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長谷川太郎(元甲府)の夢は、「2030年までにW杯得点王を育てる」。

柏レイソルユースからトップチームに昇格し、1998年にJリーグデビューを果たした長谷川太郎。2005年にはヴァンフォーレ甲府においてJ2日本人トップとなる17ゴールを記録し、同チームのJ1昇格に大きく貢献した。2010年に所属したギラヴァンツ北九州を最後にJリーグからは離れ、地域リーグの浦安SCに加入し、昨年はインドのムハンメダンFCでプレー2014年度限りで引退を表明し、現在はストライカーを育成するための「TRE(トレ)2030 Project」を進めている。

また、10月4日(日)には古巣・浦安SC(現・ブリオベッカ浦安)での引退試合が予定されています。

日本サッカーの課題である「ストライカー」を育成へ

――まず、現役を引退されてから、現在TRE(トレ)2030 Projectというスクール活動を行っていますが、どういった経緯で始めたのか教えてください。

自分はストライカーが育ってくると対峙するキーパーやディフェンス、パサーの技術も上がってくると思っています。だからこそ優れたストライカーの出現は今後日本のサッカーが強くなるためには必須だと思い、今回そういった選手を生み出すための活動を始めました。1月にサッカー日本代表がUAEに負けた試合をたまたまテレビで観ていた時も、解説の方が決定力不足で負けた、という話をしていましたね。でもそれはずっと言われ続けていることです。

――日本サッカーにおいて長年言われている課題ですね。

なぜそうなのかを自分なりに考えた時に日本には相手に気を遣う文化があって、それがプレーにも出てしまっているところがあるのではないでしょうか。でもだからといって文化を変えるとか、積み上げてきた今の日本のサッカーを否定するとかではなく、ストライカー自体を生み出す雰囲気をつくっていく必要があると考えました。そのために期限を決めて、誰かが決断して自ら動くことが大切だと思い、TRE 2030 Projectをスタートすることにしました。

2005年にJ2日本人トップのゴール数をマークしたこと、そして浦安SC(現・ブリオベッカ浦安、以下浦安)で指導する中で、特にシュートのことについては自分も他の素晴らしい選手・指導者の方と話し合えるぐらい考えてきたことに気付きました。「良い意味での勘違い」かもしれませんが、それがよかったのだと思います。

――長谷川さんにとって夢を叶えるためには「良い意味での勘違いをする」ということがポイントだったということですね。

そうですね。夢は自分でそういった勘違いができるくらいでないと達成するのは難しいと思います。選手として最後に僕が所属先もないまま海外に行ったのも、理由はないけれど自分に自信がある、という勘違いをしていたから挑戦することができましたし、結果的に実際にインドで契約を結ぶこともできました。ただ挑戦する理由はどうであれ、まずは自分が覚悟を決めることが重要です。そうすることで初めていろいろな方にご協力頂けるようになっていき、実現できるのだと思います。今回のストライカーを育成する活動も同様ですね。

自分はサッカーがあったから成長できました。そんなサッカー界に恩返しがしたいですし、する必要があると感じました。一度社会人になってからまたサッカーに戻ってきたのもこちらの方が貢献できることが大きいと思ったからです。当初はサッカーから離れたところから貢献していくつもりでしたが、現役引退した今だからこそできることも多いと考えたんです。

――それでは現在の長谷川さんの今後の夢や目標というのはどういったことなのでしょうか。

2030年のW杯において、日本人得点王を輩出することです。今スクールで対象としている子供達が20代半ばになっており、ちょうど選手として活躍する上でいい年齢になっていますし、今のうちから目標を持って力強くやっていけば、他の部分にも役立つでしょうね。

――3月から一般社団法人を立ち上げて、活動をされているということですが、具体的にいつまでにどのようなことをしていく予定なのでしょうか。

今自分は2030年に日本人がW杯で得点王を取るためにプレーだけでなく、ケアなどの部分も含め、何ができるかを常に考えています。

同時にゴールに対しての引き出しをいろいろな選手に聞きながら、それを記録することで後世に残していきたいと考えています。

今回この活動を一緒に始めたGKコーチと共にゴール前に特化した練習をスクールで行ったり、得点力に悩む部活やクラブチームのお手伝いをしたりしていきたいと思います。

今後ストライカーコーチとしていろいろなところに現役選手や元選手が行って週1回でも教えられれば、ゴールへの意識は高まっていくと思います。

あとはストリートサッカーの文化を入れていけるとよりいいですね。サッカーだけでなく、ビーチサッカーやフットサルを一緒にできると競技における感覚がより磨かれていくのではないでしょうか。

TRE2030

――聞いていても楽しそうですね!

