
年間500万円でバスケットチームオーナーに? 世界最大の3人制バスケットリーグの革新性
写真:試合の様子/提供:3×3.EXE PREMIER
世界最大の3人制バスケのプロリーグ「3×3.EXE PREMIER」の試合は、神出鬼没である。
駅前、オフィスビルのフリースペース、漁港、ショッピングモールなど、日常生活に隣接した場所で開催される。チケットを買って会場に向かうというより、偶然に近い形で3人制バスケの公式戦に出会って、その世界に引き込まれる。
JリーグやBリーグのような“クラブ主導の興行”ではなく、リーグが選手と契約し、全試合の興行を統括する、いわば大相撲のような「リーグ一括管理型」のモデルだ。
チーム新規参入のハードルを下げ、プロスポーツをより地域のステークホルダーに開かれたものにできる一方、チームの収益モデルはより多角化しなければならない。
近年のプロスポーツの常識を揺さぶる「3×3.EXE PREMIER」の運営モデルは、挑戦か、リスクか。
このリーグをさらに深掘りする。
>>3人制バスケの歴史を切り拓く 世界初にして最大「3×3.EXE PREMIER」とは?

写真:試合の様子/提供:3×3.EXE PREMIER
ユニークなリーグ構造と収益モデル
3×3.EXE PREMIERは、リーグが試合運営を担うことで、チームオーナーが経営に専念できるフランチャイズ制を採用している。チームの運営負担を軽減し、新規参入数を増やす仕組みだ。
説明資料には、年間500万円程度でチームオーナーになれる、という魅力的な文言が踊る。
実際に、地域商店街の店舗が小口出資によってチームを作り、地域コミュニティの核を目指す例もある。
また、現在Bリーグ・香川ファイブアローズ所属の岡田優介選手、お笑い芸人の麒麟田村氏、大西ライオン氏が共同オーナーを務める「TOKYO DIME.EXE」や、プロスポーツチーム所有の「UTSUNOMIYA BREX.EXE」(Bリーグ宇都宮ブレックスの3×3チーム)など、様々なコンセプトを持つチームが各地に生まれている。


写真:UTSUNOMIYA BREX.EXE/提供:3×3.EXE PREMIER
2025シーズン時点で、チーム数は男子36、女子9まで増えたが、“まだまだこれから”と3×3.EXE PREMIERリーグ事務局の山田めぐみさんは意気込む。
「小さなコミュニティ単位でチームが作れることで、3×3をまだ知らない方にとっても身近に感じられる、その環境を作ることが重要だと思ってます」


写真:会場の観戦者/提供:3×3.EXE PREMIER
「ホーム&アウェー方式」のチーム負担の大きさ


写真:試合会場の様子/提供:3×3.EXE PREMIER
現在、Jリーグ、Bリーグをはじめプロスポーツリーグで採用される「ホーム&アウェー方式」は、各チームがホーム戦において入場料収入で試合設営・運営コストを賄えることが、事業運営の基本となる。


写真:試合会場の様子/提供:3×3.EXE PREMIER
しかし、多くのリーグにおいて、押さえたキャパの大きな会場の空席を埋めるため、様々な理由をつけて招待施策を続けているのが現実だ。
大相撲と似た“リーグ一括運営・チーム経営専念”
この“リーグ一括運営・チーム経営専念”という方法は、チームのとってリスクが少ないため、新規参入が見込みやすい事業モデルであることは間違いない。
他に似ているリーグを強いてあげるなら、大相撲だろう。日本相撲協会が興行を主催し、力士や部屋(チームに相当する組織)は試合運営に直接関与しない。チームや部屋は、直接的な興行リスクを負わず、競技力の向上に専念できるという共通点がある。


写真:試合会場の様子/提供:3×3.EXE PREMIER
さらに、選手と契約するのも、チームではなくリーグである。
チーム間の戦力均衡が図れるメリットがあるはずだが、加盟する歴史の長さなど、資金力においてチーム間格差はもちろん生まれるので、戦力差は引き続き課題だろう。
ただ、興行リスクが少ないからチーム経営がうまくいくかというとまた別の話だ。
むしろ、ホームマッチにおけるチームの入場料収入が存在しない分だけ、ユニフォームスポンサーや冠マッチセールスはもちろん、新たな収益事業を仕掛ける必要がある。
いま、いくつものチームから、地域と共に挑戦するユニークな試みが生まれている。
約7-8割の選手が“デュアルキャリア”
リーグでプレーする選手の約7-8割が、他に仕事を持つデュアルキャリアである。
スポーツとキャリアを明確に分ける“セカンドキャリア”ではなく、スポーツとキャリア形成を両立させる“デュアルキャリア”をリーグ自身が推奨している。
例えば「ESDGZ OTAKI.EXE」という千葉県大多喜町を拠点とするチームは、選手がなんと農業従事者である。
人口約8,000人の小さな大多喜町に移住した選手が作ったオリジナル米「籠米(かごめ)」は、ファンの間でも親しまれている。選手のデュアルキャリアと、地域産業の活性化を狙う好事例だ。
言葉だけの“地域のために勝利を”よりも、リアルに地域課題解決に向かっているのだ。
プロスポーツの定義とは
「3×3.EXE PREMIER」は結果的に、これからのプロスポーツとは何なのか、その定義を鋭く問い直している。
興行でマネタイズを図らなければプロリーグではないのか。選手は専業でなければならないのか。
華やかなスタジアム・アリーナの観客動員や放映権ビジネスは、あくまで現代スポーツと社会の関わりの中の、ごく一面に過ぎない。
まず観に行って体感しよう。「3×3.EXE PREMIER」は、街の中で出会いを待っている。
2025シーズンの開幕は、女子が4/26-27(ライトキューブ宇都宮・JR宇都宮駅東口から徒歩1分)、男子が5/17-18(ワテラス・JR御茶ノ水駅から徒歩5分)で開催される。


写真:試合会場の様子/提供:3×3.EXE PREMIER


写真:試合会場の様子/提供:3×3.EXE PREMIER


写真:試合会場の様子/提供:3×3.EXE PREMIER
>>3人制バスケの歴史を切り拓く 世界初にして最大「3×3.EXE PREMIER」とは?
取材・文:槌谷昭人
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