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W杯で引退も囁かれるネイマール ブラジルのスターは戴冠するのか

写真:Aurelien Meunier – PSG/Getty Images

(大会直前のため再掲載)

2022年11月から行われるカタールワールドカップ(W杯)では、1ヶ月にわたり国と国の意地とプライドをかけた戦いが繰り広げられる。4年に1度の世界一をかけたW杯で各国の戦いとともに注目なのが大会を彩るスターたちの競演である。そこで、カタールの地で活躍が期待される世界的名手にスポットを当ててそのキャリアや注目ポイントを紹介していきたい。今回取り上げるのはサッカー王国ブラジルの背番号10を背負うフォワード・ネイマールだ。(文・井本佳孝)

バルセロナで世界的スターに成長

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1992年生まれのネイマールはブラジル・サンパウロ州の出身だ。フットサルとストリートサッカーに夢中になったという幼少期を経て、2008年2月にブラジルの名門サントスとプロ契約を結ぶ。すると、2011年に南米一を決めるコパ・リベルタドーレスを制しFIFAクラブワールドカップへ出場。リオネル・メッシ擁するバルセロナ相手に準優勝に終わったものの、ネイマール自身は2011年の南米年間最優秀選手に選出されるなど頭角を表す。その後、2013年夏にバルセロナに引き抜かれ、欧州でのキャリアをスタートさせる。

バルセロナではアルゼンチン代表のメッシ、ウルグアイ代表のルイス・スアレスと“MSNトリオ”と呼ばれる3トップを結成し躍動する。加入2年目の2014-15年シーズンにはメッシ、クリスティアーノ・ロナウドと並びチャンピオンズ・リーグ(CL)得点王に輝く。バルセロナの三冠獲得に貢献し、サントス時代には果たせなかったクラブ世界一の称号も手にした。2015年にはメッシ、ロナウドとともにFIFAバロンドールの最終候補3人にノミネートされるなど、名実ともに世界屈指のスター選手に成長する。

2017年夏にはリーグ・アンのパリ・サンジェルマン(PSG)に電撃移籍を果たし、活躍の舞台をフランスに移した。PSGでは故障離脱する期間もあるが、試合に出れば持ち前の創造性溢れる姿で観客を魅了。4度のリーグ優勝に貢献し、2019-2020年シーズンは準優勝に終わったものの、PSGをCL決勝に導く活躍を見せた。2021-22年シーズンにはバルセロナから加入したメッシ、フランス代表のキリアン・エムバペと3トップを結成し“新銀河系軍団”と呼ばれたことも話題となった。

ドリブルと得点力を合わせ持つ

ネイマールの選手としての最大の特徴はブラジル人選手ならではの足さばきを活かしたドリブルテクニックである。左サイドでボールを受けるプレーを得意とし、華麗なフェイントやDFとの間合いを計りながらの独特なタッチで相手を抜き去りチャンスを作る。同じくバルセロナやPSGで活躍したロナウジーニョも同様のプレーを得意としていたが、現代屈指のドリブラーであるネイマールも負けていない。チーム戦術が多様化され、フィジカルやスピードの要素が多くを占めるようになった現代サッカーだが、そんな時代においてもネイマールの存在は唯一無二である。

またこのネイマールはチャンスを作るだけでなく、フィニッシャーとして得点を奪う能力も高い。カットインしての右足のコントロールシュートは18番でもあり、日本代表と戦った国際親善試合やFIFAコンフェデレーションズカップでも印象的であった。またフリーキック、ペナルティーキックの名手でもあり、セットプレーからも多くのゴールを奪ってきた。チャンスメイカーとして得点を演出するだけでなく、自らゴールを奪う能力も合わせ持つ、現代が生んだ世界最高のアタッカーの1人である。

一方で、そのプレースタイルは時に相手チームには独善的、挑発的とも受け取られる。ファウルの対象になることも少なくなく、それにより近年は故障が増えている面がある。またブラジル人特有のずる賢さ(マリーシア)も備えるネイマールは、2018年ロシアW杯で大げさなダイブが批判の対象となった。その派手な見た目とプレースタイルが故に議論や批判の対象になりやすい選手であり、よくも悪くも話題にこと欠かない。それがネイマールのスーパースターぶりを表しているとも言える。

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