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【伊達公子】100位、30位、10位に入れる選手の違いは?日本の教育環境ではトップ10選手は生まれづらい<SMASH>

「執着心を持つには、先のことを描けている必要があります」と言う伊達さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
 スポーツには順位が付きます。トップ10に入れる人もいれば、200位台の人もいます。100位、30位、10位以内に入れる選手は、何が違うのでしょうか?

 テニスで100位以内と言えば、世界で戦う選手の一員として認められるランキングです。グランドスラム本戦に入れるかどうかのラインなので、ここには天と地ほどの差があります。100位に入れる人と入れない人の違いは、「勝負に対する執着心」だと思います。どんなに泥臭くても、どんな方法でも試合に勝とうとすること。

 執着心を持つには、トップ100に入ったら自分の環境がどう変わるのか、先のことが描けている必要があります。どういう大会に出られて、どんな待遇になるのかなどです。

 例えば、空港に着いて迎えが来てくれるのか、大会と会場移動は車なのかバスなのか。上のレベルの待遇を見るチャンスがない人は、未来を描きづらく下部ツアーに留まりがちです。しかし、1度上の世界を見た人は、もう下部ツアーには戻りたくないと言います。

 目の前の試合をこなしているだけだと、目の前の結果にしか執着心は生まれません。先の世界を思い描いて、がむしゃらにそこに到達することです。
  30位以内になるとシードが付きます。テニス界は強い者が優遇されるのが当たり前なので、待遇は良くなります。30位に入る選手と入れない選手の違いは、「意識の高さ」でしょう。
 
 例えば食事。気にせず食べたい物を食べるのか、必要な物を食べるのか。練習の仕方、トレーニングの取り組み方、ストリングの張り替え方など、30位に入れる選手は全てにおいて意識が高いですね。

 若い時はどういう行動を取るべきか気付けないものなので、最初はコーチなど周りにいる人が教える必要があります。選手は教えられたことを実行しなくては意味がありません。実行しなければ、知らないのと同じことです。あとは経験を積んでいくうちに、わかってくるようになります。

 コーチがいない場合は、周りを見られる視野の広さがあるかどうかです。トップ選手の行動を見て参考にしていくといいのですが、世界を知る日本人選手が少ないので、見られる機会が少ないというのが現実です。
  最後にトップ10に入れる人。違いは「究極の負けず嫌い」でしょう。私はじゃんけんでもトランプでも負けたくありません。トップ10選手は負けず嫌いの集合で、私レベルの負けず嫌いでは、トップ10の中でも赤ちゃん並みです(笑)。

 普段の会話でも、「私は!」と言って主張をグイッと入れてきます。一般の生活ではありえませんが、「引いたら負け」という世界です。
  日本では「負けず嫌い」が育ちづらい環境があります。突出している人は“良し”とされづらく、負けても負けを濁す傾向にあります。でも負けたという実感がないと悔しさは生まれません。負けて、悔しいから、できるようになろうという思いが芽生えます。

 勉強では点数が出て受験で合否がはっきり分かれます。スポーツでも同様に子どもの頃から勝敗をはっきりさせるべきです。競争する習慣があり、負けることの悔しさ、勝った時のうれしさを味わえれば、「負けず嫌い」は育つはずです。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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