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【独占インタビュー】「問題だらけだった」主将・吉川智貴が明かした“絶対王者”名古屋V逸の真実

どれだけ時代が変わろうと、変えてはいけない基準がある

──結局最後は名古屋が勝つのがこれまでのFリーグでした。それがここ2シーズンは、その名古屋の地力が徐々に下がってきているなとは感じていて、他クラブも「今の名古屋なら勝てるんじゃないか」という雰囲気で向かってくるようになりましたよね。

そうですね。もうその通りだと思います。

──原因はどういった部分にあったのでしょうか?

「今まで名古屋で当たり前だったことが、当たり前ではなくなった」という、それがすべてなのかなと。これは言い出したらキリがないですが、「当たり前にやることの基準がその程度じゃ、はっきり言って低いよ」と。もうそこですね。とにかくそこに尽きます。

そのなかで、自分や篠田といったベテランがその「当たり前の基準」を引き上げなければいけなかった。それができなかったのは完全に僕の責任でもありますし、篠田の責任でもありますし、ベテラン勢全員の責任でもあります。もっといろんなアプローチをしていかなきゃいけなかったのだろうと思います。「自分たちが思っている100%は100%じゃないよ」っていうところですね。繰り返しになりますが、とにかくそこです。

──今までFリーグが開幕してからずっと名古屋が名古屋であり続けてきたものが、なぜ失われてしまったのか。それは個人のこの選手がいなくなったからとか、例えば練習場が変わったからとかではないということですね。

全く関係無いですね。環境の要因なんて絶対にないです。今なんてめちゃくちゃいい環境ですよ。文句一つ言う権利もないくらい、本当に素晴らしい環境です。それだけ最高の環境を用意してもらっているからこそ、僕たち選手はもっとやらなきゃいけいけないはずです。環境(が原因)ってのは絶対に言っちゃダメですね。そんなのはありえないです。さすがにいないとは思いますが、仮にそれを言っている選手がいたとしたら、はっきり言って論外ですね。

──となると、これまで代々伝承してきた名古屋オーシャンズというクラブの伝統や空気感を継承するのが難しくなってきたと。

はい、もうそういうことです。これは時代の流れもあると思います。自分が若かった時とも違いますし、どんどん環境が変わっていて。フットサルの世界だけでなくて、社会全体で見てもそうじゃないですか。それが今の世の流れなので仕方ないと思いますし、そこに対して不満があるわけでもなく、僕たちも順応していかなきゃいけないことだと思います。合わせていくことも重要です。

決して若い選手がダメと言っているのではなくて、中堅とかも僕らが中堅だった頃とはちょっとずつ変わってくるじゃないですか。世代が少しズレるだけで、ちょっとずつ変わっていくので、それが10歳離れたら、今の時代はいろんな物事に対する感覚が相当変わっているのだと思います。

例えば20歳と30歳の選手がいたとして、僕たちが若い頃の10歳差のギャップと、現代の10歳差のギャップは、もう比べ物にならないくらい広がっていると感じています。だからこそ、いろいろ伝え続けていくのが難しくなってきているのだろうなと。それに対する自分自身の折り合いのつけ方も、間違えたなと思っています。

──伝えるべき場面では、もっと強く言っても良かったという後悔もあるのでしょうか?

自分にとって当たり前ではないことも受け入れることで、逆に見逃してきたところが多すぎたなというのがあります。だからこそ、自分に腹立たしいですし、伝えきれなかった僕の責任も大きいと感じているんです。

このスポーツの世界において、どれだけ時代が変わろうと不変の、当たり前の部分。ブレてはいけない部分はやはりあるんだなというのがよくわかりました。いろんな意見があると思いますし、別に僕の意見が正しいとも思わないですけど、自分のなかでの答えはそこです。

当たり前の感覚が違いすぎて、言い方は悪いかもしれないですけど、僕自身がチーム全体に求める当たり前の水準を下げすぎたなと思っています。

──以前の名古屋は、例えばたった1敗しただけでも、試合後のロッカールームはタイトルを逃したかのような重たい空気になっていたと聞きます。それがいつしか、「こういうこともあるよな」という雰囲気になってしまっていたのでしょうか。

