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ダブルダッチとは何か? 中心人物・SHUNが伝授する「究極のロープスポーツ」の楽しみ方

2本のロープを用いて、ターナー(回し手)とジャンパー(跳び手)が多種多様なテクニックを披露する「ダブルダッチ」。その起源については諸説あるが、1970年代にアメリカで広くスポーツとして楽しまれるようになったと言われており、当時から大会も開催されていたと言われている。日本では1996年4月に日本ダブルダッチ協会(JDDA)が発足し、近年は積極的な普及活動が進んでいる。

縄跳びや大縄など、誰でも一度は遊んだことのある「ロープスポーツ」の一種ではあるが、その中でもよりパフォーマンスに特化しているのがダブルダッチの特徴だ。アクロバティックなダンス要素や音楽との融合など、見どころは多岐に渡る。

現在は日本でも数多くの大会が行われており、世界大会に直結するバトルやイベントも存在する。その一つが、今年3月に行われた「DOUBLE DUTCH CONTEST JAPAN」である。このコンテストは日本最高峰のダブルダッチの大会と位置付けられ、世界への舞台を賭けた戦いとなっている。

ダブルダッチには様々なジャンルが存在するが、日本では決められた時間でどれだけ多くジャンプできるかを競う「スピード」と、チーム演技の技術力・表現力・構成力・独創力を競い合う「パフォーマンス」がメインで、パフォーマンス部門はジャッジの審査によって順位・勝敗が決まる。今回行われたDOUBLE DUTCH CONTEST JAPAN 2017では、国内で活躍するダブルダッチプレイヤーのほか、海外のプレイヤーや日本のトップダンサーもジャッジとして招聘された。

そのジャッジを務めた一人であるSHUNに、ダブルダッチの審査方法や大会を観る上での楽しみ方を伺った。

ターナーとジャンパーの技術力を“総合評価”。音楽との融合にも注目

SHUNは、日本初のプロダブルダッチチーム「J-TRAP.」のメンバーとして、数々の大会やイベントに出演する業界の中心人物であり、その実績から現在は大会のジャッジとしても活躍している。今大会のパフォーマンス部門は構成力、独創力、技術力、表現力という4項目に分けて審査が行われたが、SHUNは技術力および独創力の項目を担当した。

各項目の審査基準について、SHUNは「技術の項目では、技の熟練度を審査します。一つ一つの技を危なげなく安定して魅せられるか、技に合うロープの回し方ができているのか、音楽のテンポに技術が合っているのかなど、ターナーとジャンパーの技術力を総合的に評価します」と、ポイントを明かした。

独創に関しては「今まで見たことのない、誰も行ってこなかった表現方法を取り入れたチームにオリジナリティの点数を加算します。ただ、ジャッジのメンバーによって初見かどうかは分かれてしまう可能性があるので、公平性を図るために複数人で独創力を審査しています」と語っている。

今大会は総勢8人でジャッジを務め、各個人が1〜2項目の審査を担当した。構成は3人、独創は4人、技術は3人、表現は2人でジャッジを行っている。ダブルダッチを含めたストリートスポーツは、フィギュアスケートのように技ごとの明確な得点が定められていないため、ジャッジの好みなど、主観的な考え方が審査に影響を及ぼす可能性は否定できない。

その不公平性を防止するために、ダブルダッチはジャッジの人数を多く確保し、各項目を複数人で担当することで厳正な審査を行っている。なお、大会によってはオーディエンスジャッジ(観客による審査)も稀に存在するという。

SHUN

また、今大会ではSHUNの担当外ではあるが、表現力の項目に含まれる「表情」もキーポイントになるという。各チームは「音楽とパフォーマンスにあった表情」が求められ、表情の統一感も採点に影響を及ぼすのだ。また、観客を意識しているかどうかも重要視され、「観客やジャッジに目でアピールをせず、パフォーマンスで手いっぱいになっているチームは点数が伸びない」とのこと。見る者にエンターテインメントを提供するパフォーマーとして、視線の配り方も表現の一部となり、評価の対象となる。

