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ジョコビッチ入国騒動を徹底解説!ビザが発行された昨年11月からの詳細と経緯<SMASH>

連邦裁判所に向かうジョコビッチ。(C)Getty Images
ノバク・ジョコビッチのビザ取り消しに関する問題は、大会開幕の前日を迎えてなお、法廷闘争の泥沼状態に陥っている。同大会で9度の優勝を誇る世界1位は、この最終法廷で勝てなければ、今後3年間、オーストラリアに入国ができない可能性が高い。

この一連の出来事を、法廷に提出された資料や、『The Age』などの地元紙が公開した政府とテニスオーストラリア(オーストラリアのテニス協会)間の手紙をもとに振り返ると、次のようになる。

ジョコビッチへのビザ(査証)が発行されたのは、2021年11月18日。ただ、この時点でのビザ発行申請書類に、オーストラリアへの渡航条件とされる“ワクチン接種証明”は含まれていなかった。ビザの種類は“Temporary Activity(一時活動ビザ)“であり、これは必ずしも、入国を保証するものではない。

ジョコビッチはかねてより、ワクチンに対し懐疑的な見解を示してきたが、自身がワクチンを打っているか否かについては、「明かさない」というスタンスを取っていた。

全豪オープン・トーナメント・ディレクターのクレイグ・タイリーはこの間、ワクチン接種の完了していない選手や関係者の渡航許可について、開催地であるビクトリア州や、オーストラリア政府と幾度もやりとりを重ねている。
ただ11月18日の時点で、政府の保健省はタイリーに宛てて「過去にCovid-19に感染しておりワクチン接種をしていない者は、ワクチン完了とはみなされず、隔離なしの入国対象にはなりえない」と書いた手紙を送っている。これ以外にも書面には、「過去にCovid-19に感染し、ワクチンを一度のみ接種(※J&Jはこの限りではない)しているケースも、接触完了ではない」など、複数の条件も列挙している。

ただビクトリア州の医療責任者は、12月2日の時点で、「過去6か月以内にCovid-19に感染し、それを証明できる渡航者は、ビクトリア州到着時の隔離免除の対象となる」とテニスオーストラリアに通達を出していた。

テニスオーストラリアは12月7日の時点で選手たちに、「過去6か月にCovid-19に感染したことを証明できれば、ワクチン完了を免除される」とも取れる内容のメールを送ったという。

そして以下は、ジョコビッチが提出した、Covid-19感染証明の内容になる。
PCR検査のサンプルが提出されたのが、12月16日の13時5分。
陽性結果が出たのは、当日12月16日の20時20分。
さらには12月22日16時16分にPCR検査を受け、陰性だった証明書も提出している
テニスオーストラリアがジョコビッチに、ワクチン接種の免除証明を出したのは、12月30日。書面には、「現時点で熱や症状もなく、回復している」、「テニスオーストラリアによる独立機関のメディカルエキスパート委員会によって審査され、ビクトリア州の例外処置審査委員会によって承認された」と記されている。

ジョコビッチが、オーストラリアへの渡航申告を出し認められたのが、2022年1月1日。なお、この申告はホームページを通じて行なわれ、ワクチン証明もしくは免除証明の添付が必要になる。

そして1月5日、ジョコビッチはドバイ発のエミレーツ航空機で、メルボルン空港に23時20分に到着した。だが入国審査で止められ、「ビザ取り消しの可能性あり」として、1月6日の早朝に書類が作成されている。

書類に書かれているレポートによれば、「ジョコビッチ氏は、ワクチン免除はテニスオーストラリアによって承認されているため、連邦政府の言い分に混乱していると主張している。ジョコビッチ氏は、PCRテストや血液サンプルも含め、必要とされるものは全てテニスオーストラリアと、例外処置審査委員会に提出しているとも主張している」ということだ。
一方で、ビザの無効化が正当である理由としては、要約すると、次のような記載がある。

「ビザ保持者(ジョコビッチ)は、入国時の面接で、Covid-19のワクチンを打っていないと言った。さらにビザ保持者は、テニスオーストラリアのメディカルエキスパート委員会が作成した免除証明を提出した。(中略)オーストラリア入国に際し、ワクチン接種証明か、医師による医学的免除証明を提出する必要がある。Covid-19の感染歴は、オーストラリアでは、医学的免除の対象とはならない」

この処置を不服としたジョコビッチは、豪連邦裁判所に異議を申し立てた。そして10日、裁判所はビザ取り消しを覆し、ジョコビッチの入国を承認。特定ホテルでの拘留が解除されたジョコビッチは、その日の夜には全豪オープン会場に向かい、センターコートで練習した。
ところが、事態はこれで収まらない。全豪オープン開幕を3日後に控えた14日、オーストラリアのアレックス・ホーク移民相が、再びジョコビッチのビザを取り消したのだ。この処置に対してもジョコビッチは異議を申し立てており、16日現在、連邦裁判所で再審理が行われている。

なお、ジョコビッチのコロナ感染時期とその前後の行動に関しては、陽性と知りながら自主隔離をしていなかったとして、さらなる火種となっている。

12月16日の夜にPCR検査の陽性結果が出ていたが、ジョコビッチは翌17日に記念切手発行の式典や、子どもたち向けのイベントに出席していた。この事実がCNN等のメディアで報じられると、ジョコビッチは自らのインスタグラムで、「不当な糾弾を受けている」と反論。「陽性結果を知ったのはイベント等に出た後だった」と自らのインスタグラムで主張したのだ。
ただ同じ投稿の中で、12月18日には、フランスのスポーツ紙『レキップ』の取材を、「記者たちを落胆させたくなかったから」との理由で受けたと明記。

「誤った判断だった」とつづったものの、この行動に関しては、セルビアの首相も遺憾の意を表明している。

取材・文●内田暁

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