
前回、国内外で活躍が期待される男子大学生について、元全日本王者の藤井寛子さんに聞いた。大学生の大会は、この秋、地区ごとに団体のリーグ戦が開催されるとともに、個人戦では日本一を決める「全日本大学総合卓球選手権大会」(通称:全日学)が行われる。大会を前に、期待できそうな女子選手は一体誰なのか、「成長する選手の条件」とは。藤井さんに話を聞いた。(取材・文/二株麻依)
オンリーワンの卓球で頭角表す 出澤
出澤杏佳(専修大学)
藤井寛子(以下、藤井):高校生の時に全日本選手権大会・ジュニアの部で優勝していて、世界ジュニア選手権大会では中国人に勝つほどの実力の持ち主です。フォアに表ソフト(表面が粒立ったラバー。相手のボールの回転量を抑えて返球できる)、バックに粒(表ソフトよりも粒が高く、ボールの威力も落ちるラバー)なんですけど、相手が打ち返しにくいボールを出して、甘いボールに対してはフォアで決めるパターンです。出澤さんにしかできない卓球、オンリーワンの卓球を強みに、勝ってきている選手ですね。見てておもしろいですよね。普通は、裏裏(表面がツルツルしたラバーを両面に貼ったラケット)とか、速攻型(早いテンポで攻撃的なプレーをする選手)とかが多いところに、異質なスタイルが入ることで、卓球のおもしろさや、奥深さを感じられると思います。また、台に近いところで戦っているので、反射能力は高いと思います。ボールを少しゆっくり送ってから突然攻撃に転じたり、打たれてもブロックがしっかりできるので、自分の特徴を活かしてプレーできている選手だといえるでしょう。
パワフルな卓球で魅了 杉田
杉田陽南(早稲田大学)
藤井:杉田さんは、日本生命のジュニアチームに中学、高校の頃に在籍していて、早稲田大学に入りました。すごくスケールの大きい卓球をする選手で、小学校のときから、両ハンドの(フォア・バックをしっかり振った)大きなプレーをしていましたけど、日本生命に行ってよりパワーをつけて、男子選手のようなパワフルな卓球をします。前でチキータ(台の上でボールに回転をかけながらバックハンドを振る、攻撃的な打法)して、そこから次、カウンター(相手の攻撃に対して自分も攻撃的に打ち返す技)をやったりとか、バックハンドを攻撃的に振るのがこの選手の魅力です。すごく見ていて気持ちの良い卓球をしますね。
(次のページへ続く)「大学生は「考える卓球」で可能性を広げて」
大学生は「考える卓球」で可能性を広げて
ーー大学生の卓球になると、求められるスキルも増えそうですね。
藤井:高校生までは勢いだけで勝っていけたりもするのですが、大学生になると、相手の動きを見て考え、戦術を組み立てることが必要です。頭を使う大人の卓球の入口だと思います。なにより、自主性が求められます。先生がいなくても自分に厳しく練習できるかどうかがすごく大事になってきます。選手として試合に出れば、自分で考えて、自分で決めてプレーしていかなくてはならないですし、そういうスキルがしっかりと身についていけば、うまくいきやすいと思います。
ーー藤井さんの時は、どうだったのでしょうか。
藤井:私自身、大学3年生のときに、初めて全日本のランクに入ったんですよ。強い人はみんな高校生で全日本で優勝したり、オリンピックに出たりしているんですけど、私は大学3年生で初めて全日本2位に入りました。高校生までは自主性に欠けていて、決められたことを忠実にやることが多いんですが、大学生になると、自分でやらなくてはいけない部分が多く出てきます。しかし、授業の合間など時間を作ることもできるようになります。そういうところでいろんな工夫をしたり、考えたりすることができると、自分の可能性を広げていけるかなと思いました。高校卒業したらミキハウスに入ったり、すぐ実業団に入る子も多くいましたが、私は大学に行ったことでいろんな視野が広がりました。取り組み方次第で可能性は広げられるので、今の大学生の選手には希望を持って頑張っていただけたらと思います。
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■プロフィール
藤井寛子(ふじい・ひろこ)
1982年生まれ。奈良県出身。両親が主宰する卓球クラブで卓球を始める。四天王寺高等学校、淑徳大学を卒業後、日本生命保険相互会社に入社。全日本選手権女子ダブルスで5回の優勝、シングルスでは3回の準優勝の経験がある。現在はYOYO TAKKYU西日暮里店のコーチとして活躍。オリンピックなどのテレビ中継で、解説者を務める。
写真提供:Rallys
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