ダブルダッチのパフォーマンスでは様々なテンポの曲が使われ、ヒップホップやハウス、J-POPなど、ジャンルもチームによって異なる。日本人が初めて音楽に合わせてダブルダッチの演技を行ったことから、音楽に合わせて行うスタイルを海外のプレイヤーから「ジャパニーズスタイル」と呼ばれることもある。

かなり稀なケースではあるが、演技時間内の一部を “無音”でパフォーマンスを行うチームもある。ジャンパーがロープの上を跳ぶ音や、ターナーがロープを回す音が直に伝わるため、音楽との融合とは違った躍動感が感じられる。このように、ダブルダッチは使用する音楽の自由度が高い。ただ、もともとダブルダッチの起源が“非行防止”であることから、スラング(ある階層・社会だけで用いられる卑語・俗語)が含まれた音楽はNG、または減点対象になる大会があるほか、中には課題曲に合わせてパフォーマンスを行う場合もある。

はじめの一歩は「好きなダブルダッチ」を見つけること

ダブルダッチ

日本のダブルダッチの印象について、SHUNは「パフォーマンスという部分では日本は世界一で、特にターナーの技術が優れている」とコメントしている。ダブルダッチは競技の特性上、ジャンパーに注目が集まりがちである。しかし、ジャンパーのパフォーマンスを際立つのもターナーの技術があってこそであり「ロープの動きや使い方を分かってくると、競技者以外の観客の方にもさらに楽しんでいただけるのではないか」という。

「ジャンパーが難しいことをやっていれば、当然ターナーも難しくなってきますが、そこでロープを綺麗に通しているのは技術的にも高い証拠です。あとはターナーに余裕があるかどうかで、安定感は格好良さにも影響しますし、ターナーに注目するなら見やすいポイントではあります。ロープが『クロスしている』『逆回りしている』など細かい動きも分かるようになると、より一層深く楽しめると思います」

また、日本のダブルダッチプレイヤーはロープ自体も“ファッション”として捉え、チームの雰囲気や衣装に合った色や材質を選ぶことがあるという。その他にもターナーの表情や声、手元の動きなど、目が肥えれば肥えるほど楽しみ方が広がっていくことはダブルダッチの魅力の一つだろう。

ダブルダッチ

ダブルダッチには多種多様な楽しみ方があるが、その中でSHUNは初心者に対して、まずは規模の大きな大会に足を運ぶことを勧めている。

「大きい大会になればなるほどチーム数が増えます。その中で、アクロバットに魅了される人もいれば、ダンスに関心を抱く人もいると思うので、まずは自分の好きなダブルダッチを見つけてほしいです。その後もイベントや大会に足を運んでいくうちに様々な発見がありますし、自分のお気に入りのチームを見つけて応援することも楽しみ方の一つだと思います」

好きなダブルダッチや好みのチームを見つけ、より一層深く掘り下げることで競技の楽しみ方は無限に広がっていきそうだ。最後に、長きに渡ってトップで活躍しているSHUNが、日本ダブルダッチ界の展望を語った。

「今までは日本という小さな国で勝負していましたが、最近では世界中で行われている様々な大会に出場するプレイヤーも増えてきているため、チームによって目指すものが変わってくるはずです。世界大会はそれぞれの大会によって形式や審査基準が異なるので『自分たちはこの大会・競技で世界を獲ろう』というふうに目的が変化していくと展望しています。

限られた大会に競技者全員が出ることもなくなってくると考えられますし、チームによって目指す大会が異なるので、準備の仕方も変わってきます。各チームがそれぞれの目標に向かうことで、競技の幅はどんどん広がっていくので、今まで見たことのないような新しいダブルダッチが出てくると思います」

日本ダブルダッチ協会(JDDA)は、将来的にダブルダッチを五輪競技にすることも視野に入れている。今後ダブルダッチはエンターテイメントとしての側面はもちろんのこと、より競技色を強くしたスポーツとしても発展を遂げる可能性があり、競技の多様化と比例して観客の楽しみ方も広がっていくことだろう。

ダブルダッチ

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