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「テニスコートは孤独な場所」元世界1位のベッカーが以前はタブーだった「心の健康について話をする」ことを推奨<SMASH>

自身の現役時代はメンタルについて話すことができなかったというベッカー氏。(C)Getty Images
男子テニス元世界ランク1位で往年の名プレーヤーとして知られるボリス・ベッカー氏が、スペインのニュースメディア『RTVE』のインタビューに出席。その中で、ここ最近スポーツ界で度々話題に上がる「アスリートのメンタルヘルス」について言及した。

アスリートのメンタルヘルスが国内外の様々なメディアで取り上げられるようになったのは、昨年5月の全仏オープンで女子テニスの大坂なおみ(当時世界ランク2位)が大会開幕直前に「選手の心の健康が無視されている」として、突如“記者会見ボイコット”を表明したことがきっかけだった。前代未聞の事態に世界中から賛否の声が噴出した中、同時に彼女は2018年の全米オープン優勝直後から長らく心の病を抱えていたことも告白。

そしてこの騒動を契機に昨夏の東京オリンピックで「精神的なストレス」を理由に女子団体と個人総合を棄権した米体操界のスター、シモーン・バイルズをはじめ、徐々にメンタルヘルスの問題を公にする選手が増えてきていることは事実だ。

昨年11月にはWTAファイナルズ(女子テニス最終戦)のグループリーグ初戦で敗れたイガ・シフィオンテク(ポーランド/8位)が敗戦のつらさから対面での記者会見を免除されたことも記憶に新しい。

1980年代から90年代にかけてその名を轟かせたベッカー氏によれば、自身が現役選手として活躍していた当時は、メンタルヘルスに触れること自体がタブーであったという。そんな過去を振り返った上で、「私の時代には、心の健康について話をすると弱いと言われ、力がないと言われたものだ」と語った。
一方でベッカー氏は、テニス選手だけに限らず率直に心の状態を打ち明けるアスリートが出ていることについて、非常に好意的に捉えているようだ。

「若い選手たちが、競技でのプレッシャーに対処するために抱えている問題を率直に話すのは良いことだ。今は選手が心の状態に言及しても弱いとか力がないとか言われることはない。メンタルヘルスの問題は本当に深刻で、世の中、何でもかんでも簡単にいくわけではない」

「テニスコートはとても孤独な場所だ。たとえチームが後ろにいても、実際には自分一人で戦うことになる。自分の背負っているものがとても重いことだってあるから、それを(正直に)話せること、そして『もういいや』と割り切れるタイミングを知ることは、心の健康のためにとても大切だ」

どんな競技でも選手が本番でベストパフォーマンスを発揮するためには、メンタルヘルスが整っていることが必須条件の一つになるのは間違いない。それにもかかわらず、アスリートの心の健康が長きにわたって無視されていた部分は大きいだろう。これからは多くのアスリートがしっかりと心のコンディションを整えられるよう、周囲からも充実したサポートが得られることを願うばかりだ。

文●中村光佑

【PHOTO】ボルグ、ベッカー、エドバーグetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1

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