後衛で打てと言われたら打てないですね(笑)。

── そんなに違うものなんですね。

 

ストリングが奏でる「音」の世界

── 初心者の方にお薦めするストリング(ガット)は何でしょうか。

三野: ストリングに関しては、基本的にプレーのレベルは関係ないと思っています。

私自身はミズノを使っているので、ミズノの「モノスピード」を薦めることが多いですね。反発が強いのが特徴のストリングです。

── ストリングの種類って、どれくらいあるんですか。

三野: 20-30種類くらいだと思います。

自分もいろいろ使ってみた結果、ストリングが一番プレーに影響を与えるのは「音」だと思っているので、お客様にもそう伝えていますね。

── 音、ですか。

三野: はい。音と感触がストリングによって違うので、どれが自分にマッチするのかという感覚が一番大事で、球がどう飛んだかというのはその後の話です。

打感と打球音、それが打ちやすさに繋がります。音が変だと感じるなら、打球感がマッチしてないので合わないということです、とお客様には伝えています。

── 面白いですね。確かに、ソフトテニス上級者は“パーン”とすごく心地よい音させますよね。

三野: プレー中も結構、音で判断してるんですよ、“今のはミートしてないな”とか。

── なるほど。打ったときのストリングの音は、お店で確認できるんですか。

三野: はい。今のお店では、1階のゴルフ試打のところで軽く打てるのと、貸し出しもできます。

── ちなみに、いまお店で売れ筋のストリングは何でしょう。

三野: GOSEN(ゴーセン)というメーカーの「SONICBLOW」(ソニックブロー)です。

釣り糸も作っている会社の商品なんですが、やはり音がいいということで、特に男の子はこのソニックブローを貼る子がほとんどですね。

 

初心者が失敗しないために

── 意外に奥深いソフトテニス用具の世界ですが、初心者が選ぶ際に“失敗しないコツ”はありますか。

三野: 自分で言うのもなんですが(笑)、まずはお店の人に聞いたほうが良いです。

ネットで調べて来てくださるんですが、基本的にネットの情報は良いことしか書いてないんですよね。初心者が上級者モデルを買ったとしても「こういう理由で使えないですよ」という声は書いてないんです。

── 確かに。

三野: まずはお店でスタッフに声をかけてみて、その調べてきた情報が正しいかを確認するのは大事だと思います。

── 逆に、お客様自身が事前に決めておいたほうが良いことって、なにかありますか。

三野: 初心者の方は仕方がないのですが「とりあえずなんでもいい」と言われてしまうと、どうしても一方的にこちらが話すことになってしまうのが、私たちの課題でもあります。

あとは、商品を色で選ぶ子が多く、ストリングやグリップテープのカラーを選べる楽しさがあるのはソフトテニスの良い点なんですが、せっかくお金を出して購入するので、競技するうえで自分の思っているようなプレーができるラケットを選んでほしいと個人的には思います。

こんなプレーがしたいなどのイメージがお客様にあると、意見交換しながら進められるかなと思います。


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