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日本の至宝はW杯で光を放つか 久保建英に注目

写真:Masashi Hara/Getty Images

(大会直前のため再掲載)

2022年11月から行われるカタールワールドカップ(W杯)で日本はE組に入り、ドイツ、スペインといった世界の強豪国を相手に戦いを挑む。そこで、サムライブルーの一員として本大会での活躍が期待される選手たちにスポットを当てて、そのキャリアを振り返っていきたい。今回紹介するのは、スペインの名門バルセロナの下部組織出身で、日本の至宝として期待がかかる21歳・久保建英だ。(文・井本佳孝)

10歳で名門バルセロナの門をくぐる

2001年生まれの久保は神奈川県川崎市出身で小学校3年生の時に川崎フロンターレの下部組織に入団した。さらに2011年8月にはリオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケツら世界的スターを輩出したバルセロナの入団テストに合格し、弱冠10歳でスペインに渡った。“ラ・マシア”と呼ばれる伝統ある名門の下部組織に所属した久保はアンス・ファティやエリック・ガルシアなどのバルセロナのトップチームに所属する選手たちとしのぎを削り、さまざまな大会でMVPに輝くなど世界トップレベルの環境で自らを磨いていた。

ところが2015年にバルセロナが18歳未満の選手の外国人選手の獲得・登録違反によりFIFAから制裁措置を受けてしまう。この影響で日本への帰国を余儀なくされた久保はFC東京の下部組織に入団。2016年11月の長野パルセイロ戦でJリーグデビューを果たした久保は2017年11月にプロ契約を結ぶ。2018年夏には横浜F・マリノスへの期限付き移籍も経験し苦しむ時期もあったが、2019年にはFC東京で開幕スタメンを掴むなど、日本の地で確かな成長の跡を見せていく。

そんな久保は18歳の誕生日を迎えた2019年夏に再びスペインの地に渡った。移籍先は“銀河系軍団”と呼ばれたレアル・マドリードで自身が育ったバルセロナのライバルクラブに所属することになった。スペイン移籍後はレンタルでマジョルカで1年プレーした後、ビジャレアル、ヘタフェといったラ・リーガのクラブでプレーを経験し、2021-22年シーズンは再びマジョルカに加入。ここまで4シーズンプレーし、94試合出場で6ゴール7アシストという成績を残した。

“和製メッシ”と評されるプレービジョン

久保の選手としての特徴は判断力の高さが挙げられる。ボールを受けた際のドリブル、パスの選択に間違いが少なく、相手の間合いをみながら逆をとるドリブルや、ゴール前での局面を変えるスルーパスの精度も高い。バルセロナの下部組織の“先輩”であるメッシも同様のプレーを得意としているが、久保もこのアルゼンチン代表FWに負けない素質を持つ。同じ左利きで“和製メッシ”と評されることもある21歳のプレービジョンの高さは日本の選手の中でもひときわ輝いている。

さらに、左足での精度の高いプレスキックも魅力で、FC東京在籍時やユース年代も含めた日本代表、またスペイン移籍後もセットプレーのキッカーも務めることが多い。また、得意の左足を封じられた時は右足でのクロスやシュートを選択することもあり、ウィークポイントとされてきたフィジカルや守備力についてもマジョルカやヘタフェといったクラブでのプレーを経て年々逞しさを増している。日本時代から弱点を一つ一つ向き合い改善してきた姿勢も久保の魅力だ。

課題としてはゴールやアシストといった目に見える結果を残すことである。ここまでスペインの地では移籍初年度マジョルカで記録した4得点5アシストが最多で、その後は数字がついて来ず、ここ数年の久保の選手としての停滞感は否めない。得点力が高まることで余裕が生まれ、アシストも増えていくことが期待できる。日本の中心選手として、また世界的な名手に脱皮を図るためにも10得点10アシストという“結果”が久保に対しては求められてくるだろう。

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