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「男と男の約束を果たした」。新井裕生が、アスレに別れを告げた1年後に証明したもの【全日本選手権 決勝|インタビュー/しながわ】

【第30回全日本選手権大会|決勝】立川アスレティックFC 2-5 しながわシティ(3月22日/駒沢オリンピック公園総合運動場 屋内球技場)

3月22日、駒沢オリンピック公園総合運動場 屋内球技場でJFA 第30回全日本フットサル選手権大会の決勝が行われ、しながわシティは立川アスレティックFCと対戦。しながわが5-2で勝利し、4年ぶり2度目の優勝を飾った。

勝敗を左右する仕事をしたのが新井だった。第1ピリオド9分にカイオのヘディングでのゴールをアシストして先制点を演出すると、1-1で迎えた第2ピリオド、29分には右奥で粘って、再びカイオのゴールをお膳立て。その後、チームは4-1までリードを広げるなど、流れを引き寄せる重要な2つのアシストをマークした。

今季、立川からしながわへ移籍したシーズンの最終戦で、古巣と対戦。新井はどんな思いでピッチに立ち、勝利した瞬間、どんな感情を抱いたのか。試合後、話を聞いた。

取材・文=本田好伸

第30回全日本選手権 試合結果・順位はこちら

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皆本晃と“男と男の約束”を交わした舞台

──優勝おめでとうございます!

ありがとうございます!

──日本一に輝いた気持ちはいかがですか?

去年は決勝で負けてしまったのですが、アスレを退団する時に社長の(皆本)晃さんからも、「もう一度この舞台で会うことが男の約束だ」と話していました。昨日(の準決勝は)アスレも厳しい試合でしたし、僕らも厳しい試合を勝ち上がって、この舞台でアスレと戦えたのは大きなことでした。

退団してもアスレへの愛がなくなったわけではないので、元チームメートと日本一を懸けた試合を戦えたことはすごく感慨深いものでした。僕たちが勝って優勝できたことは、自分が決断したことの証明になったのかなと思います。

──覚悟をもってしながわへと移籍した今シーズンの最後の相手が立川だったことには縁を感じますね。

そうですね。昨日も、アスレが負けている展開から最後に追いついて(延長で)勝った場面も目の前で見ていました。これはもう、なにがなんでも勝って決勝に行かなきゃいけないな、と。(アスレの)サポーターにも、晃さんにもなんて思われるかわかんないぞというプレッシャーもありました。

男と男の約束をして決勝で会えたのはうれしかったですし、そこで勝ててさらにうれしかったです。

──1年前、皆本さんからどのように送り出されたのでしょうか。

Fリーグ選抜からアスレに戻ってきた時に、僕の中では、アスレで選手人生を終わらせると決意していました。ただ、選手を続けていくなかで、日本代表や家族のこと、個人としてのさらなる成長を考えた時に、自分により大きな責任やプレッシャーをかける意味で移籍を決断しましたと、晃さんには伝えました。

晃さんとしては、僕がジュニアユースから(アスレで)育ってきたし、本来であれば残ってほしいし、「前身の府中時代からのフィロソフィーを伝えていってほしい」とは言われていました。それよりも今、自分が置かれている状況と、上を目指す向上心を、僕がゴリ押しした感じでした。

──決勝前には何か話をしたのでしょうか?

昨日のアスレの試合が終わって、僕らの試合とのベンチの入れ替えの際に「明日な」って。僕も「絶対に勝ちます」っていう一言ですね。

──そんな背景があるなかで臨んだこの試合はどんな思いで戦い、パフォーマンスはどうでしたか?

比嘉(リカルド)さん体制になってからのアスレも含めると、選手権やプレーオフ、今季のファイナルラウンドだったり、この4年間で、1位をかけた戦いはを今までにないほど経験してきました。ただ、そうしたなかで、今季のリーグ戦でも、自分の力を最後の最後で発揮しきれないままタイトルを逃した思いがありました。

去年の選手権決勝も、僕は名古屋を相手にシュート11本を打って1点も決められませんでした。得点王を初めて受賞した年でもありましたけど、それ以上に悔しさが残るシーズンでした。

でも、いつもそれで気負ってしまってダメになることはわかっていました。今シーズン、自分としては、チームが勝つことを最優先に考えました。今日もできれば点を決めたかったですけど、重要な先制点をアシストして、追加点も起点となることができたので、自分としてはこの1年間の成果が出たのかな、と。

今まではそんなにアシストするような選手ではなかったので、今年はアラもやったり、代表でもいろんなポジションをやらせてもらっているので、そうした経験をこの決勝で出せたことが良かったですね。

それにパワープレーの守備も今までやってこなかったなかで、昨日の名古屋戦も、その前のすみだ戦も含めて、ちょっと前がかりになった時に失点をしましたけど、それ以外はほぼ完璧なゲーム運びができたのかなと思います。

──アラでプレーして変化を感じることは?

スピード感はかなり変わりました。ピヴォで失う時と、アラで失う時での危険性が違います。ピヴォであれば思いきりプレーして失っても即カウンターにはならないですけど、アラでミスをすると即失点という、そこのプレッシャーは今シーズン苦しんだ部分です。ただ、後半戦になるにつれてある程度できるようになったと思います。

──ご両親を含め、ご家族もこの優勝はうれしいでしょうね。

そうですね。今日は家族も友達も、新井ファミリーみんなで応援してくれました。本当にその力はすごく助けられています。そういった身近な人が見に来てくれた試合は活躍できることが多いので、そういった力があると思います。今日、アスレのスタンドもすごい声援でしたし、ああいった応援団はすごいなと、選手としては応援してくれる方が多ければ多いほどモチベーションにも、力になりますから、しながわでももっと成長したいですね。

だから僕たちはこういった試合を見せることで、もっと多くのファン・サポーターを増やしていきたいです。

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選手として輝ける時に最大限輝けるように

──しながわに加入してから取り組みへの変化などもありましたか?

アスレの時には、フットサル以外にも、仕事や家族を含めて考えることが多いなかで、今シーズンはプロとして自分と向き合う時間を多く取ることができましたし、パーソナルトレーニングやケアする時間に充てられました。

何かが大きくパワーアップしているわけではないですけど、細かい部分の変化もそうですし、メンタル面でも、日々の練習に取り組むマインドを含めて向上したと思います。

──これまで、ここで決めてほしいという場面で決めきれないこともあったと思います。その一方で、今お話ししてもらったように、点を決められなかったものの成果を出せた、と。まだまだ伸び代が大きいな、と。

そうですね。僕も、自分がアラでここまでプレーできるとは思っていませんでした。セットプレーのキッカーや、パワープレーの守備など、自分自身もビックリするくらい、新しい自分を発見できました。目指したい選手像も、僕の中ではっきりしてきて、完成された選手をイメージできました。そこに向けて日々、何が必要なのか、そのまた先も含めてアジアカップもワールドカップもありますから、選手として輝ける時に最大限輝けるようにしたいです。

──そのイメージとは?

選手像ということで言えば、吉川(智貴)選手であったり、パッシャン(元・名古屋の西谷良介)のようなイメージです。でも、求められているプレーがそうでなければ、その時は、例えば(森岡)薫さんやバナナ(クレパウジ・ヴィニシウス)など、そういった求められているものによって、なんでもできることを目指しています。

プレーだけではなく、ピッチ内の立ち回り、守備も攻撃も含めて、そういう選手になりたい。ピッチ内外でチームのことを考えて、チームのために動ける選手になりたいと思っています。

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