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スペシャルコンテンツ 鷹野祐菜 YUUNA TAKANO Vol.3「『女性だから』という抵抗はありません」


総合型スポーツクラブ・東京ヴェルディで広報を務める鷹野祐菜さん。現在は、15競技、18チームあるクラブを全般的に網羅しながら、サッカーチームを中心に広報業務を担当する。兄妹の影響で、小・中学生時代にバスケ、高校時代にサッカーを続けながら、将来は“裏方”を志してきた。彼女はどのような道のりをたどって“あこがれの仕事”に就いたのか。どのような苦悩や葛藤があったのか。そして、総合型クラブとして生まれ変わろうとしている“ヴェルディ”のブランドをどのように支えているのか。稀有なビジョンと実行力をもつ若き広報ウーマンの、ありのままの生き様とメッセージとは。 「Smart Sports News」の独占インタビューを3回に分けてお届けする。

自分のなかで新しい広報像を確立したい

──現在、東京ヴェルディ株式会社としては、女性がどのくらい働かれていますか?

10年ほど前から日テレ・東京ヴェルディベレーザが、駒沢女子大学と地域社会への貢献、人材やリソースの交流による教育機会創出を目的とした連携を推進する「パートナーシップ提携協定」と「コーポレートパートナー契約」を締結しているのですが、その取り組みの一環として、先日「スポーツ業界への女性の進出」といったテーマで講演させていただきました。そこでお伝えした男女比率は、男性23人に対して、女性17人です。半々まではいかないですが、他のサッカークラブよりは女性が多いと思います。東京ヴェルディ株式会社の社員平均年齢は34歳です。

──たしかに、女性が多いですよね。

今秋開幕する日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』に参戦するにあたって、クラブ運営法人の役職員の50%が女性であることや役員にも最低一人は女性を登用するよう義務化されたこともあり、昨年から増えてきています。ですから今は、サッカー業界以外から入ってきている方が多いですね。同い年の営業ウーマンなどもいて、営業目線と広報目線を掛け合わせたスポンサーアクティベーションでこんなことをしたらいいのではないかと話したりします。

──女性の社会進出は、スポーツ業界でも課題とされていた部分ですよね。

私自身、そこは気にしていたところでした。私が想像していた限りでは、多忙で、なおかつ雇用形態の問題で結婚に消極的になってしまう方がいるのかなど、不安はありました。でも、産休明けで仕事復帰した方もいますし、育休制度も整っているので、少なくとも東京ヴェルディは、女性がスポーツ業界で働くことに抵抗がないクラブだと思います。長く続けられるし、制度も整っていて、若い人でも入ってきやすい環境があると思いますね。

──それこそ鷹野さんのように、こうして表にも出ることであこがれや「サッカーの仕事」を身近に感じてもらうきっかけになるケースはありますよね。

そうなってくれれば良いかなぁ、とは思います。ベレーザを例に出しますが、見た目もかっこいい、もしくはかわいく、内面も磨いていて、芯があって強い女性がたくさんいます。そういう姿を見ていると、私たちもしっかりしないといけないなって思いますし、実際に社内ではそういう空気感がありますね。

──そういう空気感?

男性には負けないというか、「男性だから」「女性だから」ではなく、意見をしっかり発信できる空気ですかね。なので「女性だから」という抵抗はありません。

──純粋に、仕事で苦しいことも多いですか?

少しはありますね。何歳になっても夢をもって、仲間と一緒にキラキラしている方にあこがれてきたのですが、私は実際、入社してすぐに心が折れてしまいました。大学を卒業する前の2月から入社していたのですが、公式サイトやSNSで、誤った情報を出してしまったり、「まだ早かったのかな……」って。会社に対して文句を言われるのもすべて自分のせいだし、その事実を精神的に支えきれませんでした。でも、その過程では、フォトショップやイラストレーターでバナーなどを作ったり、htmlを使ってサイト運営にも関われたり、技術的にも広がりました。それらの日々があったからこそ、今頑張れています。だから、あのときにやめないでよかったなって思います。

──では、この先の目標はありますか?

まだ明確には定まっていませんが、できる限りサッカーに携わっていきたいなと。新卒でサッカー業界に入りたいと飛び込んで「それからどうしたいの?」という人が多いと思いますが、一緒かもしれません。広報部、経営企画部、ヴェルディクラブと渡ってきましたが、今でも「広報をやりたい」という気持ちが変わらないので続けています。

──鷹野さんのなかで、広報とはどういうお仕事ですか?

「広報」と言うと、よく現場に立つ人を思い浮かべると思います。チームに帯同して、会見の準備をしたり、メディアの人と取材を受ける選手の調整をしたりするような。でも、私はチームには帯同しないで、各部署と連携を図ってマーケティング戦略を考えたり、「選手の動画撮影でどう振る舞ってもらおう」と戦略を考えたりしています。いわゆる「チーム広報」ではなく、そうした「コーポレート広報」としてブランディングを担うところが私の仕事です。ヴェルディとしては新しい試みなので、新しい広報像を自分のなかでちゃんと確立したいと思っています。

──鷹野さんは、行動力と実行力でたいていのことを形にできますよね。チャンスに飛び込み、新しいことにもどんどんトライしていく姿勢が素晴らしいなと、お話を聞いてすごく感じました。

ありがとうございます。飛び越えてしまって、怒られることもたくさんありますけどね(苦笑)。これまで、広報として表に出ることはあまりよくないかもしれないと思ってきましたが、これもJクラブで働きたいと思っている学生など何かにつながるのではないかと思い、せっかくいただいた機会なので、こうして自分が広報になるまで、なってからの話を初めてさせていただきました。ありがとうございます。

Vol.1「私は今、夢だった“サッカーを支える仕事”をしています」

Vol.2「『東京ヴェルディ』のブランディング担当です」

■プロフィール

鷹野祐菜(たかの・ゆうな)
山梨県出身。総合型スポーツクラブ・東京ヴェルディ広報部マーケティングコミュニケーショングループ。山梨学院大学を卒業後、東京ヴェルディ株式会社に入社。中学時代からの夢だった「サッカー業界」「裏方の仕事」を始めると、クラブの総合型スポーツクラブへの変革過程で、あらゆるスポーツを兼任する広報などを歴任。現在も職務を務めつつ、サッカーチームを主軸に広報業務を担当する。

Twitter
https://twitter.com/yu8218

東京ヴェルディクラブ公式サイト
https://www.verdy.club

総合クラブ・東京ヴェルディ
https://www.brand.verdy.co.jp

■クレジット

取材・構成:北健一郎、本田好伸
写真提供:東京ヴェルディ

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