韓国代表の若手ホープが優勝 WTTスターコンテンダーチェンナイ2025で輝きを放った注目選手をピックアップ

<卓球・WTTスターコンテンダーチェンナイ2025 日程:2025年3月25〜30日 場所:チェンナイ(インド)>

今回は、ラリーズ編集部が独自の基準でピックアップした、WTTスターコンテンダーチェンナイ2025で活躍した選手を紹介する。

※世界ランキングは大会当時

チボー・ポレ(フランス・世界ランキング54位)

チボー・ポレ(フランス)
写真:チボー・ポレ(フランス)/提供:WTT

大会前に、彼の名を知っていた人間はどのくらいいただろうか。

チボー・ポレ(フランス)は、昨年のWTTコンテンダーラゴスで3位に入賞し、混合ワールドカップのフランス代表にも選出されていたとはいえ、弱冠20歳のフランス人選手。スターコンテンダーの決勝まで勝ち上がることなど、想像できなかっただろう。

しかし、ポレは精度の高い3球目攻撃やラリーでの粘り強さなど、オーソドックスながら“勝てる卓球”を忠実にこなしており、トーナメントを勝ち上がるにつれてその精度は上がっていった。組み合わせやコンディションなども味方したかもしれないが、それでもスターコンテンダーで決勝まで勝ち上がった実力に疑いはない。

決勝では惜しくも敗れてしまったが、スターコンテンダーで準優勝を果たしたことで、世界ランキングではフランス代表でルブラン兄弟に次ぐ3番手に浮上。間違いなく、今後の国際大会の注目株となってくるだろう。

トミスラブ・プツァル(クロアチア・世界ランキング42位)

トミスラブ・プツァル(クロアチア)
写真:トミスラブ・プツァル(クロアチア)/提供:WTT

2回戦で田中佑汰、3回戦で張本智和を撃破したトミスラブ・プツァル(クロアチア)は、ワールドツアー時代から国際大会に出場を続けている選手で五輪の出場経験もある。しかし、これまで目立った成績はなく、“ヨーロッパの中堅選手の一人”に過ぎない存在だった。

そんなプツァルは、昨年のWTTコンテンダーメンドーサで3位に入ったのを皮切りに、WTTフィーダープリシュティナでは優勝。徐々に世界ランキングを上げてきたなかで挑んだ今大会では、長い手足を活かしたパワフルな両ハンドドライブで攻めるヨーロッパ選手らしいプレーを如何なく発揮し、田中と張本を撃破した。

なお、プツァルは現在29歳とベテランと言われる年齢に入っているが、ヨーロッパ選手は息が長いのも特徴の一つ。今後の国際大会でも、まだまだ活躍は期待できる。

マナフ・タッカー(インド・世界ランキング63位)

マナフ・タッカー(インド)
写真:マナフ・タッカー(インド)/提供:WTT

カマル・アチャンタ、サティアン・グナナセカランなど、高齢化が進んできた男子インド代表において、次世代エースとして期待されてきたマナフ・タッカー(インド)。昨シーズンはWTTフィーダーで2度の3位、ダブルスでは9度の表彰台に立つなど、国際大会で徐々に存在感を増してきていた。

地元開催となった今大会では1回戦で同士討ちを制すると、あれよあれよという間に準々決勝まで勝ち上がり、準々決勝ではパリ五輪韓国代表のイム・ジョンフンに競り勝って、自身初のスターコンテンダー4強入りを果たした。

タッカーには強烈な3球目攻撃や切れたサービスといった攻撃面での特徴は少ない。しかし、前~中陣に張り付いてブロックとカウンターでとことん粘り、相手のミスを誘うプレーのレベルは世界トップレベルの選手にも十分に通用する。

今大会では、地元の声援を背に縦横無尽に動き回ったタッカー。その活躍は、2020年代に入って輝きを失った男子インド代表の希望の光となるだろう。

男子シングルス勝ち上がり

1回戦:マナフ・タッカー(インド)3-0 Divyansh SRIVASTAVA(インド)
2回戦:マナフ・タッカー(インド)3-1 フィン・ルー(オーストラリア)
3回戦:マナフ・タッカー(インド)3-2 アンドレ・ベルテルスマイヤー(ドイツ)
準々決勝:マナフ・タッカー(インド)3-2 イム・ジョンフン(韓国)
準決勝:マナフ・タッカー(インド)1-3 チボー・ポレ(フランス)

フラビアン・コットン(フランス・世界ランキング108位)

フラビアン・コットン(フランス)
写真:フラビアン・コットン(フランス)/提供:WTT

昨年の世界ユースにも出場したフラビアン・コットン(フランス)は、パリ五輪男子シングルスで銅メダルを獲得したフェリックス・ルブラン(フランス)と同い年の17歳。これまではルブランの陰に隠れていたが、昨年のWTTフィーダーパナギュリシテでシニア大会初の表彰台に登ると、今大会でもそのポテンシャルを如何なく発揮した。

ハーフロングのサービスからの3球目攻撃やチキータからのバック対バックの展開など、プレースタイルはいたってオーソドックスな攻撃選手のそれではある。しかし、若手選手らしい思い切りのいいスイングは強みで、当たり始めたら止まらない。

3回戦で松島輝空(木下グループ)との打撃戦を制すると、続く準決勝ではジョナタン・グロート(デンマーク)を完封。準決勝では優勝したオ・ジュンソン(韓国)に敗れたものの、大会を通じてラリーの安定感やコース取りが光っていた。

オ・ジュンソン(韓国・世界ランキング36位)

写真:オ・ジュンソン(韓国)/提供:WTT
写真:オ・ジュンソン(韓国)/提供:WTT

五輪選手の父を持ち、韓国代表若手のホープと言われてきたオ・ジュンソン。これまでもWTTで上位進出はしていたものの、シニアの大会のシングルスでは優勝できていなかった。

そんな中で臨んだ今大会では、オマー・アサール(エジプト)やプツァルといった経験豊富なベテラン選手、コットン、ポレといった今大会快進撃を見せた同世代の選手を撃破し、堂々の優勝を果たした。

オ・ジュンソンの卓球は、中後陣での引き合いや高速カウンターといった見栄えのするプレーは少ない。しかし、サービスの配球やコース取り、回転をかけてボールを台に収める能力に秀でており、18歳にして既にベテラン選手のような風格すら感じられる。

特に決勝のポレ戦では、先に3ゲームを先取される苦しい展開の中、ポレの攻撃を落ち着いて処理しながらも要所要所でしっかりと攻め切り、最後は引き合いを制して逆転勝利。波乱の多かった今大会において、内容結果ともに文句なしのチャンピオンであった。

文:和田遥樹(ラリーズ編集部)