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ダニエル太郎が元王者アンディ・マリーと今季3度目の対戦へ!「次は引かないようにしたい」<SMASH>

元世界王者のマリ−(右)に対して全豪では勝利したものの、カタールでは敗れているダニエル太郎(左)が、今季3度目の対戦へ。(C)Getty Images
「彼の初戦の相手は予選上がりだと思うので、もし彼と当たったら、また違う感じで取り組んでいきたいと思います」

BNPパリバ・オープン(アメリカ・インディアンウエルズ/ATP1000)の予選を勝ち上がったとき、ダニエル太郎は、預言めいた言葉を口にした。

ダニエルがここでいう「彼」とは、アンディ・マリーのこと。今年1月の全豪オープン、そして2週間後のカタール・オープン(カタール・ドーハ/ATP250)でも対戦した元世界1位とは、何か深い縁を感じているのだろうか。予選を突破し、どこに入る可能性があるのだろうかとメインドローを眺めたとき、ダニエルの目を捉えたのは、マリーの横に記された「Q(Qualifier=予選通過者)」の一文字だったようだ。

その数時間後——ダニエルの名は、マリーの隣に刻まれた。

2試合連続のストレート勝利でメインドローを勝ち取ったダニエルだが、予選の出場者リストそのものに、彼の名が無い可能性も高かったという。それはこの大会直前に、スウェーデンでデビスカップ(国別対抗戦)が組まれていたため。

国を背負って戦う心身の負担は、通常のツアーより遥かに大きいと多くの選手が声をそろえる。しかもスウェーデンのインドアコートとカリフォルニアの屋外では、気候からコートやボールの状態まで、何もかもが劇的に異なる。もちろん時差も大きい。
「本当に出るかどうかも、最後の最後まで迷っていた」のも、当然だ。

それでも最終的に出ると決めたのは、「本当にこの大会が好きだから」。

特に今大会では、カリフォルニアに住む両親も応援に駆けつけてくれるという。3月5日にスウェーデンで試合を終え、6日の夜に現地入りし、8日の朝には予選1回戦を戦う強硬スケジュールを選んだのも、そのような理由からだった。

極寒のインドアから、陽光と強風がトレードマークの砂漠の地への移動は、対局とも言えるボールの飛びへの適応の勝負でもある。ただダニエルは、「僕はボールが飛んでくれる場所が好きなので」と、むしろ好意的にとらえていた。

「スウェーデンはボールが遅くて好きじゃなくて。ボールがマシュマロみたいで、飛んでくれなかった。こっちの方が、ボールが生きている、相手のミスを誘えるコンディション。自分も集中力が必要ですが、好きです」
それら「好き」な要因を、ダニエルは予選2試合でいかんなく生かした。

深いストロークで相手を押し込み、さほどリスクをとらずとも打ち合いを支配する。特に予選2回戦では、セカンドサーブやブレークポイントなど、一層の集中力を要する局面でプレーの質を引き上げた。

「自分が落ち着いて、レベルを下げずに相手を押し込めた」と淡々と語る姿にも、106というランキングを上回る地力への自信が滲んだ。

「毎週毎週、いろいろと新しい気付きがあり、それに正直に向かっていく感じです」

成長のプロセスをそう語るダニエルにとって、わずか2週間を挟んだ2度のマリーとの戦いも、かけがえのない「気付き」の一つだ。

全豪オープンの初対戦では、疲労の色濃いマリーを前後左右に走らせては、果敢にネットに出て次々にボレーも決めた。

2度目の対戦では、「彼がまったく違うエネルギーでコートに入ってきて、ファーストポイントからアグレッシブだった」と感じると同時に、自身の変化にも敏感だった。
「ドーハでマリーにリベンジされたときは、メンタル的に自分が引いちゃっているなと気付いて」

だからこそ「次は引かないようにと、そういう風に自分で気づけた」と、ダニエルは少し語気を強めた。

気持ちで「引かない」と誓った「次」は、早くも明日訪れる。

まるで自ら、ドロー表のマリーの横に飛び込むかのように、前向きな姿勢で今季3度目の対戦に挑む。

現地取材・文●内田暁

【ダニエル太郎とA・マリーのツアー対戦結果】
★全豪オープン(2022年1月20日)
ダニエル〇 6−4、6−4、6−4 ●マリー

★カタール・オープン(2022年2月15日)
ダニエル● 2−6、2−6 〇マリー

【PHOTO】全豪OPで快進撃を演じたダニエル太郎の厳選フォトギャラリー

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