「MVPはこのクラブに関わるすべての人たちに捧げたいです」カイオが全日本制覇を達成してもなお抱く、タイトルへの強い想い【全日本選手権決勝｜インタビュー／しながわ】

SAL編集部
2025.03.24

【第30回全日本選手権大会｜決勝】立川アスレティックFC 2－5 しながわシティ（3月22日/駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場）

3月22日、駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場でJFA 第30回全日本フットサル選手権大会の決勝が行われ、しながわシティは立川アスレティックFCと対戦。しながわが5－2で勝利し、4年ぶり2度目の優勝を飾った。

優勝の立役者となったのはしながわのNo.10カイオだった。第1ピリオド9分、新井裕生からのラストパスをヘディングで押し込み先制すると、1－1の同点で迎えた第2ピリオド9分、またしても新井からの折り返しを決めて再び勝ち越し。同16分にもダメ押しとなるゴールを決め、決勝でハットトリックの大活躍。見事大会MVPにも選出された。

来日2年目となった今シーズン。惜しくもリーグ優勝こそ逃したものの、最後に日本一とMVPに輝き、これ以上ない最高の締め括りとなった。試合後、話を聞いた。

取材・文＝福田悠

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裕生ならきっと出してくれると思っていました

──優勝、そしてMVPおめでとうございます！今のお気持ちを聞かせてください。

最高にうれしいです。クラブ名がしながわシティになって以降は初の決勝進出でしたが、無事にタイトルをつかみ取ることができました。リーグ戦で優勝できなかった悔しさも残っていたなかで、全日本のタイトルは必ず獲りたいと思っていたので、それが達成できて幸せです。大会MVPについては、私1人の力ではないと思います。選ばれたのは間違いなくチームメイトのお陰です。今日メンバーに入れなかったメンバーやスタッフのみなさんも含めて、クラブに関わるすべての人たちの力が合わさった結果だと思っています。このMVPは、彼ら全員に捧げたいです。

──比嘉監督は「リーグ戦で悔しい思いをしてすぐに全日本が始まり、退団する選手もいて難しい状況だったが、それを感じさせないくらいチーム一丸となって勝ちに向かっていく姿勢が出せた」と話していました。カイオ選手から見て、チームがまとまれた要因はどこにあったと感じますか？

それはもう、比嘉監督の手腕によるところが大きいと思います。毎日の練習のなかで、選手たちを甘やかすことは一切ありませんでした。「もっと試合を意識しろ！」「そういうプレーは許されないよ！」と常に厳しく、最後まで諦めずに引っ張ってくれた。彼にすごく感謝したいし、それと同時に、リーダーである彼に食らいついていった選手たちも、全員が素晴らしかったのではないかと思います。

──試合が終わると、カイオ選手はピッチに倒れ込んで天井を見つめていました。あの時はどんなことを考えていたのですか？

私はクリスチャンなので、あの瞬間は神に感謝していました。大好きになったこの国で、そしてこの最高の舞台でこんな喜びを味わわせてくれたことにありがとうと伝えたかったんです。また、これまで関わってくれた人たちに対しても、同じように感謝の気持ちを込めて祈りを捧げていました。

──今日の決勝戦でも、カイオ選手、新井裕生選手、チアゴ・セウバック選手、山田凱斗選手のセットの連係は抜群でしたね。ボール回しが滑らかで、そのなかでも一瞬で相手の急所を突く怖さと圧力がありました。プレーしているご本人たちもかなりフットサルを楽しめるセットなのではないでしょうか。

裕生は、初めてプレーした時から特にコネクションを感じやすい選手でした。オーシャンカップの後にも記者の方のどなたかにその話をした覚えがあります。チアゴさんとは（同じブラジル人ということもあり）言葉の壁もない上に、お互いに何も言わずともわかり合える関係性です。プレー中もとにかく頭がいいし、僕らは一瞬で互いの意図を理解することができます。そして凱斗は、見ての通りあれほどのインテリジェンスと献身性によって私たちの余計なミスをすべてカバーしてくれます（笑）。バランスがすごくいいセットですね。素晴らしいユニットが完成したので、これが何年も続いてくれれば最高だなと思います。

──ヘディングで決めた今日の先制点も、新井選手の素晴らしいアシストからでした。新井選手にとっては逆足となる右足でのワンタッチパスでしたが、あの瞬間も「ここに来る！」という感覚はあったのでしょうか？

はい、彼ならきっと出してくれるだろうと思っていました。裕生は技術が高いですし、ちょっとでもスペースがあると狙ってくれるんです。いい選手とプレーしている時はああいうパスが出てくるので、ゴール前でしっかりと最適なポジションを取って準備するのが大事です。正直に言って、私はヘディングにはあまり自信がありません（笑）。だからあの瞬間は少し怖かったけど、裕生の意思が間違いなくボールを通じて私に伝わってきました。「カイオにつなぐ！」という彼の気持ちを感じたんです。（隣で取材を受けていた新井のほうを見ながら日本語で）「裕生！ありがとう（笑）！」。

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今シーズン手に入れたすべての賞をリーグタイトルと交換したいくらいです

──カイオ選手にとって今季は2年目のシーズンでした。リーグ優勝は惜しくも逃してしまいましたが、それでも本当に素晴らしい、充実の1年となったのではないでしょうか。

1年目はシーズンの途中に加入して、適応するのに難しい部分もあったと思います。でも、日本人の仲間が私を受け入れてくれて、いろんな人たちがサポートしてくれて、私は日本での生活とフットサルにコミットすることができました。ただ、満足のいくシーズンだったかと言われると、決してそうではありません。いい1年だったとは思いますが、次は今シーズン以上の結果を目指して取り組んでいかなければいけないと思います。

──カイオ選手はこの全日本選手権で優勝とMVPの活躍、リーグ戦でもベスト5に選出されていますが、まだまだ満足しないということなのですね。

はい。確かに、今シーズンは私個人としても多くの称号を手に入れることができました。でも正直に言うと、それらすべてをリーグタイトルと交換したいくらいなんです（笑）。10年後、あるシーズンで誰がMVPで誰がベスト5だったかなんて、覚えている人はそれほど多くないですよね？でも、「優勝はしながわシティ」というのはきっと誰もが覚えているはずです。今日、全日本のタイトルを獲れたことはとてもうれしいですが、これに満足することなく、来シーズンこそは必ずリーグタイトルを獲りたいと思います。