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企業のマーケティングに「スポーツ」を。Instagramが示す新たな可能性

世界的なSNSであるInstagramが“スポーツマーケティング”に特化した「The Heart Of Sports」という特設ページを公開したのをご存知だろうか。世界中のスポーツファンやアスリートが利用するプラットフォームとしての特性を活かし、企業のマーケティングをサポートしていく。こういったメッセージが込められており、今後の“スポーツビジネス”を加速させていくための大きなヒントとなりえるものだ。

そして、これはInstagramを運営するFacebookの日本法人、フェイスブック ジャパンが企画した日本独自の取組みである。

なぜこのタイミングで“スポーツ”に特化したマーケティングを支援するスタンスを打ち出したのか。また、日本と世界の“SNSマーケティング”の違いとは。

フェイスブック ジャパンでこのプロジェクトに主要メンバーとして関わる水谷晃毅氏に話を聞いた。

“スポーツが盛り上がる3年”に向けて

−Instagramが“スポーツ”をここまで押し出すのは喜ばしいことだと思いました。この取組み、サイト自体のターゲットはどういった人たちになるのでしょうか。

サイト自体は一般企業のマーケターおよび、広告代理店の方々をターゲットとしています。また、アスリートにも見て頂いて「Instagramを使ってみようかな」と思うきっかけの1つになれば良いかなとも考えています。これはスポーツマーケティングにおけるInstagramの役割を考える総合的な活動の一部で、他にもアスリートや企業向けのイベントやワークショップを実施したり、アスリートを起用したマーケティングプランを企業や代理店と一緒に開発したりしています。全体で色々な取り組みをする中での1つの情報発信という位置づけですね。

−“Instagram×スポーツ”という切り口でのこういった打ち出し方は全世界的にやっているものではなく、日本のみなのですね。

海外でもスポーツチームがInstagramを積極的に活用した例、アスリートを起用した広告キャンペーンの成功例などはあるものの、今回のように総合的な取組みをするケースは弊社でも珍しいと言えます。というのも、直近の日本は“スポーツが盛り上がる3年”だと言われています。ラグビーW杯があり、オリンピック・パラリンピックがあり、ワールドマスターズが開催されます。数年前、この取組みの構想を検討していた中で、「Instagramを使ってアスリートが影響力を獲得することで、彼らのセカンドキャリア形成に貢献できるのではないか」という仮説が生まれました。スポーツというコミュニティにおいてInstagramの存在価値や役割を発信していくことができれば、アスリートや企業の課題解決にもつながるのではないかと思っています。

海外のスポーツ市場はとても大きく、クラブチームの売り上げも大きいです。それゆえにメディア予算を多く投じたり、人材も豊富にいるのでデジタルメディアを多く使ったり…という現状があります。弊社のプラットフォームを活用した例を見ていても、海外の方が多くの成功事例があります。日本にもせっかくこの3年がくるので、盛り上げて行きたい、そういう思いもありました。

−その動きの中心に水谷さんがいらっしゃると。

私のメインのミッションは“FacebookやInstagram広告などの弊社ソリューションを通して、日本企業や代理店のビジネス成長をサポートする”ことです。ただ、スポーツ文脈でこのミッションを達成するためにはアスリートにInstagramを積極的に活用していただく、企業側にInstagram上での情報発信にアスリートを起用することの利点を知っていただくなど、前提条件がたくさんあります。そこを整えながら企業と選手がWin-Winになるようにしたいんです。

“インスタが上手い”タイ代表の選手

−アスリートやスポーツチームとInstagramの親和性というのはどういうところが挙げられるのでしょうか。

競技をしている姿自体がビジュアルとして引きがあり、Instagramとの親和性が高いですし、競技以外でファンが求めているコンテンツ=プライベートの姿を発信しやすい。Instagramストーリーズという機能がまさにそうです。言葉で発信することが苦手なアスリートもいらっしゃると思いますが、ストーリーズは投稿した写真や動画が24時間で消える上、スタンプやフェイスフィルターなどの加工も簡単なので、手軽に発信できる魅力があります。もう1つは、やはりアクションを促せるプラットフォームというところです。これはInstagramの特徴でもありますが、投稿を通じて商品やサービスを発見し、ウェブサイトで詳細を調べたり、店頭で買い求めたりする利用者が多くいることが分かっています。また、スポーツ文脈でいうと、アスリートに影響を受けて商品を購入したことがあるInstagram利用者が60%もおり、ブランドコンテンツとの相性も良いと言えます。

−そういう面でいうと、北海道コンサドーレ札幌に所属するチャナティップ選手が上手くInstagramを使っていると聞きました。

選手を取り巻く環境でいうと、JリーガーやBリーガーは東南アジアの選手に比べると待遇が恵まれていて、給料も高いです。逆に東南アジアは、チームからもらう給料が高くない分、自分でインフルエンサーとして活動してお金を稼ごうというモチベーションが高く、そのためにInstagramなどのSNSで情報発信を行って自身のブランディングに役立て、企業とのコラボレーションをすることに積極的なようです。

この投稿をInstagramで見る@mizunothailand สีใหม่ครับผม 💓🙇🏼🙏🏽

Chanathip Songkrasin(@jaychanathip)がシェアした投稿 – 2019年11月月8日午前12時50分PST

−サイトをオープンして以降、企業から問い合わせは来ているのでしょうか。

はい。企業の方も、契約している選手はいるものの、彼らをどう起用して良いのかアイディアやノウハウがない、というケースがかなり多いです。「とりあえずテレビCMに出てもらう」というような、いわゆるトラディショナルなやり方で止まってしまっている企業もまだまだ多い。そこに対して「Instagramを使うとこんなことができるんですよ」と提示させていただける機会は増えてきましたね。

−海外のほうがアスリートを使ったプロモーションは進んでいたり、プロスポーツクラブが自社のInstagramアカウントをうまく活用してスポンサー満足度を高めていたり、というのがあるかなと。参考となる事例があれば教えていただきたいです。

例えばIGTVを使っているNBAのチームは多いですね。試合の途中や練習シーン、プライベートの姿などの動画を作成し、IGTVに投稿しています。ストーリーズだと動画は最大15秒という制限がありますが、IGTVは縦型で最大60分の動画を投稿できます。IGTVで撮った動画のプレビューをフィードに投稿したり、ストーリーズにリンクを追加できるようになっているので、「続きはIGTVで見てね」という使い方をしているクラブチームも多いです。

−ファンの方が見たいと思うものは、海外と日本で違うのでしょうか。

日本で調査をしましたが、グローバルと似た結果が出ました。「選手のプライベートや舞台裏をInstagramで見たい」という声が多いです。つまり、練習風景やオフの姿などを見たいというニーズが高いということです。アスリートのそういった姿を知った上で競技を見るのと何も知らずに競技を見るのとでは、実際の試合を見たときの面白さも違ってくると思います。普段の姿を見ていると、どこか親戚を応援しているような気持ちになりそうですよね。

試合のハイライトを見たければ動画プラットフォーム、結果を知りたかったらリアルタイム性の高いSNSなど、目的によって使い分けている人が多いと思いますが、舞台裏を知ることでより試合が楽しくなる、Instagramの役割はそこにあるのかなと考えています。

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