挫折を超えた大器 フランクフルトの司令塔・鎌田大地
写真:Masashi Hara/Getty Images
(大会直前のため再掲載)
2022年11月から行われるカタールワールドカップ(W杯)で日本はE組に入り、ドイツ、スペインといった世界の強豪国を相手に戦いを挑む。そこで、サムライブルーの一員として本大会での活躍が期待される選手たちにスポットを当てて、そのキャリアを振り返っていきたい。今回紹介するのは今季フランクフルトで長谷部誠とともにヨーロッパリーグ(EL)制覇の快挙を成し遂げたミッドフィルダーの鎌田大地だ。(文・井本佳孝)
挫折からスタートした海外挑戦
現在25歳の鎌田は愛媛県出身で、中学時代にはガンバ大阪ジュニアユースでのプレーも経験した。ユースへの昇格はならなかったが、京都の東山高校を経て2015年にサガン鳥栖に加入した。高卒1年目から定期的に出場機会を得るなど、2シーズン半に渡り中心選手として活躍を見せた。2017年夏にブンデスリーガのフランクフルトに移籍を果たし、海外挑戦の切符を掴み取る。
ところが、鎌田のドイツ移籍1年目に待っていたのはまさかの展開だった。加入直後こそ出番はあったものの、2017-18シーズンのリーグ戦の出場試合数はわずか「3」にとどまった。2018年夏に構想外となり、ベルギーのシント=トロイデンへのレンタル移籍を経験することになる。日本ではプロ入り後からチャンスを得た鎌田だったが、海外1年目は“挫折”と呼べる1年を過ごすこととなった。
心機一転シント=トロイデンへと新天地を求めた鎌田の逆襲はここから始まる。加入直後からチームの得点源として活躍すると、リーグ戦24試合に出場して12ゴールと結果を残す。日本代表にも初招集されるなどベルギーの地で確かな実績を残し、2019年夏にはフランクフルトに復帰を果たす。遠回りを経験しながら再びブンデスリーガでの挑戦の機会を掴み取ってみせた。
小野伸二以来となる偉業達成
自信を取り戻した鎌田は復帰した2019-20シーズンからフランクフルトのレギュラーに定着する。ブンデスリーガでは2得点6アシストを記録するとELでは6ゴールの大活躍を見せた。翌シーズンはさらにスケールアップした姿をみせ、リーグ戦で5得点14アシストの働き。欧州のクラブからも関心が伝えられるなど、押しも押されもせぬフランクフルトの司令塔に成長する。
そして迎えた今シーズン、鎌田はELの舞台で躍動する。準々決勝の優勝候補・バルセロナ戦では決勝点を演出しただけでなく、守備でも献身的な働きを見せ、勝利に貢献。続く準決勝のウェストハム戦でもゴールを挙げる活躍で決勝進出に一役買った。鎌田はファイナルのレンジャーズ戦でPK戦3人目のキッカーを務め見事に成功。チームメイトの長谷部とともに日本人ではフェイエノールトに所属した小野伸二以来となる欧州カップ戦優勝メンバーに主力として名を連ねることになった。
鎌田がここ数年飛躍的に向上したのがプレー選択の引き出しの多さと戦術理解度の高さだボールを受けた際に周りを簡単に使うことも、状況をみて自らボールを運ぶこともでき、ゴールにつながる精度の高いパスも出すことができる。ELのバルセロナ戦のようなレベルの高い相手に対しては守備においての献身的なプレーも目立ち、フランクフルトでここ数年レギュラーを張り続け、ブンデスリーガと欧州カップ戦というレベルの高い環境で揉まれたことにより、一つ次元の高いプレーヤーへ成長を遂げたと言える。
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