元副首相からの性的被害を訴えた中国選手がいまだ行方不明。米紙は迫る北京五輪に警鐘「開催する愚かさを露呈」
2013年にウィンブルドンのダブルスを制したペン・シューアイ(中国)が、消息不明になった騒動は、テニス界だけでなく、国際的な問題へと発展している。
事の発端とも言える出来事が明るみになったのは今月4日だ。ペンが自身のSNSで、中国共産党最高指導部メンバーの一員であった75歳のチャン・カオリー前副首相から性的暴行を受けていたと告発したのである。
彼女がウェイボー(中国版ツイッター)で発信した情報によれば、両者の男女関係はチャン氏が天津市トップの党委員会書記だった時期に始まり、「10年ほど断続的な関係が続いていた」。そして同氏は政界を引退した直後に、ペンは性的行為を強要されたというのだ。
政界を揺るがす大物のスキャンダルは、瞬く間に世界へ拡散された。しかし、同時にペンは消息不明の状態となり、WTA(女子テニス協会)のスティーブ・サイモン会長が「疑惑は完全に、公正に、透明に、検閲なしに調査されなければならない」と訴える事態となった。
そんな状況下で、今月17日に中国国営放送『CGTN』は、ペンがサイモン会長に宛てた「告発は真実ではない」「今は自宅で休んでいてなにも問題はない」と記したメールを公開。事態の収拾に走ったが、中国共産党が活用するプロパガンダツールとして活用してきた同メディアのニュースに確証はなく、周囲の不安を煽る形となった。
SNS上で「#WHEREISPENGSHUAI(ペン・シューアイはどこ)」というハッシュタグが拡散されるなど、彼女の行方不明騒動は世界規模のものとなっている。そんななかで米紙『NY Post』は、ノバク・ジョコビッチやジェラール・ピケ(サッカー元スペイン代表)など各国のアスリートの声を紹介。そのうえで、来年2月に北京で開催予定となっている冬季五輪に警鐘を鳴らした。
「このペン・シューアイの告発に端を発した事件は、現時点で、中国でオリンピックを開催する愚かさを露呈するものだ。自国選手の安全すらも保証されていないにもかかわらず、外国人アスリートの安全が保証できるものだろうか。中国政府は大会を延期し、より適切かつ安全な場所で開催するための努力をするべきだ」
17日に開かれた定例会見で中国外務省はペンに関するあらゆる質問に対して「知らない」と一蹴している。はたして、彼女は無事なのだろうか。
構成●THE DIGEST編集部
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