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未来のパラアスリート支援制度が再始動!シンポジウム「NPASの未来」レポート

一般社団法人日本パラリンピアンズ協会(PAJ)が、2017年に創設した「ネクストパラアスリートスカラーシップ(以下、NPAS)」が再始動。7月10日に、シンポジウム「NPASの未来」が開催されました。

NPASとは、パラリンピック出場を目標に活動する若いアスリートの支援を目的とした給付型の奨学金制度。これまで3年間で11名のパラアスリートを支援してきましたが、コロナ禍に突入した2020年からは休止していました。

そんな中、三菱商事株式会社を「事業共創パートナー」にとして、「ネクストパラアスリートスカラーシップ~NPAS~supported by 三菱商事DREAM AS ONE.」として再始動することが決定。2023年8月1日〜10月31日にかけて、中高生を対象に募集されます。

<詳細はこちら

本記事では、NPAS第2期生の柳本あまね選手(車いすバスケットボール/2020東京パラリンピック出場)、森宏明選手(ノルディックスキー/ 2022北京パラリンピック出場)、第3期生の瀬戸勇次郎選手(視覚障害者柔道/ 2020東京パラリンピック 銅メダリスト)が登壇したシンポジウムの様子をお届けします。司会は、初瀬勇輔氏(一般社団法人日本パラリンピアンズ協会副会長)が務めました。

NPASによって生まれる、世代を超えた繋がり

柳本:皆さま、こんにちは。車いすバスケットボールの柳本あまねと申します。本日は短い時間ですが、よろしくお願いいたします。

森:NPAS第2期生で、ノルディックスキーをしています森宏明です。よろしくお願いします。

瀬戸:NPAS第3期生、視覚障害者柔道の瀬戸勇次郎です。よろしくお願いします。

初瀬:司会は引き続き、初瀬が行います。よろしくお願いします。まずは、皆さんがなぜNPASに応募されたのか教えていただけますか?

左から柳本選手、森選手、瀬戸選手

柳本:私は小学6年生から競技をしているのですが、東京パラリンピックの開催が決まって、もっと競技力を向上させたいと思ったことがきっかけです。そうなったとき、練習頻度を増やしたり、何をするにも費用がかかります。当時は学生でしたし、車いすで生活をしているので、アルバイトをすることも難しく…そんな中で、この奨学金制度があることを知りました。どうにか自分の競技力向上に繋げられればと思って応募した次第です。

森:2017、18シーズンにノルディックスキーを始めたのですが、自分で用具を買わなければならず、どうしても初期費用がかかってしまいます。また、私は東京出身なのですが、練習や合宿で毎月北海道まで通わなければならず、金銭的に困っていたなかで制度を紹介していただきました。

瀬戸:私もやはり資金面が大きかったです。応募をしたのは大学生のときだったのですが、アルバイトをするというのは難しく、かつしっかり勉強もしたいという考えがあったなかで、高校の先輩で障害者スポーツに関わっている方からご紹介いただきました。

初瀬:ありがとうございます。皆さんそのように応募されて奨学生となり、資金をどのように使われたのか、またNPASの特徴であるメンター制度についても感想を聞かせていただけますか?

瀬戸:いただいた奨学金は遠征費に充てさせていただきました。私は資金面だけでなくメンター制度もすごくありがたかったと思っています。

すでに世界で活躍された経験をお持ちのパラリンピアンの方から、世界で戦っていくための心構えをたくさん聞かせていただきましたし、大学卒業後の進路についても何度も何度も相談に乗っていただきました。今は大学院に進学しているのですが、それもメンターの先輩方から勧めていただいて選んだ形です。

初瀬:とくに若いアスリートの方だと、年齢が上のパラリンピアンと接する機会はなかなかありませんし、他競技の先輩と知り合う機会もないと思うので良かったと思います。森さんはいかがでしょうか?

森:奨学金の使い道としては、主に用具の購入に充てさせていただきました。メンター制度については、私と同じく両足が義足で自転車競技をされている藤田さんと冬の競技から永瀬さん(パラアイスホッケー)をご紹介いただきました。

異なるバックグラウンドをお持ちの方から、学生時代にいろいろなアドバイスをいただいたことで、今の私の競技人生があると思っています。日常生活の中では、自分と同じ境遇の方に出会うことはあまり無いので、日々の生活からどういった工夫をされているのかを知ることができ、非常に有意義な制度だったと思います。

初瀬:基本的には同じ障害で、夏と冬の競技で活躍する選手の2名体制で行なっていますので、それが良かったかもしれないですね。

柳本:私もチームの遠征費や宿泊費、日々の移動にかかる費用に使わせていただいています。パーソナルトレーニングにも行かせていただいて、筋力アップや体幹機能の向上など、競技力の向上にも繋がっていると感じています。

あとは、ちょうど(奨学金)をいただきはじめた頃から車の免許を取得して、行動の範囲が広がりました。それによって練習日数を増やすことができて、東京パラリンピック出場にも繋がったと思っています。

メンター制度については、月ごとの報告をした際にフィードバックをいただいたり、あとは私は東京大会が終わった直後に気分がガーンと上がったところから、ちょっと落ちてしまったときがあったのですが、そのことについても相談させていただいて。

「そういうこともあるよね、こうやって気持ちを切り替えたらいいんじゃない?」っていうようなアドバイスをいただいたりしました。その結果、また頑張ろうと思うことができて、次の大会に向けて取り組むことができました。

初瀬:柳本さんのメンターはどなたが担当されたのでしょうか?