楽しむ、ということが非常に大事です。サッカー、ビーチサッカー、フットサルなどのトップ選手を呼んで、競技の壁を越えたチームを組み、それぞれの競技をやったりすれば、面白いと思いますし、実際に観に来る人もいると思います。それがフットサルやビーチサッカーの知名度を上げることに繋がりますよね。

自分はプロになる前からずっと治療家の方にお世話になっているので、ケアもすごく大切だと考えています。なので、そういったところとも連携していければいいですね。

――様々なスポーツ、そしてプレーだけでなくケアも連携して、総合的に育てる取り組みですね。

はい。さらに本人だけでは無いんです。

フットボールフィットネスという活動をしていこうと思っていますが、これはご家族にも実際にサッカーに触れて頂くことで、子供達や競技への理解と健康増進に繋げるというものです。

例えば母親が仮にプレーについて子供を褒めたとしても、そもそもサッカーという競技自体を分かっていなければ、その言葉から生まれる喜びは半減してしまいます。

また、子供達の母親には元気でいてもらうことも重要です。そこで全身運動に効果的なサッカーの運動をしてもらいたいのですが、今までやったことがないのにいきなりボールを蹴るわけにもいきません。そこで関連する体幹トレーニングなどを含めたメニューを取り入れながらサッカーに触れてもらうことで、子供がやっていることがいかに難しいかを感じて頂くことができますし、それが競技への理解にも繋げていきたい、ということです。知識として蓄積されればご家庭で子供へアドバイスをすることも可能になります。さらに興味を持ってもらうことができれば、食事の改善や父親の健康管理など、サッカーを通してできることがどんどん広がっていくと思います。

身長が小さくても活躍できるストライカーを

――スクールの中でどのようなFWの選手を育てていきたいか、その理想像を教えてください。

自分も身長が小さかったので、それでも活躍できる選手を育てていきたいです。ただあまり身長の大小にはこだわらず、とにかくゴールを狙える選手を生んでいくことが一番です。体の強さよりもしなやかさを持っていることがベストで、その上で動きや体の使い方などを教えていきたいと考えています。そして選手には自分なりの得点スタイルを確立していってほしいです。

TRE2030

――実績をお持ちの長谷川さんの言葉だからこそ、説得力を感じます。

――TRE(トレ)という名前にはどのような意味が込められているのでしょうか。

TREという活動にはFWに得点を「獲れ」、GKにボールを「捕れ」、そして自分の、日本の夢を掴み「取れ」、という意味が込められています。ちなみにTREはイタリア語で「3」を指します。

得点を取った、もしくは阻止したことが本人の自信にもなりますし、家族でするスポーツの会話の中でもおそらくその部分が一番明るい雰囲気になって、笑顔が生まれる話題だと思います。TREの中でそういった自信と笑顔を生み出していければいいですね。

――ところで長谷川さんはこうしてお話していてもすごく物腰が柔らかく感じます。何か意識されていることはありますか。

逆に固く接することができないんですよ!あとは現役の時もこんな性格だったのか、とよく聞かれます。FWらしくないので、教える時も説得力がないと言われてしまうことがあるくらいです(笑)

でも僕は今まで自分を見てきてくださった指導者の方のように接しているだけなんです。厳しいことも言いますが、サッカーを楽しませてくれて、ずっと見守るような姿勢で皆さん教えてくれたので、僕もそのような感覚でいます。

やはりサッカーを真剣に楽しんでいないといいイメージやいいプレーは生まれないと思います。切羽詰まっていることもありますが、そんな時だからこそ、自分に言い聞かせるようにして、少しでもプラスの方に考えていかないと面白いものは生み出されません。

――長く現役生活を続けてきて、様々なことがあったと思いますが、その中で一番嬉しかったことを教えてください。

ゴール1つ1つがすごく嬉しい瞬間でした。でも1つ挙げるとすれば、甲府に所属していた2004年6月の札幌戦で決めたゴールです。その月で契約期間が満了する予定でした。しかし0-1で負けていた後半20分に交代で投入され、他の選手との連携から1点を返し、後半41分にはたまたま高く上がったボールをジャンピングボレーシュートを打ったところ、それがゴールになったんです。その活躍のおかげで契約延長になり、プロ生活が伸びることになりました。あの一発がなかったらサッカー選手として終わっていたでしょうね。一本のゴールで僕の人生が大きく変わったんです。2006年シーズンからのJ1昇格の舞台にも、もしかしたら自分はいなかったかもしれません。

だから子供達にも一本のシュートが良くも悪くも人生を変えることになるかもしれない、ということは伝えています。

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