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稲葉洸太郎(フットサル日本代表)は、なぜ現役中に挑戦を続けるのか?

サッカー選手はサッカーコートを作って欲しい

——フットサル場を作った経緯にも、そのような想いがあったのでしょうか?

稲葉 フットサル場に関しては、自分の場所を作りたいことと、仕事としてフットサルに携わりたいという想いもありました。引退してからというよりは、現役中から少しでも作り上げていって、引退後にはしっかりと形になっていることを目標にやっています。もちろん子供たちや、Fリーグを目指す選手たちにはたくさん練習に使ってほしいですし、自主トレにも使えるように開放しています。

今はサッカー選手が数多くフットサル場を作っていますけど、サッカー選手はサッカー場を作れ!と思うんですよ。『フットサル選手はフットサル場を作れない』と思われるのが嫌だったのが、コートを作った理由の1つでもあります。その当時は尖っていたし、今となってはサッカーのことを認めて一緒に生きていこうと思っているので、そんな気持ちはあまりないですけど(笑)。

——フットサル場をプロデュースすることで、稲葉選手やFリーグの認知度向上にも繋がりそうです。

稲葉 フットサル人口は増えてきていますけど、Fリーグや稲葉洸太郎の存在を知っている人は、ほんの一部ですからね。僕のフットサルコートを使ってくれている方でも、僕のことを知らずに楽しんでいる人はたくさんいます。ほとんどの人はサッカーをやりたいけど、人数が集まらなかったり、体力的にフルコートを走るのはきつかったりして、手軽なフットサルをやっているんだと思います。

——現役中にフットサル場を作るというこだわりは強かったのでしょうか?

稲葉 フットサル選手は練習以外の時間がたくさんあって、その時間を何に使うかは大切だと考えています。僕の場合は2012年のW杯が終わって、結婚をして子供も産まれたんですけど、子供が産まれると引退していく人も多いんです。ただ、僕の中ではフットサルしかなかった。

フットサルの仕事をどう膨らませていくかと考えたら、自分でやるしかないな、と。最近は引退が前より近づいてきていて、準備していかないといけないこともあって、空き時間に対しての考え方も変わってきています。

W杯出場を逃した影響

——とはいえ、会社を立ち上げることは、なかなかできないことだと思います。

稲葉 選手としてトップでやりながら、こういうこともできるんだと見せたい気持ちもあります。僕はFリーグ創成期からプレーをしてきましたが、リーグ自体がすごく伸びているといえば、盛り上がりは横ばいなところもある。それでも自分の中では何かやってやろうという想いがありますし、そうしないとフットサルに人生を捧げている僕たちが食っていけなくなるんですよね。

選手たちにもフットサルを盛り上げようというアンテナがある選手もいれば、全然そうでない選手もいます。ただ、去年のW杯予選で日本代表は負けて、本戦進出を逃したんですよ。僕は予選には出場していないですけど、本戦には出場するつもりでいたので「負けた・・・」となって。盛り上がりがまた落ちるんじゃないかとか、いろいろと考えて、本気で立ち上がろうという気持ちになりました。

日本が世界の舞台へ行けないくらい、今はアジアにいる他国の力が伸びてきているんです。サッカー日本代表も、予選を突破することすら簡単ではないじゃないですか。アジアは強化に力を入れてきていますし、日本がどう戦っていくのかを考えないといけないレベルに来ていますね。

——W杯に出られなかった影響は感じていますか?

稲葉 伸びるための良い機会だったのに、何も変わらずにまた4年間を過ごさないといけなくなりますよね。日本って、サッカー界では小学生年代が世界トップクラスのクラブチームに勝ててしまうくらい、世界で戦える力を持っているんです。だけど、中学、高校を経てプロになった時に、世界の強豪国と差が出てしまっています。そこに何かがあるんですよね。

小学生の時に勝ちに固執した戦い方をすれば、ある程度は勝てると思います。でも、それをやってしまうと中学、高校で伸びなくなるし、「もっと考えさせろ」とミゲルは言うんです。自分で考えて、自分でプレーを決断させること。日本ではああやれ、こうやれと型にはめたがる人もいるじゃないですか。

スペインやブラジルでは自分たちで考えて、決断してプレーをすることが当たり前なので、ここが伸びるんです。POTENCIAでは、技術だけでなく考え方の部分も取り入れて、サッカー界に提案したいと思っています。

稲葉洸太郎

現役中に引退後を考え、動く理由

——昨年に会社を設立しましたが、主な事業内容を教えてください。

稲葉 スポーツ関連の教育事業、スポーツ施設やフットサル、スクールの運営が楽になるようなアプリを展開したりしています。また、フットサルのメソッドも展開していますので、フットボール界全体の底上げに繋がれば嬉しいですね。それと、スポーツウェアの企画・販売も手がけています。

——現役中に引退後のことを考えて取り組んでいるとなると、一部のファンはそこにネガティブさを感じることもあるのではないでしょうか。

稲葉 それはそれで良いと思うんです。もちろん、全てをフットサルに費やすこともできますけど、現状はそれだけで何千万円もらえる選手が、日本人ではいないですから。サッカーで何千万〜何億ともらえれば、引退後に何年か空白の時間があっても、そこで準備すれば良いと思います。でも、僕らはそうではないので、時間がある中で引退後のことを考えないといけないんです。

あとは現役中のほうが名前は知られていますし、応援してくれる部分もあるので、今やることに意味はあります。ネガティブな見方はあるかもしれませんが、何かをやる時には全員が賛成してくれるわけではないですし。その反対意見はありがたく頂戴して、試合ではしっかりと結果を出す気持ちでいます。

——練習以外の時間をどう生かすかが大切ですね。

稲葉 勉強して一つでも資格を取るとか、パソコンなどの知識だけでも入れるとか、選手は何かしらすべきと思います。やれることはやっておいたほうが絶対に良いですし、僕は今34歳ですけど、Jリーガーでこの歳までプレーできる選手は少ないじゃないですか。

1、2年で解雇になる選手多いですし、突然そういう境遇になった時に「どうする?」と考えるよりは、いつそうなっても大丈夫なように備え、考えつつピッチでも頑張るというのが大事かなと思います。プレーに支障をきたすようなことはしないほうが良いですけどね。

——多岐にわたる活動の行く末を期待しています。最後に、今後の目標を教えてください。

稲葉 選手としては、日本代表というのを常に目指しながら、日々取り組んでいます。ビジネスとしては、今やっていることの規模をもっと大きくして、フットサル界に恩返しできるようにしたいと思っています。

今度、大手の衣料品量販店が海外に出店するのですが、実はその内装の一部分を僕たちが手かげています。その仕事ができたのもフットサルで培った人脈のおかげですし、フットサルがプラスになっているんです。ゆくゆくは今回の繋がりもフットサルのためにならないかと模索しながらやっています。

今後もいろいろなことに取り組んでいきたいと思っています。

<了>

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