• HOME
  • 記事
  • その他
  • 選手、選手会、研究者。3つの視点で考えるアスリート像とテクノロジー[PR]

選手、選手会、研究者。3つの視点で考えるアスリート像とテクノロジー[PR]

選手会はどのような役割を果たしていくのか

佐藤氏は、プロテニスプレーヤーとして活躍する傍らで、日本体育大学大学院でスポーツバイオメカニクス(スポーツにおける身体の動きを解明する分野)の研究を行なっている。また「人生100年時代」と言われている中で、いかに人々のQOLを高く保つか、という課題にも取り組んでいる。

「(※)2025年問題に向けて体育が重要な立ち位置になると考えています。高齢者の方々がQOLを高く保つための趣味や地域とのコミュニケーションには、大学の研究機関や民間企業との産官学連携が必要不可欠だと思っています」

※2025年問題・・・団塊の世代が2025年ごろまでに後期高齢者(75歳以上)となることによって、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている

佐藤文平氏

佐藤文平氏

佐藤氏が高齢者に向けた取り組みを語った一方で、中町氏はアスリートとして子どもたちの模範となることの重要性を訴えた。

「僕らは子供たちが目指すべきプロアスリートであるべきだし、そういったところで選手会をやっています。そこで、選手の地位向上のために僕が常に言うのが、給料が500万円だとか5000万円だとかという話ではなくて、プロアスリートが一般人として何をしているかが重要だと話しています」

[選手のセカンドキャリアをより有意義に]()プロサッカー選手の社会的地位を向上させるために、サッカー界には「日本プロサッカー選手会」が存在する。同選手会は2006年に設立されたが、その10年後の2016年に、ラグビー界では「日本ラグビーフットボール選手会」が発足した。その選手会において、発足当時から理事として活動しているのが川村氏である。

ラグビー選手は現役を終えると、上場企業に勤める割合が大きいという。しかし、川村氏曰く「骨抜き」の状態で仕事をしてしまうことがあるようだ。

「『ラグビー人生が終わったけれど、この企業にいればなんとかなる。でも仕事は分からないし、給料はもらっているけれど、ここにいる意味はあるのかな』みたいな。それって企業にとってもパワーにならないですし、その人にとってもつらいと思うんです。だから、こういうことに興味があって、こういう仕事をしたいというのを、ラグビーが終わった瞬間から言えるような選手を育てたいです。選手会から企業へアプローチをすることも今後はやっていければと思っています」

選手会が選手の社会的地位を向上させるだけでなく、選手をセカンドキャリアに導く一手段となれば、今以上に有意義な団体となり得るだろう。

「島国の日本でしかできないこともある」

スポーツをよりビジネスとして拡げていくには、テクノロジーで選手のパフォーマンスを向上させることはもちろん、観客の満足度を上げていくことも必要不可欠だ。

Athlete Port-D

今回の議論では、スタジアムを盛り上げる要素として「音」がキーワードに上がった。佐藤氏は、中国オープンでブレイクポイント時に会場中に表示が流れたり、チャレンジを使う時に鼓動音が流れたりしたことを例に挙げ、「音と視覚の演出は分かりやすくて良い」と意見を述べた。

サンウルブズ(ラグビー日本代表)の試合では、クラップ(拍手)をスタジアムのモニターで観客に煽ることがある。川村氏は、このようにモニターなどを活用して、応援を分かりやすく教える演出も重要ではないかと訴えている。テクノロジーの力を借りながら、スポーツ界全体の価値をどのように上げていくのか。もちろん海外の事例を参考にしていくことも必要だが、中町氏は「島国の日本でしかできないこともある」と語っている。

幸いにも、日本では2019年にラグビーW杯、2020年に東京五輪・パラリンピック、2021年にワールドマスターズゲームズと、1年ごとに世界的なビッグイベントが控えている。これらは単なるスポーツの祭典ではなく、日本のテクノロジーを世界に魅せる格好の機会でもある。その大舞台の先で、日本のスポーツ界の進化が明らかになるだろう。

関連記事