レアル・マドリードとの対戦で見えた現実。清水エスパルス 反町康治GMが考える『Glicoチャレンジツアー』の価値【PR】
清水エスパルスはクラブパートナーであるGlicoグループ協賛のもと、2014年よりU14チームを対象とした海外遠征『Glicoチャレンジツアー』を実施しています。
通算8回目となる今回の舞台は、バルセロナ(スペイン)。期間中に開催される『Glico CUP』には、FCバルセロナやレアル・マドリードCFなどスペイン国内の強豪チームのほか、ベルギーのKRCゲンクやサウジアラビア代表チームが参加しました。
体格差、サッカーへの向き合い方、そして試合の雰囲気まで。あらゆる面で浮き彫りになった育成年代における世界と日本の差。しかし、この経験は決して我々を落胆させるものではなく、むしろ未来への大きな一歩になったと清水エスパルスGM・サッカー事業本部長の反町康治(そりまち・やすはる)氏は語ります。
今回は反町氏に、『Glicoチャレンジツアー』を通じて見えた世界の育成年代の現状、さらには日本企業が国際大会をスポンサードする意義について、幅広くお話いただきました。
W杯でスペイン撃破も…「日本が世界水準に達したという見方は楽観的すぎる」
ーまずはじめに、今回の『Glicoチャレンジツアー』そして期間中に開催された『Glico CUP』の所感をお聞かせください。
今回で8回目を迎えた『Glicoチャレンジツアー』ですが、今年は非常に国際色豊かで競技力のある大会になりました。参加チームには、FCバルセロナ、レアル・マドリード、RCDエスパニョールといったスペインの名門クラブに加え、ラ・リーガに所属し、エスパルスと業務提携を締結しているRCDマヨルカ、今季CLを戦うジローナも参加しました。さらに、ベルギーのKRCゲンク、中東からはサウジアラビアU-14代表と、強豪チームが勢揃い。大会期間はわずか3日間という短い期間でしたが、選手と指導者、双方にとって貴重な経験になったと思います。
ー現地での視察を通じて、特に印象に残った点を教えてください。
まず目を引いたのは、スペインの選手たちのプロポーションです。「本当に同い年なの?」と疑いたくなるほど、エスパルスの選手たちとは体つきに差がありました。スペイン人と日本人の体格は似ているという認識も、いよいよ過去の話になりそうです。14歳にして既に180cmを超える選手もいました。
他には、サッカーへの向き合い方にも大きな差を感じました。スペインでは、日本の中学2年から3年に相当する段階でもふるいにかけられるため、彼らにとっては毎試合がまさに生き残りをかけた真剣勝負。日本の子たちと比べてサッカーに対する意識が高く、その差は一目瞭然でした。
ー外見、内面ともに差があったと。
率直に言って、今回の視察でかなりの危機感を覚えました。確かに前回のW杯で日本代表がスペイン代表を破ったことは素晴らしい成果です。しかし、それによって日本サッカーの実力が世界水準に達したという見方はあまりにも楽観的すぎるなと。
少なくとも育成年代に関しては、選手たちの実力差は歴然としており、まるで大人と子供ほどの開きがあったのは事実です。実際に帰りの飛行機の中で、充実感や達成感に浸る選手や指導者の姿はほとんどありませんでした。
ー厳しい現実ですね…。ちなみにスペインと日本では育成システム以外にも何か違いがあるのでしょうか。
そもそも日本とスペインでは教育のシステムが全く違います。スペインでは15歳で自分の進路を決めなければいけません。彼らの場合も、学業かスポーツか、その時点でどちらの道を歩むか選択を迫られます。でも日本の子たちの場合はそうじゃない。大学卒業までどちらか決めていない子もいれば、高校を卒業するときに、大学を経由してプロへ進もうと考える子もいる。
要するに、人生の早い段階で自分と向き合っている分、スペインの子の方が、精神年齢が高いんです。肌感覚で言えば、日本の子より2、3歳上。この差が、サッカーにも表れていた気がします。
U14の試合でも5ユーロの入場料。スペインと日本、サッカー文化の違いとは?
ー世界との実力差を肌で感じたことは、指導者の方々にとっても大きな収穫があったのではないでしょうか。
収穫は大きかったと思います。特にゴールデンエイジと呼ばれる世代の育成がいかに重要であるかを痛感させられたはずです。サッカーはこの年代までに習得すべきことが山ほどあり、それを実践できる選手が増えれば増えるほど、個人もチームも強くなります。
ただ、そういった実力のある選手を育成するには、まずは指導者自身が変わらなければなりません。正直、日本の指導者は目線が内向きになりがちなんです。どうしても選手のマイナスなところばかりに目がいってしまう。
でも、そうじゃないんです。もっと外に目を向けて、世界で活躍する選手たちとどこが違うのかをしっかりキャッチして、それを指導に活かす。できないことを嘆くのではなく、できることを増やす。まずは自分たちの指導から変わる必要があると気づいたかなと。そういった意味で、指導者にとっても今回の遠征は良い機会になったと思います。
ー試合の雰囲気にも違いがあったそうですね。
U14の試合とは思えない程の緊張感がありましたね。特に印象的だったのは、カタルーニャ州同士の、FCバルセロナとRCDエスパニョールの試合。大勢のエスパニョールサポーターが、太鼓を叩いて応援していたんです。まるでトップチーム同士のような試合の雰囲気には驚きました。
ー育成年代の試合でその応援は驚きですね。日本の場合、観客席に親御さんがちらほらという印象があります。
そうですね。日本のU14世代の試合では、こういった熱い応援を見ることはほぼありません。おっしゃる通り親御さんが主な観客なので、どうしても運動会のような雰囲気になりがちです。それに比べ海外の選手たちは、こんな緊張感のある環境で毎週末試合ができるのかと。正直、少し羨ましく感じました。
ただ今回のように緊張感のある試合ができるのは、我々エスパルスにとってはすごくありがたいことです。選手たちにとっても刺激になったかなと。ちなみに今回は入場料も1人5ユーロ(約800円)いただいていました。日本であれば、この年代の大会でお金をいただくことなんてなかなかできません。改めてサッカー文化の違いを見せつけられました。
ーレアル・マドリードといえばサッカーファンの誰もが知っているビッグクラブですし、その名前だけで自然と注目度は高まりますよね。
育成年代とはいえレアルと試合をするのは滅多にない機会ですし、興味のある方も多かったはず。それにこういった経験ができると知ったら「エスパルスに入りたい」と思う子たちが出てくるかもしれません。そう考えると、情報発信は本当に重要です。今後もこういった取り組みは続けていきますし、広報面については改善していきたいと思います。
また、今回はU14の遠征でしたが、可能であれば全ての年代にこういった機会を設けたいです。特にヨーロッパのサッカー先進国での経験は、技術面の向上だけでなく、サッカーへの向き合い方や文化的理解を深める上で非常に重要です。簡単ではありませんが、こうした取り組みをもっと増やせるよう、引き続き取り組んでいきたいと思います。
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