• HOME
  • 記事
  • その他
  • 環境から、女子サッカーの未来を変える。アディダス「HER TEAM」プロジェクト

環境から、女子サッカーの未来を変える。アディダス「HER TEAM」プロジェクト

<写真提供:アディダス ジャパン 株式会社>

国際女性デーであり、2020年から日本サッカー協会(JFA)により女子サッカーデーにも定められている3月8日。アディダス ジャパン株式会社が、日本の女子中高生のスポーツ継続率の向上を目指したプロジェクトの第一弾、「HER TEAM」を日本サッカー協会(JFA)とともに立ち上げた。

プロジェクト概要はこちら

中学生になるタイミングで、約5人に1人がサッカーをする環境を失い辞めてしまう。そのような現状を打破し、女子サッカーを続けられる環境を拡大したいという思いから始まった。

U-15の女子カテゴリで新しく発足するチームを対象に、メンバー募集のための告知ツール作成のサポート、ユニフォームの提供、サッカークリニックの開催サポートを行なうといった内容だ。

自身が幼い頃にスポーツをする環境を失った経験を持つアディダス ジャパン株式会社の七田佳代(しちた・かよ)氏に、本プロジェクトへの思いを聞いた。

(取材日:2020年5月11日 聞き手:市川紀珠)

圧倒的な環境不足。中学生に特化したチーム数は男子の約3%

ーこの企画を立ち上げたきっかけを教えてください。

アディダスでは、会社として3つのブランドパーパス(存在意義)を掲げています。ひとつは、女性がスポーツを続けていける環境を整えていくこと。さらに、障害・宗教・性別・年齢など関係なく全ての人に平等にスポーツをする機会を与えていくこと、そして地球環境に配慮した活動をすることです。

本企画は、この内の1つ、女性のスポーツ環境を整えていくことにフォーカスをしたプロジェクトになります。特に、10代のスポーツ継続率が男性と比較して低い状況にあり、女子中高生年代を主なターゲットとしています。

また、日本では、スポーツの熱が高まる2020年というタイミングで、キックオフをしました。

ー海外ではすでにやっているのでしょうか?

そうですね。2018年から、アメリカでスタートしました。続いて、昨年は2019年FIFA女子W杯の女性スポーツが盛り上がったタイミングより、フランスでも関連したプロジェクトが立ち上がっています。

国によって女性がスポーツをする際のハードルが異なるので、その国の状況を調査するところから始めています。その上で、その国にとって「最適かつ継続性のあるアクションは何なのか」を考えて実行しています。

ー今回、なぜ女子サッカーにアプローチすることを決めたのでしょうか?“する”環境が整っていない女子スポーツは女子サッカーだけではないかと。

女子サッカーは、他の競技と比べて中学生年代の競技人口やプレー環境のギャップが圧倒的に大きかったんです。中学生年代の登録選手数は、男子の約5%しかいない状況です。その主な要因の1つは、プレーができるチームがまだまだ少ないということでした。競技人口と同様に、女子の中学生年代に特化したチーム数は201チーム。同年代の男子主体のチームと比較すると、約3%に留まります。2011年になでしこが世界一を経験しトップの世界で活躍し続けているにも関わらず、育成年代の環境がまだ十分には整っていない。これはなんとかしたい、と。(※2018年度JFA競技者登録データより)

かつ、アディダスは日本サッカー協会(JFA)とも長いパートナーシップがあります。共に思いを形にしていくことができるパートナーがいたので、まずはサッカーを選びました。

女子サッカーをする少女たち

リアルな指導現場の声をもとに、内容を設計

ー「HER TEAM」というプロジェクト名の由来を教えてください。

「女子サッカー選手の受け皿=チームを増やす」というコンセプトが伝わりやすく、かつ女子中学生にもわかりやすい単語でと思って、シンプルに「HER TEAM」という名前にしました。

ープロジェクトの動画も、メッセージ性がありとても良かったと感じました。反響はどうだったのでしょうか?

アディダスがこれまで出してきた動画コンテンツの中でも、とてもよい反響を頂きました。嬉しかったと共に、とても驚きました。誰もが認めるスーパースターの映像でもなければ、限定商品の映像でもない。シンプルに女子のスポーツ環境の課題を映し出したものが、ここまで多くの反響をいただけるとは正直思っていませんでした。

女子スポーツに可能性を感じましたし、興味を持ってくださる方がいることを実感しました。もともとサッカーに関わっていなかった方からも、とても良い反応をいただきました。これからも、このプロジェクトのレポートとして、例えばサッカークリニックの様子なども発信していき、女子サッカーの魅力を多くの方に知って頂けたらと思っています。

ー具体的なサポート内容についてお聞かせください。各チームのメンバー募集の告知手段をチラシなどの紙媒体にしたのはなぜなのでしょうか?

女子チームを立ち上げる際のハードルについて、現場の指導者の方にさまざまなヒアリングを行ないました。その中でみなさんが口を揃えて言うのが、「指導をしたいと思っている人は一定数いる。だけど、そもそも選手がどこまで集まるのかがわからない」ということでした。

そこで現場の声を参考にしながら、メンバー募集に関してわれわれにできることは何かと考えました。WEBやSNSを通じた告知活動もひとつの有効な手段だとは思いますが、今回ターゲットとなる小・中学生へのアプローチには、ポスターやチラシも合わせて必要かなと。特に小学生だと、まだスマホも持っていないことが多いです。

アナログな方法ではありますが、これもひとつ重要だと感じています。チームで作成するとなるとデザインや印刷など、費用がかかってくるので、ここはわれわれがサポートしていきたいと思いました。

ーサッカークリニックの開催というのもサポート内容として挙がっていますが、これはどういったものなのでしょうか?

アディダスは、全国でサッカースクール事業を展開しているクーバー・コーチング・ジャパンとパートナーシップ契約を結んでいます。今回、クーバーさんにも賛同していただき、出張クリニックという形で開催することになっています。クーバーさん独自のコーチングメソッドを活かして、普段とは違ったレッスンを体験いただければと思っています。

アディダスと契約している現役あるいは引退したアスリートを招待することも考えています。現役なでしこの選手の方々も協力的なので、巻き込んでいきたいです。中学生年代の女子選手にとって憧れの存在だと思いますし、「ああいうふうに上手くなりたい」と感じてもらいたいですよね。こういうことができるのも、アディダスとJFAのパートナーシップが持つ強みだと感じています。

女子サッカーをする少女たち

関連記事