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【伊達公子】プロ選手にツアーコーチは絶対に必要。テニスのためにお金を使わなくてはプロとは言えない<SMASH>

下部大会から抜け出すには、ハングリー精神と明確な計画性が必要という伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
テニスの場合、コーチの役割が大きく変わるのが、ジュニアからプロに転向する時です。この時、選手はどんなツアーコーチを選ぶといいでしょうか。

私の基準は「一緒に戦ってくれる人」でした。遠征に行くと、勝負だけでなく移動やホテルに関しても戦うことが常にあります。だから、一緒に喜び、苦しみ、泣き、笑える人でないと無理ですね。

私の場合は、小浦(武志)さんが、プロ転向後2年ぐらいはツアーコーチとして、ほとんど付いてきてくれていました。終了したのは、全日本選手権で私が捻挫をして、激怒された時です。

初めての大きな怪我で、勝ちたかった大会での怪我。一番落ち込んでいる時に、一番守ってほしい人に守ってもらえず、ショックでした。コーチにはコーチの思いがあり、選手だった私にも自分なりの思いがありギャップを感じてしまい、コーチの元を飛び出してしまった感じでした。

その後、右も左もわからない状態で、とりあえず東京へ引っ越し。荏原スポーツセンター(SSC)にプロが集まっていたので、そこで練習をするようになりました。SSCに落ち着く前に、遠征に1人で行ったことがありましたが、本当に大変でした。
今は昔以上にコーチが絶対に必要です。アップをして、練習をして、トレーニングをして、ケアを受けて……と、選手のするべきことが増えていて、そのうえでアレンジも自分でするとなると大変です。例えば、コーチがいれば練習コートと相手のアレンジもしてくれます。

もちろんコーチに求められるのは、アレンジ能力だけではありません。技術的な指導や分析力、モチベーションの向上もありますが、ツアー中に情報を得てくるのもコーチの役割になります。今は対戦相手の情報は、動画やデータでもチェックできますが、コーチ同士のコミュニケーションから得られる情報も重要なのです。

ツアーコーチは絶対に必要だと思いますが、下部大会から出場する選手でスポンサーが付かずに金銭的にコーチを依頼できない場合もあるでしょう。この時期を乗り越えられるかは、ハングリー精神があるかが影響してきます。

海外の選手だと賞金が入ってこないと遠征にも行けません。だから、例えば20万円相当のお金があったとして、何大会に出場できて何ポイント取らないと来年は遠征に行けないという切実な問題になります。たとえコーチがいなくても、ここでポイントを取ってランキングをここまで上げればコーチを雇えるとか、明確な計画性を持っている選手が多いです。
日本人選手の場合は、所属契約や用具契約もあるので、ずるずると下部大会に留まる場合があります。生活を豊かにすることに重きを置いているのでしょう。人それぞれの考え方なので悪くはありませんが、私の中ではそれはプロとは言いません。

私は契約金はツアーに出るために、賞金を私生活、ご褒美にという意識を持つようにしていました。まずほどほどの生活をして、余裕があったら海外の遠征に行こうという感覚では下部大会から抜けられないと思います。
金銭的に苦しい場合、コーチをシェアするという方法もあります。女子選手は基本的にシェアが難しい傾向が強いですが、1人でコーチを雇えるまでの期間だと考えて、早く這い上がるようにするのもいいでしょう。

または、出世払いを直談判するのもありかもしれません。選手の世界で闘いという本気の覚悟と強い熱意があり、その思いとコーチが選手に魅力を感じていれば、可能性はゼロではないですから。

プロ選手にツアーコーチは必要です。もし金銭的な余裕がないなら、コーチを雇える状況になるまでの計画を立てて這い上がることです。それだけ、ツアーコーチが果たすべき役割は大きいのです。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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