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三笘薫,サッカー

三笘薫がプレミア初挑戦で見せた衝撃 真のワールドクラスへ、“日本の新エース”がイングランドで残した足跡

写真:三笘薫(提供:REX/アフロ)

2022-23シーズンのプレミアリーグは28日、第38節が行われ、全日程を終了した。今季所属先のブライトンに復帰し、イングランド1部で初のシーズンに挑んだ日本代表MF三笘薫は、リーグ戦33試合に出場し、日本人歴代トップの7得点に5アシストを決める活躍で、チームの6位フィニッシュと来季のヨーロッパ・リーグ出場権獲得に大きく貢献。これまで日本人選手たちが苦戦を強いられてきたプレミアリーグで1年目から特大のインパクトを残した。日本代表ウインガーが残したイングランド1年目の挑戦を振り返っていきたい。(文・井本佳孝)

転機となった指揮官交代

ブライトンのデ・ゼルビ監督,三苫薫
写真:ブライトンのデ・ゼルビ監督(ロイター/アフロ)

開幕当初の三笘が前監督のグレアム・ポッターに与えられたのは、試合の流れを変えるためのベンチ要員というポジション。ブライトンの顔として君臨してきたベルギー代表FWレアンドロ・トロサールがいたため、日本代表MFには後半終了間際やチームがリードされている中での起用が主となった。得意のドリブルを武器に爪痕を残そうと奮闘する三笘だったが、プレミアリーグの強度とスピードに適応する期間にコンディション不良も重なり、13節終了時で7試合出場無得点と結果は出てこなかった。

三笘の風向きが変わるきっかけとなったのが指揮官の交代とエースの移籍。シーズン途中に指揮官のポッターがチェルシーに引き抜かれ、イタリアのサッスオーロやウクライナのシャフタール・ドネツクの監督歴があるロベルト・デ・ゼルビを招聘。さらに、冬の移籍市場ではカタール・ワールドカップに出場し、チームのエースだったトロサールもアーセナルに加入。イタリア人指揮官は新たなチームを形成する中で、三笘を左サイドMFのレギュラーに抜擢する。

第14節のチェルシー戦で初めて先発起用された三笘は、いきなりプレミア初ゴールを奪取し、次のウルヴァーハンプトン戦ではアシストも記録。カタールW杯後はレギュラーポジションを与えられる。第18節は当時首位のアーセナル相手に敗れたものの一矢報いる得点を奪い、続く第19節のエヴァートン相手にも2試合連続の3ゴール目。第21節のレスター戦では左サイドでボールを受けると、カットインから衝撃のスーパーゴールを沈める。短期間で決定的なゴールを連発し、日本だけでなくイングランドでも三笘への注目度が高まることになった。

相手の研究が進む中アシスト役でも機能

三笘薫,サッカー
写真:三笘薫(提供:REX/アフロ)

急速に結果を出しブライトンのキーマンになった三笘に対しては、徐々に各チームが包囲網と呼ぶべき対策をするようになる。そんな中でも三笘はゴールだけでなく、相手DFを引きつけるチャンスメイクやアシストでもチームに貢献。川崎フロンターレでのルーキーイヤーに13得点12アシストを記録したように、この日本人ウインガーはドリブルでの打開、決定力に加えて、周りを活かすパス能力も備える。相手が研究をするようになった第26節のウェストハム戦からの5試合で2得点4アシストをマークしたことからもその片鱗が窺えた。

三笘は第29節のブレントフォード戦で裏への抜け出しからループシュートで今季リーグ戦7得点目を奪い、2012-13シーズンに香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)、2017-18シーズンに岡崎慎司(レスター)が記録していた日本人の年間最多記録を更新。1年目で先輩プレミアリーガーを超えてその名を刻むこととなった。その後11試合連続ノーゴールに終わり、期待された2桁ゴールはならなかったものの、1シーズン目で最終的には主力を担い、他チームに警戒された中でこの結果を残したことは称賛に値するだろう。

香川真司,サッカー
写真:香川真司,(Photo by ANP via Getty Images)

そんな三笘に対してデ・ゼルビは「来季は最低でも15ゴールをあげてほしい。そのクオリティーもポテンシャルも備えている」とさらなる飛躍へノルマを課した。終盤にかけて決定機を逃すシーンも目についた三笘にとって、さらなる決定力の向上はワールドクラスへ変貌するためのイタリア人指揮官からの期待の表れでもある。もしこの数字を来季クリアすることができれば、プレミアリーグや各リーグの上位クラブからもピックアップされる、押しも押されもせぬスターへの道が待っている。

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