はい。そうですね。ただ、みんな頭ではわかっているはずで、現に体現できている試合もあったんです。例えば、年末に行われたホーム浦安戦(第20節。12月29日に開催され、名古屋が2-0で勝利)。あの試合で、チームはめちゃくちゃ変わったと思うんです。僕は「今日のような重要な試合でこの戦いができるなら、最終的に優勝できるチームになるかもしれない」「いや、むしろこれを続けていければ絶対に逆転優勝できる」という感覚すら覚えていました。それはチームのみんなにも話しましたし、これを続けていかなきゃいけないとも伝えました。

──その後年明け最初の試合では北九州に6-0と完勝。続く第22節の大阪戦でも勝利を収めて、いい流れでファイナルシーズン上位リーグに入っていきました。北九州ラウンドの初戦は町田に7-3で勝利。ただ、2戦目のしながわ戦で3-3と引き分けました。

あのしながわ戦で、すべてを放棄してしまったんです。「やっぱりそうか」「結局ここに戻ってきてしまうのか」と。浦安戦で見せた戦い方を続けていけば必ず勝てるのに、やっぱりそこに戻っちゃうんだなという。そこで僕は初めて、「いよいよ今年はけっこうな確率で連覇は厳しい」と感じました。もちろん、最後まで諦めずにプレーしましたけど、優勝を逃す可能性の方が高いなと感じてしまった試合です。

本来であれば、あのしながわ戦はチームとして一つ上に行けるはずの試合でした。僕たちの一つ前の試合で浦安が湘南に負けて、すべての条件が揃いました。前日に僕らは町田相手に苦しみましたが、パワープレーも使いながら最終的には点差をつけて、強い時の名古屋の戦い方で勝つことができていました。

それだけ条件が揃って、「逆転優勝に向けてさあここでもう一つ!行くしかないだろう!」というところで、上に行けない。逆に下がってしまう。原因はいろいろあると思いますが、あの結果こそが、今季のチームの実力だったんだと思います。

──しかし、その後の岸和田ラウンドで浦安が町田に敗れ、名古屋は湘南に競り勝ちました。再度逆転優勝の芽が出てきたなかで迎えたのが、冒頭でもうかがった第26節の浦安戦でしたね。

はい。またチャンスが巡ってきたにも関わらず、浦安戦でまたしてもああいう試合をしてしまった。あの大事な一戦で、序盤に0-3のビハインドを負うなんてあり得ないですから。

はっきり言ってそんなものは名古屋オーシャンズではないですし、しながわ戦にしても浦安戦にしても、大事なところで全部落としているわけで、それが今季の僕たちの実力だったということです。変えなければならないことを、最後まで変えられなかった。言い訳のしようもない、当然の結果だったのだと思います。

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強い名古屋オーシャンズを、必ず取り戻す

──吉川選手にとって2024-2025シーズンは、日本代表のAFCフットサルアジアカップ(兼ワールドカップ予選)敗退もあり、Fリーグの結果も含めて、個人としても思い描いた結果ではなかったのかなと思います。私はアジアカップも現地で取材させてもらっていますが、いろいろな面で責任を感じているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

自分はキャプテンとして2つとも失っていますし、それは紛れもなく自分の責任だと思います。そこに対しては何の言い訳もないです。これが結果なので、そうですね……。なかなかうまく言葉が出てきません。

──ただ、吉川智貴というフットサル選手がこのまま終わってしまうということは、吉川選手ご自身が絶対に許せないんじゃないかなとも思います。

もちろんそうですね。仮に引退するシーズンが来たとしても、やはり最後は勝って終わりたいです。というよりも、このチームでずっとお世話になっていますから、“勝って終わらせなければいけない”という、責任を果たさなければならない気持ちの方が強いです。

──個人としての勝ちたい気持ち。それと同時に、名古屋オーシャンズが常勝クラブであり続けること。その2つに対する思いが吉川選手のなかに強くあるのだということを、改めて感じました。

はっきり言って、このチームは勝ってなんぼなので。勝つこと以外に意味はないんです。もちろん、来てくださるお客さんやサポーター、いろんな方にいいフットサルを見せたいという気持ちもあります。でも、いいフットサルを見せるのは、勝つことの次だと思っています。自分はこれまでそう思いながらこのクラブでプレーしてきましたし、このクラブは勝ってこそ存在意義があると思っているので。もう一度、勝てるチームにならなければいけない。

本当に難しい戦いになると思いますが、今季の反省を踏まえてどう行動していこうかというのは、自分のなかでも決めているので。とにかく優勝を目指して、やれることは全部やる。強い名古屋オーシャンズを、必ず取り戻す。その覚悟を持って、新シーズンに向かいたいと思います。

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