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クリケットの競技人口は世界2位! 「メジャーなのにマイナー」な競技の実像に迫る

野球に似ているところ、違うところ

クリケット
この日、体験が行われたのはプラスチックのバットと柔らかいボールを用いた簡易的なクリケットだ。普段は小学生のクリケット初心者向けプログラム「クリケットブラスト」で使用されている道具である。本来の競技は木製(柳)のバットとコルクに皮を巻いた硬いボールで行う。

クリケットにおいて投手の役割を果たすボウラーは野球と違って投球時に、肘を曲げてはいけない。

実際に投げさせてもらったが、野球出身の筆者にとってはこれが一番難しかった。

ボウラーは打者の少し手前でボールをワンバウンドさせて、バットに当てにくくすることを意識することが大切だ。しかし、筆者は肘を伸ばしたままボールを投げるということに慣れていないため、球を放す位置が安定せず、コントロールが乱れてしまうことが多かった。

一方のバッティングは打者が打撃可能とされる範囲が野球より広く、バウンドしたり、少し逸れたりするくらいで球を見逃してしまうと攻撃できる球数が減ってしまうため、多少の悪球も打つ必要があるところが難しかった。

地域を絞って普及活動を行う意義

クリケット

日本におけるクリケットは、これまで少し変わった形で普及活動が行われてきた。日本クリケット協会は本部事務局を栃木県佐野市に設置し、その地域に密着して重点的に普及を進めてきたのだ。例えば市内にある26の小学校にクリケットの指導テキストを配布し、今ではほとんどの学校の体育の授業で競技が行われている。これまでの活動について、日本クリケット協会事務局長の宮地直樹氏は語る。

「クリケットは佐野という地域に絞り、幼稚園・小学校というところから普及活動をやり始めて、一番初めに教えた子が高校生になって今も1人続けています。これまでは中学生になって競技から抜けてしまう人も多かったのですが、今の中学2年生の世代は強くて期待が持てます。中には代表の強化選手に入っている子もいます。地元のメディアは結構取り上げてくれるので、佐野の街の人はみんなクリケットについて知ってくれていますよ。」

また、地元企業もクリケットによって、外から若い人材が入ってくることを望んでいるという。

「ハイヒールのかかとの部分のシェア日本一の企業、唯一の国産ボウリングボールメーカーの工場、ガリ(生姜)の日本シェアトップの会社などが佐野にはあります。将来的にはそのような日本に誇れる企業に代表選手が入り、早めに仕事を上がってクリケットをするという形がつくれるといいですよね。」

選手にはクリケットのために佐野へ移住し、地元企業に就職する。企業から競技への理解がある環境下で選手活動に集中することも可能だろう。

今までの地域を絞った競技の普及・発展活動、地方活性化の取り組みが国からも認められ、地方創生拠点整備交付金の事業対象にも選ばれた。

これにより約1億円をかけ、旧栃木県立田沼高校の跡地に国際基準のクリケットのグラウンドを整備する計画が動き出す。

「正直5年前までこんな形で話が発展していくなんて考えられなかったです。特に天然芝のピッチはハードルが高いので、整備まで20年はかかると思っていましたから。」

佐野を“クリケットの聖地”にするという夢は思ったよりも早いスピードで進んでいるようだ。

現在は佐野に加え、昭島(東京)、山武(千葉)、横浜(神奈川)と4つまでプレーの拠点が増えている。

今後は4拠点を中心に、まずはトップレベルにおける競技の環境整備を行う。それがある程度形になってきたところで草の根に対し、簡易的なクリケットを体験する機会を増やしていく計画だという。

女性は“日本代表”になれるチャンス!

日本におけるクリケットが抱える問題は、女性の競技人口が少ないということだ。女子の社会人になると5つしかチームがない。反面、それは誰にでも日本代表になるチャンスがあることを意味する。

「女子については誰でも参加できる日本代表の選考会をやったりしています。これまでの実績でいくと日本代表の試合に出るまで最短で2ヶ月、アジア大会に日本代表として出場して得点王になるまでが2年という選手がいました。実際その選手にはオーストラリアに行ってもらい、プロにチャレンジしてもらおうと考えていましたが、そのタイミングで結婚して出産するということで最終的には競技から離れてしまいました。」

女性の競技人口を増やすべく、2017年5月からクリケットに触れる機会の提供と女子選手の発掘を目的とする体験会「ウィメンズクリケットブラスト」を本格的にスタートさせている。都内で開催されているので、女性はぜひ足を運んでみてほしい。体験した上でクリケットの魅力にハマった人は本格的に競技活動をスタートさせてみてはいかがだろうか。今から“日本代表”になることもクリケットなら夢ではないはずだ。

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