マイボトルで戦うプロ卓球チーム T.T彩たま

卓球とSDGs マイボトルで戦うプロ卓球チーム T.T彩たま

2021.09.07 取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)

6.安全な水とトイレを世界中に13.気候変動に具体的な対策を14.海の豊かさを守ろう
最近「SDGs」という言葉をよく耳にします。
環境保護?社会貢献?なんだか、とっつきにくくて、という印象の方もいるかもしれません。

SDGsとは、2030年までに、世界中の国も企業も個人も、いろんな垣根を超えて協力してより良い未来をつくろう、そのために2015年9月に国連で決まった17個の目標のことです。

実は卓球界でも、その取組みは始まっています。
昨季Tリーグの報道のため、フロアで試合写真を撮影しながら、ふと気がつきました。

T.T彩たまは、選手がみんな同じ水筒を持っている」

T.T彩たま
写真:ゲーム間、マイボトルで給水するT.T彩たまの選手たち/提供:©T.LEAGUEこのページの目次

  • [4 「子どもたちのほうがSDGsを理解している」]()

球団グッズかと思ったら非売品

2019-2020シーズンのほとんどは無観客試合だったために、気がつかなかったファンの方も多いかもしれません。

ゲーム間に選手に熱い口調でアドバイスした後、坂本竜介監督も可愛いチームのキャラクターのついた水筒で、喉を潤していました。

販売する球団グッズなのかと思いきや、この水筒、非売品なのです。

マイボトル
写真:T.T彩たまのマイボトル(2019-2020シーズン)/提供:ラリーズ編集部球団にマイボトルの理由を聞いてみると「1stシーズンにパートナー契約を結んだウォータースタンドさんにご提供頂いている」ということ。

聞くと、T.T彩たまは試合だけでなく、浦和美園の練習場にもウォーターサーバーを設置し、スクールに通う子どもたちも、水筒を持参して無料で給水しているとのこと。

「卓球場の売上だけ考えると自動販売機を設置するほうが良いんですが、お客さんも水筒を持ってきて無料で給水するのが習慣になっているので」

T.T彩たま広報部の末藤かんなさんは、練習場全体に根づいたマイボトル文化を感じている。

神巧也「練習後はプロテインなども」

T.T彩たまのキャプテン・神巧也選手に聞いてみました。

——練習や試合のたびに手間じゃないですか?
「手間ではないですね。練習場に設置してあるウォータースタンドのサーバーの水をいつも飲んでいます」

——ちなみに、何を飲んでるんでしょう?
「水や、粉末のスポーツドリンクを薄めたもの、練習後はプロテインなども飲んでますね」

神巧也
写真:神巧也(T.T彩たま)/提供:©T.LEAGUE## 「ペットボトルを減らしたい」

ウォータースタンドの本多均社長に、そのマイボトルを提供した理由を聞いてみました。

「海洋マイクロプラスチック問題を踏まえ、ペッドボトルを減らしていこうということです」シンプルな答えでした。

本多均氏
写真:本多均氏(ウォータースタンド株式会社社長)/撮影:ラリーズ編集部世界では毎年800万トンものプラスチックごみが海に流れ込み、このままでは2050年までに海の中は重量ベースで魚よりもプラスチックのほうが多くなってしまうと言われています。※

その中でも、海洋マイクロプラスチック問題として、5mm以下の微細なプラスチックごみが自然に分解されずに海洋生態系に与える影響が懸念されています。魚に取り込まれた有害物質が、食物連鎖で人間を含む動物に悪影響を及ぼす危険性も指摘されていて、レジ袋やペットボトルの削減リユースなどの取組みが世界中で始まっています。

プラスチックごみ
写真:海岸に漂着したプラスチックごみ/撮影:AFP・アフロRallys×パンダーニ コラボユニフォーム登場 オンライン限定販売## 「子どもたちのほうがSDGsを理解している」

——T.T彩たまをはじめスポーツチーム支援にも力を入れていますが、どういう狙いがあるのでしょうか
「特に野球やサッカーでは、1試合毎にペットボトルは何千本と使われます。それが水筒に置き換われば、ペットボトル1本あたり137g×何千本のCO2を減らすことができる。その連鎖を作りたいなと」

約3年前に「株式会社ジャスト」から「ウォータースタンド株式会社」に社名を変更し、水をめぐる社会課題の解決に取り組んできたウォータースタンドには、いま、社会の環境意識の高まりに合わせて、様々な引き合いが来ているといいます。

無印良品店舗での無料給水サービスもウォータースタンドが提供しています。

ウォータースタンド
写真:/無印良品店舗内に設置されているウォータースタンド/提供:T.T彩たま全国の各自治体と共同で、小学校や公共施設で誰でも給水できる給水スタンドの普及も広がっています。

「SDGsって、子どもたちのほうが響くんです。学校で習って興味が出て、私たちのところに話を聞きに来る子どもたちもいます。いろんなしがらみや習慣もわかるんですが、大人が今、一歩踏み込むときだと思います」

本多均氏
写真:本多均氏(ウォータースタンド株式会社社長)/撮影:ラリーズ編集部小さいけれど、確かな一歩目のアクション。
まずは、マイボトルを持って練習に行くことから始めてみてはいかがでしょうか。

※参照資料
環境省「海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組」

>>全国の保育園・幼稚園に卓球台を寄贈し続けて246台 元日本代表監督の思い

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