
卓球で得たものを社会人生活に活かすたったひとつの方法 日学連新会長就任・菱洋エレクトロ社長 中村守孝氏インタビュー【後編】
「自分の頭で考えて自分で動く」
だからこそ、このことだけは自分は胸を張ってやれたとか、あのとき自分は自らの強い意志に基づいて勇気を持って立ち向かったんだとか、そういう思い出がない30年、40年間って、いったい何のための時間だろうと私は思うんですよ。
今、私はサラリーマン生活が終わっても多分あまり悔いがないんですよね、結構たくさん、凡人なりに乗り越えた、どちらかと言えば多くの苦しく悔しい思い出がありますから。
菱洋エレクトロとリョーサンの経営統合
まず、弊社は単独1社ではここまでの成長が限界です。それは社長になった6年前に宣言していました。やや閉塞した業界、二十社も上場していろんなことを分け合っている形の中で、非常に日本的な古い世界になっている。
いま、世界で旬な商材である半導体やICTを扱う中で、もっと商社の存在意義を高めていくためには一定の質・量両方の拡大が必要だということで、経営統合の機会をうかがっていたわけです。
経営者にとっては、従業員たちが先々も安心して夢を持って働ける場を残していくというのがひとつの責務じゃないですか。
自分が延命するだけなら、私は楽ですよ。ただ社内に居座って、それで数年報酬をもらうことはできるでしょう。でも、それはあまりにも無責任かつ虚しいことです。なぜならそこには“他利”がないからです。仕事はまず自分以外の誰かのためにやるものです。
写真:中村守孝氏(菱洋エレクトロ代表取締役社長)/撮影:伊藤圭
「愛社精神はあまりない」
従業員はとても大事ですよ。でも会社や業界の風土は私の本来の感性とはあまり合わない。合わないんだけれど、一方で、大きな感謝がありました。
だったら恩返しとして、みんなが安心して働き、成長できる環境づくりをしておきたいなと。
写真:菱洋エレクトロはTリーグのオフィシャルスポンサーを務めている/提供:T.LEAGUE/アフロスポーツ/アフロ
「常に孤独」
社長は強いんだ、絶対大丈夫なんだ、と周りは思ってるから、解消のしようがないです。(笑)この6年よく大病もせずにやりましたよ、振り返ると。
写真:中村守孝氏(菱洋エレクトロ代表取締役社長)/撮影:伊藤圭
でもそのプレッシャーに打ち勝つことがやり甲斐なんだと思うわけです。そのうちプレッシャーそのものが快感になったり(笑)。
私、自分の人生あんまり後悔したくないので。
だから楽しく、存分に力を出して、できるだけやって、それで物事がうまく行かなかったら、いつでも私は退く覚悟はできています。
会社は、自分で借金をすることもなく、ちゃんと給料をもらいながら、やりたいことをやって人生を充実させることができる場所であると考えると、仕事は本来とても楽しいものではないでしょうか。
写真:中村守孝氏(菱洋エレクトロ代表取締役社長))/撮影:伊藤圭
取材を終えて
「あとは好きなようにまとめてください、末永くよろしく」
忙しいプロ経営者は、清々しく風のように去っていった。時計を見ると、あっという間に2時間が過ぎている。
かつて、伊勢丹と三越という、水と油と言われた異文化同士の企業統合を牽引した男。いま、半導体商社の業界で、菱洋エレクトロとリョーサンの統合を発表し、台風の目となっている。
このプロ経営者の手腕にかかれば、例えば卓球業界の懸案のひとつ、日本卓球リーグとTリーグが統合していく未来もあり得るのではないか、そんなことも夢想した。
写真:中村守孝氏(菱洋エレクトロ代表取締役社長)/撮影:伊藤圭
(終わり)
取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)
Follow @ssn_supersports