柳本:PAJ会長の大日方(邦子)さんと、車いすバスケットボールの根木(慎志)さんにしていただきました。

初瀬:車いすバスケットボールの先輩と女性のメンターですね。男女という部分も意識しながらつけていたので、そこも少し役に立ちましたかね。皆さんメンター制度がすごく役に立ったとおっしゃってくださったのですが、これから新しい奨学生を募集するにあたって、皆さんもメンターを担当していただけますか…?

森:アカデミックな部分が「できるかな…」と不安ですが、機会があればやりたいです。

柳本:自分自身、本当に感謝しているので、次はそれを引き継いでいけたらなという思いはあります。機会があればぜひやりたいです。

初瀬:機会は僕たちがきちんとつくっていきますので、安心してくださいね。

瀬戸:私もこうしてお世話になっていることもあり、次の世代に自分が受けた恩を返していきたいと思っています。それこそ我々、視覚障害者柔道は次の世代が育っていないということが課題でもあるので、そういった意味でも取り組んでいきたいなと思っています。

初瀬:皆さんのように活躍している若手選手が(メンターとして)ついてくれることは、世界で活躍することを目指している中高生の選手にとって、4年後の自分、6年後の自分、8年後の自分が想像しやすくなると思うので、ぜひ皆さんにもご協力いただきたいと思っております。

NPAS奨学生から、次世代のパラアスリートへ

初瀬:次のパラリンピックも近づいてきていますので、そのあたりの意気込みなどもお聞きしたいなと思います。

瀬戸:東京大会は銅メダルで終わってしまったのですが、パリでは金メダルを目指したいと思います。あと1年ちょっと全力で稽古をして、試合にたくさん出て、経験を積んで、1回戦から自分が納得する試合をして勝ちたいと思っています。

柳本:東京大会は6位だったのですが、車いすバスケットボール女子が3大会ぶりと久しぶりの出場だったので良い結果だったと言われています。でも、やっぱり欲しいのは金メダルです。

男子は銀メダルを獲得しているので、パリでは必ずアベックですね。男子も女子も金で大会を終えられたらなと思っています。それまでにさまざまな大会があるので、内容が良かったじゃなくて、一つずつ勝って確実にパリに繋げていきたいと思います。

森:私はお二人と違って冬の競技なので、これから3年後のミラノ大会に向けて準備をしていきたいです。前回の北京大会は初出場で、出るだけになってしまったのが正直なところです。これから3年間でしっかりと強化をして、個人でもメダルを目指せる選手になるのが一つの目標です。

あとは、リレーの種目があるので、そこでも日本チームとしてメダルを獲得したいです。そのメンバーになれるように、個人の能力強化もしていきたいですね。前回は国内の強化選手から出場できたのが私一人だけだったので、今度は日本チームとして、みんなでミラノに乗り込んでいきたいというのも個人的な思いです。

初瀬:一般的なこういった制度だと、自分の奨学金の制度期間が終わるとそれでおしまいになることが多いですが、そうじゃないところがNPASの魅力かなと思っております。このように奨学生という制度が終わってからもメンターと繋がって一緒に活動もしていますので、いつでも相談できる関係性になっていると思います。選手の皆さんの活躍を願っていますし、ぜひ活躍したときにNPASと毎回言っていただけると嬉しいなと思います。

初瀬:これから応募を考えている皆さんに向けて、一言メッセージをお願いいたします。

柳本:アスリート同士の関わりが生まれるのは大きな魅力だと思いますし、私たちも力になれればと思っているので、ぜひご応募いただけれたらと思います。

森:私も学生時代にいろんな悩みを抱えて競技を続けてきた経験があるので、何か悩んでる方がいたら背中を押してあげるようにしたいなと思っています。

瀬戸:(対象が)中高生ということで、進路についても悩みを抱えていると思います。私自身、進路についてメンターの方と何度も何度も相談していましたし、今度は相談を受ける側として、力になりたいと思っています。同じ競技をやっている先輩からそういった話を聞けるのは貴重な機会だと思うので、ぜひたくさん応募していただきたいと思います。

初瀬:皆さん、ありがとうございました。今後は8月1日から10月31日まで中高生の皆さん限定ですが募集をしています。若い皆さんを僕らでサポートしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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