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“付加価値”で満足度向上。西武ファンを虜にする電子チケットの裏側

スポーツビジネスで活躍するための最速講座として、2010年からスタートした「MARS CAMP(MARSキャンプ)」は現在、第17期目を迎えています。2018年12月19日(水)の社会人コースでは「スポーツを再定義!スポーツ×事業戦略」をテーマに、約2時間の講義が行なわれました。

プロ野球・西武ライオンズでは、2017年7月から電子チケットサービス「Quick Ticket by MOALA(以下、Quick Ticket)」を導入しています。電子チケットには様々なメリットがありますが、チケットとしての機能面以外にも、さらなる“付加価値”を加えることによって、ファンからSNSで反響を呼んでいます。株式会社playground執行役員の河野貴裕氏に、開発の裏側と今後の展開について伺いました。

幅広い競技を含む10,000イベント以上で導入

2017年6月に設立されたplaygroundは、以前は株式会社Leonis & Co. として、小売業者向けにコンサルティングやシステム開発を行なっていた。その中で電子スタンプの技術を開発したところ、電子チケットの導入で活用したいとの声が上がり「Quick Ticket」として商標登録した。現在はサンリオ・ピューロランドや埼玉西武ライオンズなどで導入されている。

playgroundは「リアルイベントに、デジタル革命を」をミッションに掲げている。河野氏はこの背景として「ライブなどでの演出のデジタル化は進んでいるものの、インフラのデジタル化はほとんど進んでいない」という実情を指摘した。現在はライブ体験のすべてを電子化するプラットフォームとして「MOALA」を展開し、Quick Ticketを含めた様々なサービスを提供している。

Quick Ticketは2017年12月のリリース以来、10,000イベント以上で導入されている。スポーツ界では西武ライオンズのほか、女子プロ野球やVリーグなど、幅広い競技で活用されるようになった。

このサービスは専用アプリ不要で気軽に使えるほか、ペーパーレスや不正転売防止、アルバイトの経費削減にも繋がるなど、様々なメリットがある。それに加えて限定グッズの引換券や、入場者特典の待受けといった付加価値を与えることによって、ファンの満足度を向上させている。

河野貴裕氏

自社投資の電子チケットシステムを“タダ”で提供

前述の通り、Quick TicketはLeonis & Co. 時代に開発した電子スタンプの技術をもとに生まれた。2016年夏ごろに電子チケットに活用したいとの問い合わせが数件あり、その意見を参考にプレイガイドや音楽レーベル、スポーツ団体などに「電子チケットアプリ企画趣意書」を持ってヒアリングに回ったとのことだ。

しかし、「ニーズはあるが誰も投資できない」「アプリ型の電子チケットは流行りそうもない」など、導入における様々なハードルがあることが分かった。そこでLeonis & Co. では、自社投資でブラウザベースの電子チケット発券システムを作り、チケットの仕入れや販売も行なわないため、“タダ”で提供することを提案した。

システムはアプリではなくブラウザベースで展開し、チケットの仕入れや販売は行なわないためプレイガイドの商材を奪うことはない。この提案には大手プレイガイドや大手興行主も「YES」と答えた。ここまでの流れは河野氏が独自で動いていたが、提案が功を奏した段階で代表取締役の伊藤圭史氏(現・playground代表取締役)に相談し、事業の立ち上げに至った。

日本のチケット販売は「興行主(Jリーグ、プロ野球など)」が「プレイガイド(チケットぴあ、イープラスなど)」に販売を委託し、プレイガイドが顧客への販売を行なうという流れが基本となっている。チケットの発券は「発券チャネル(コンビニ、郵送など)」が担い、顧客は発券チャネルに対して発券手数料や配送料を支払う。Quick Ticketはこの発券チャネルとして、発券手数料をもとにマネタイズを行なう方針があった。

河野貴裕氏

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