最高の一瞬『世界一過酷なレース_エンデューロ』

 

エンデューロというオフロードバイクで山道や林道などを走る競技がありますが、そのなかにエルズベルグロデオという、世界一過酷と言われるレースがあります。

 

オーストリアの地方の炭鉱の町をコースにしているのですが、そのハードさがすごいんです。僕が撮りに行った2013年のときは10mくらいの深さの蟻地獄というか、陥没したクレーターみたいになっているところからスタートして、ほぼ垂直の壁みたいなところをまず登らないといけませんでした。当然、登れない人も続出します。

 

他にも、がれきの岩の山みたいなのを登るところもありました。岩が桁違いにデカかった。普通に歩くだけでも大変。それでも多分歩いたほうが早いくらいの感じのところをバイクで登るんです。

 

いろんなところにタイヤを取られて、足も取られて、途中で倒れてとかしながら。がれきのところで倒れるから当然体も痛いだろうし、それでもなんとかして乗り越えながら進んでいくという。

 

毎回500人くらいのライダーが参加して、完走できるのが十数人というレベルだそうです。

 

世界で一番やばい環境でエンデューロのレースができるというので、世界中から結構いろんなライダーが集まってくるという、街を挙げてのお祭りみたいな大会です。

 

この日は一日中ずっと雨が降っていて、そのなかで撮った写真ですね。そのとき日本人で参加した田中太一選手です。彼に密着するような形で撮影に行きました。過酷なチェックポイントを登りきったところだったと思います。

 

彼とはこのとき初めて知り合いましたし、僕は被写体とかに試合中に声をかけたりとかは絶対しないんですけど、あまりの過酷さに思わず「頑張れ」「GO!GO!」とか声を掛けたくなった。それがすごく印象に残っています。

 

 

▼髙須力(たかす・つとむ)

1978年東京都出身。2002年より独学で写真を始め、サッカーを中心に幅広い競技を撮影。FIFAワールドカップは2006年ドイツ大会から2022年カタール大会まで5大会連続取材中。ライフワークでセパタクロー日本代表を追いかけている。

ANSP(日本スポーツ写真協会)会員
AJPS(日本スポーツプレス協会)会員
AIPS(国際スポーツプレス協会)会員

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