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【徹底分析】世界選手権女王・孫頴莎に4年ぶり土つけた 強化された“新生”平野美宇の技術とは

②強化された対下回転ドライブ

2つ目の秘訣は、ツッツキに対する両ハンドドライブである。鋭いツッツキを持ち上げさせてからのカウンターのような展開は、中国選手が多用する「対平野のスタンダード戦術」であった。

写真:平野美宇(木下グループ)/提供:WTT
写真:平野美宇(木下グループ)/提供:WTT

今大会では、平野のツッツキに対する両ハンドドライブは非常に質が高く、スタンダード戦術を攻略したように見えた。バック側へのツッツキに対しては回転量が多く、かつコート深くに入るループドライブで孫のカウンターを防ぎ、甘い返球をさせる場面が多かった。

写真:平野美宇(木下グループ)/提供:WTT
写真:平野美宇(木下グループ)/提供:WTT

また、フォア側へのツッツキに対しては、孫のフォアサイドを抜き去るスピードドライブで得点する展開も多かった点は、これまでの中国選手との対戦と比較しても明確な進化だと言える。

ともすれば、強打一辺倒になり、ミスが増えることも多かった平野であったが、難しいボールに対してはしっかりと回転をかけて相手のカウンターを防ぎつつ、ミスも減らす「攻めのループドライブ」も印象的であった。

③フォアハンドでのミドル処理

最後のポイントは、フォアハンドでのミドル処理である。

世界トップレベルの選手でも、バック対バックの高速ラリーではミドルを攻められると、返球が甘くなったりミスが出るものだ。平野も孫も試合の序盤から、バック対バック中に巧みにミドルを攻め、ラリーの主導権を奪い合う展開となった。

明暗を分けたのは平野の方がミドル攻めに対してフォアドライブの準備ができており、バックドライブよりも威力のあるフォアドライブで返球できた点であると言える。

写真:孫穎莎(中国)/提供:WTT
写真:孫穎莎(中国)/提供:WTT

ミドル処理を含め、バック対バックの展開で平野は執拗なまでに孫のバック側へ返球することで、孫にフォアハンドでの反撃を許さず、ラリー戦でも互角以上に勝負ができていた。また、孫をバック側に釘付けにできた結果、フォア側へドライブした際に優位に得点できたことも、この快挙を支えていると言える。

図:平野のラリー中のコース取り/作成:ラリーズ編集部
図:平野のラリー中のコース取り/作成:ラリーズ編集部

まとめ

これまで0勝4敗と一度も孫に勝利していない平野。パリ五輪を1年後に控えたこのタイミングで臨んだ孫への挑戦では、確実に強化された新たなプレースタイルで、一時マッチポイントを握られる逆境をはねのけ、孫から初めての金星を勝ち取った。

パリ五輪を1年後に控えたこのタイミングで、現世界女王に勝利した経験は値千金であろう。それと同時に中国が平野に対して講じる新たな戦術を、平野がどのように攻略して見せるのか。今後の平野の成長からも目が離せない。

写真:平野美宇(木下グループ)/提供:WTT
写真:平野美宇(木下グループ)/提供:WTT

文:てふてふ

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